シェークスピア
『シェークスピア ソネット集』(154篇)、五年の歳月をかけてようやく翻訳が終わりました。いろいろな意味で風変わりな詩篇が収められています。シェークスピアに興味のある方は是非読んでみて下さい!https://nambara14.exblog.jp/i47/
ソネット 154 W.シェークスピア 年若い愛の神は 心に火を付ける松明をかたわらにおいたまま 眠りに落ちていた そこへ清らかに生きることを誓った多くの妖精たちが 通りかかった、その中の最も美しい妖精が 多くの者の純粋な心を熱くしてきた火を その手で拾…
ソネット 153 W.シェークスピア キューピッドが松明をそばに置いて眠っていた、 女神ディアナの侍女はこの機会を見逃さなかった そして恋心に火をつける炎がすばやく その地の冷たい谷の泉に突入した、 この泉は 聖なる愛の炎から 古来より強烈だった熱を取…
ソネット 152 W.シェークスピア あなたを愛する中でわたしが偽りの誓いをしたことをあなたは知っている だがあなたもわたしに愛を誓いながら二度もそれを破ったのだ 愛の行為の中でベッドでの誓いは破られ新たな制約も反故にされた 新たな愛が生まれた後に新…
ソネット 151 W.シェークスピア キューピッドは幼いので良心がどんなものか知りません とは言え良心が愛から生まれることを知らない者などいるでしょうか? だからやさしいいじめっ子よ、わたしの欠点を責めないでほしいのです わたしの過ちはあなたのせいだ…
ソネット 150 W. シェークスピア おお!あなたのこの強い力はどんな力から手に入れたのだろうか 欠点によってわたしの心を支配する力は? わたしの見る真実から目をそらさせ 必ずしも明るい光が一日を輝かしいものにするわけではないと言わせる力は? あなた…
ソネット 149 W.シェークスピア おお、あなたはわたしがあなたを愛していないなんて言えるのですか わたしは自分に逆らってまであなたの肩を持っているというのに わたしはあなたのことを思っていないと言うのですか、ひどいひとですね あなたのせいでわたし…
ソネット 148 W. シェークスピア おお!キューピッドはどんな目をわたしの頭に埋め込んだのだろうか それは現実の視界とは対応していない もし対応しているのだとすればわたしの理性はどこに行ってしまったのだろうか? それはわたしの目が正確にとらえたも…
ソネット 147 W.シェークスピア わたしの愛情はいつも発熱のように 長きにわたって病気の世話をするものを求めており 患いを長引かせるものを摂取する 不確かで病的な欲求を満たすために、 わたしの愛情に対する医師であるわたしの理性は その指示が守られな…
ソネット 146 W.シェークスピア わたしの罪深い肉体の真ん中にあるあわれな心よ お前を包囲し飾り立てる反乱軍に糧食を供する心よ どうしてお前は外壁をそんなにも豪華に飾り立てるかわりに 内部はやつれて飢えに苦しむのか? どうしてお前はそんなにも膨大…
ソネット 145 W. シェークスピア 愛の女神ビーナスの手によって造られた彼女の唇は 「わたしは嫌いよ」という言葉を吐き出した 彼女に恋焦がれているわたしに対して、 でも彼女がわたしの悲し気な様子を見たとき 彼女の心にすぐさま憐みの気持ちが湧いてきた…
ソネット 144 W. シェークスピア 慰めと絶望、わたしのふたりの恋人は 二つの精霊のようにいつもわたしを誘惑するのです 善良な天使はこの上なく美しい男性であり 邪悪な精霊は厚化粧した女性です、 わたしをすぐにでも地獄へと突き落そうとして わたしの女…
ソネット 143 W. シェークスピア ほら、家事にいそしむ主婦は 逃げ出した家禽類を捕まえようと走り出します 赤ん坊を床に置き、捕まえたいと思う家禽類を追いかけて 全速力で走ります、 放置された子供は 彼女の後を追いかけ 泣きながら彼女を捕まえようとし…
ソネット 142 W. シェークスピア 愛するのはわたしの罪 憎むのはあなたの気高い美徳 罪深い愛情に基づきわたしの罪を憎むこと おお!せめてあなたは自身の振舞いをわたしの振舞いと比べてみて下さい そうすればあなたはわたしの振舞いが非難に値しないことが…
ソネット 141 W. シェークスピア 実を言えばわたしの眼はあなたを愛してはいないのですよ なぜならあなたがたくさんの過ちを犯していることに気づいているからです でもわたしの心はわたしの眼が軽蔑するものを愛してしまうのです 心は眼と相反して盲目的に…
ソネット 140 W. シェークスピア あなたは残酷なのと同じくらい賢く振舞ってほしい 言いたいことも言わずにいるわたしをあんまりいじめないでほしい 悲しみのあまりわたしが言葉を発し その言葉が 憐みを懇願するようなかたちで表現されるのを避けたいから、…
ソネット 139 W. シェークスピア おお!あなたの冷たさがわたしの心を悩ましているのに そんなひどい仕打ちを弁護するようにとわたしに言わないでください 言葉ならまだしも視線でわたしを傷つけないでください わたしの命を取るなら計略ではなく力づくでや…
ソネット 138 W.シェークスピア わたしの恋人が自分は本当のことしか言わないと誓う時 わたしは彼女が嘘をついているとわかっていてもその言葉を信じる 彼女がわたしを世間のまやかしの機微を悟っていない 世慣れない若造だと思えるように、 彼女がわたしの…
ソネット 137 W. シェークスピア 盲目にしておバカさんのキューピッドよ、おまえはわたしの目に 何をしようというのだろう わたしの目は世間を観察しているが、見ていることさえ見えないと思わせることだろうか? わたしの目は美が何であり美がどこにあるの…
ソネット 136 W. シェークスピア わたしがあなたに近づきすぎると言ってあなたの心があなたを責めるなら わたしはあなたの恋人だったのだと事情知らずの心に言ってやってください そうすればあなたの心もわたしの恋がそこでは認められるのをわかるはずです …
ソネット 135 W. シェークスピア どんな女性にも欲求があるように、あなたにも欲望があります その上膨大な欲望、有り余るほどの欲望をもっています あなたを求め続けるわたしは こんなふうにして あなたの甘美な欲望を過剰なまでに増長させるのです、 広大…
ソネット 134 W. シェークスピア 今や彼があなたのものであり わたしがあなたの抵当に入っていることを認めた以上 わたしはわたし自身を失うだろうし、あなたはもう一人のわたし つまり彼をわたしに返してずっと安心させてくれるだろう、 いやあなたは返しは…
ソネット 133 W. シェークスピア あなたの心はわたしの友人とわたしに深い傷を与えて わたしの心を呻かせるとはなんということでしょう! 愛する苦しみでわたしを苦しめるだけでは不十分で わたしの親友までも奴隷のように虐げられなければならないのですか…
ソネット 132 W. シェークスピア あなたの目をわたしは愛しています、それらはわたしを憐み あなたの心が蔑みによってわたしを傷つけることに気づいており 黒い色で装う愛情深い弔問客であり わたしの痛みを哀れむやさしい目を注いでくれるのです、 そして実…
ソネット 131 W. シェークスピア あなたは暴君のようです、あたかも美女たちの誇るべき美貌が 彼女たちを残酷にさせるように なぜならわたしの切実な愛に溺れる心にとってあなたが最も美しく最も貴重な宝石であることを あなたはよく承知しているからです、 …
ソネット 130 W. シェークスピア わたしの恋人の眼は太陽とは程遠い 珊瑚は彼女の唇よりもずっと赤い 雪が白いとしても彼女の胸はなぜ灰色っぽいのだろう 髪の毛が糸だったとしたら彼女の頭には黒糸が生えている、 わたしはこれまでにダマスク色、赤色、白色…
ソネット 129 W. シェークスピア 恥ずべくして不毛な精力の浪費は 満たそうとする欲望であり 満たされるまでは欲望は 偽りであり殺人的であり血なまぐさく罪深く 野蛮で極端で野卑で残酷で信じられない、 欲望は満たされるや否やすぐさま軽蔑すべきものにな…
ソネット 128 W. シェークスピア わたしの喜びの調べ、あなたのしなやかな指が 幸福な鍵盤に触れて楽の音を奏でる時 あなたの柔らかな動きが わたしの耳を魅惑する弦の調和を生み出す時、 キスを受けるはずのわたしの哀れな唇が 誇らし気な鍵盤を弾くあなた…
ソネット 127 W. シェークスピア 昔は、黒は美しいとはされなかった あるいは仮に黒が美しかったとしても美という名前は持たなかった だが今では黒は美の跡継ぎだ そして美は私生児という呼ばれ方で貶められている、 なぜなら人はみなそれぞれに自然の女神の…
ソネット 126 W. シェークスピア おお、わたしの可愛いひとよ、あなたは 時の変わりやすい鏡や鎌、時間をしっかりとその手に収めている あなたは年をとるにつれ成長したが、そのことで 素敵なあなたが成長するにつれあなたの親しい人たちが老いゆくことを示…