南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

57577系短詩

大谷選手の結婚を祝って

『大谷選手の結婚を祝う』 春匂う ビッグ・ヴァレーの ファンファーレ そっと寄せたい 祝いの言葉 ある線を 超えればひとり 彷徨いて 疎外のグラフ 手探りで描く 感覚は 説明不能 デリケート 依拠するものは ほかになければ ただひとり 粋に感じる 色合いを …

泪橋

泪橋泪橋 こだわりの店 用水の ほとりに立ちて 順番を待つ付けたのは ホルター型の 記録計 臨床検査 技師の言うまま寄る辺なき 川虫けらの ため息に おのれの呻き 重ねつつ病む不覚にも 頭部裂傷 脳震盪 幻と見る 現世の揺らぎ運命を 聴きつつこなす 雑用に …

母に

久方の 光射し来る 秋の日に 白寿の母は 永遠に眠りぬ 頬に触れ 手を取り声を しぼれども まどろむままに 母は答えず 思い出は 川の流れか まどろみか 帰らぬ時を 遡る舟

『目礼』(短歌系)(2023.7~8)

『目礼』(短歌系)(2023.7~8) 仮初の 目礼であれ 電流の かすかな励起 促すよすが 不機嫌の 飽和の街に 居づらさも 息苦しくて こすれる心 一瞬も 消えぬ体を 消え去ると 感じる心 まだらにゆらぐ じーじーの 鳴き声弱い なにゆえに 今年の蝉の 油が…

木枯らし

木枯らし孤愁にも いや勝り行く 隔絶の深部凍りて 木枯らしの吹く深い谷 たどりて行けば 地下深く断層滑り 激震に果つ無理解の 砂漠を行けば 蜃気楼物書きの夢 幻想の城

老いの坂道

老いの坂道おたがいに 中古になれば いたわって休みつつ行く 老いの坂道気が付けば ひとは他人に 生かされる死ぬも生きるも 花咲く散るも楽観も 悲観もなくて 淡々と天体運行 成り行き任せ真実は 自撮りできるか 幻滅の肖像画など 修正に出す想像の 自分はど…

『脳の洗濯」(短歌系)(2021年10~12月)

『脳の洗濯』(短歌系) (2021年10月~12月作) 南原充士 不可能と 思えばつらい 邂逅も 万が一でも ありうることと 嵐過ぎ 光まぶしき 秋景色 眺めているのは だれでしょう 挑発の 仕方忘れて 秋桜の そよぐ道辺を 休みつつ行く ひたすらに 読書の秋…

短歌系『ワクチン接種』(2021.5~9)

短歌系『ワクチン接種』(2021.5~9) 南原充士 おおよそは わかっていると 思ってた 動画を見れば 海馬が跳ねる 豆挽くも ほどよく挽けよ 苦ければ 香り立ち来て 舌先を刺す 全世界 ワクチン戦争 避けながら 億万回の 接種よ進め 食品の 値上げ相次…

『春朧』(57577系)

『春 朧』(2021.3)(57577系) 詫びるごと 遣る瀬無き世に 長らえて そっと巻き上ぐ 鎧戸の陰 狭量を 捨ててくつろぐ 素浪人 この世にあれば 花の香を嗅ぐ 頑固者 互いに睨み 軽蔑し 蛇蝎の如く 嫌い合う仲 悲しみは 倍になるとも 喜びは 倍々にな…

『新春コロナ雑詠』(短歌系・2021.1)

『新春コロナ雑詠』(短歌系・2021.1) 平凡の ヘブンに近く カナブンの ブンブンに似て ひとり賑わう おまえさん ここが痛いよ いや違う 壷を押さえて ぐっと揉んでよ わが生が 小説よりも 奇なりとは 思えぬままに コロナ拡大 いい人の 振りをするのも ひと…

『2020年紅白を聴く』(57577系短詩)

『2020年紅白を聴く』(57577系短詩) だれもみな バイアスの罠 陥りて 呻吟しつつ 光をつかむ 誰の言 信ずべきかは 自らの 身を切るごとき 精進の果て 轟轟の 幾万人の 叫喚に 真実告げる 沈黙を聞く 年の瀬は 心静かに 窓辺にて 日に当たりつつ 海…

『2020年 コロナに暮れる』(57577系短詩)

『2020年 コロナに暮れる』 (57577系短詩(2020年12月)) これもそれ あれも乗り越え ここにいる ようやくにして 小人ひとり 山谷を 超えて到れる 人の世に 魑魅魍魎と なりてはびこる あと一歩 ひとへの道を 踏み出さん 餓鬼道を抜け 人非…

『はやぶさ2の帰還』(57577)

『はやぶさ2の帰還』 (57577系短詩 2020.11~12) いるだけで 傷つけあうは 定めなら お茶を濁して のらりくらりと おちょやんの 子役はうまい 毎田暖乃 台詞ぽんぽん おもろいほんま 我が心 星に託して 空を飛び 忘れたころに 帰る喜び こ…

『牛のペニス』(57577系短詩)

『牛のペニス』(57577系短詩)(2020秋) そっぽむく そっぽむかれる ひととひと 皮膚の下には 赤子の笑顔 詩神には 見放されても 人情の 機微ひろいつつ 拙く綴る 好き嫌い 激しすぎれば 瞑想の 河原に座して 呪文を唱う じわじわと 締め付けられて…

『喜望峰」(57577系短詩)

『喜望峰』(57577系短詩) 2020.9 甘えなど 許されないと 雷に 向かって走る 僧侶の如く あめんぼは 雨が降っても 晴れの日も 線形幾何学 すいすいと解く ころころと 坂を転がる 大玉の 張り子破れて 中身が漏れる 巣篭りて 文を鬻いで 過ごす日…

オプティミスト(57577系短詩)

オプティミスト(57577系短詩) 南原充士 空間の 脱ぎ替わりこそ 時間なら 巨大な皮を 剥ぎ取る鋏 いつのまに いらつくひとは だれだろう 鏡を見れば 見知らぬ顔よ わけもなく 大声を出し おどろいて 気まずくなれば 居場所に困る いくたびも 痛切に知…

『達磨』(57577系短詩)

達 磨 南原充士 巣篭りて みんな自分に 向き合えば 告白気味の つぶやき増える そのへんに 光が射すを 喜びて このへんにいる 日陰のだれか 羨みも 妬みもあれど 吹き払い 達磨となりて 端然と座す こころには いやしき邪気の 住まいいて うらやみねたみ 嫉…

『幻覚と妄想』(57577系短詩)

『幻覚と妄想』(57577系短詩) 南原充士 幻覚と 妄想の差は なんだろう 施設のひとと 話しつつ問うシーソーの 上がり下がりや ぶらんこの 行ったり来たり 人の気持ちはつらくても 薬物やらず 覚醒の 苦痛に耐えて 現実を見る囁きは 悪魔の仕業 眠らせ…

57577系短詩

なぜ「57577系短詩」と言うのかと言えば、 1.5□7□5□7□7 のように各節の間は一字空ける。 2.現代的仮名遣いを基本とする。 3.現代語を基本とする。 ということを基本としているため、短歌とは一線を画していると考えているからです。 nambara…

『梅雨入り近し』

『梅雨入り近し』 南原充士 表現は 悩み苦しみ 躓けど 辛抱強く 水脈を追う 表現は こんがらかった 細糸を 辛抱強く ほぐすに似たり 表現は ひとりこもりて 営めど 他者につながる ときを待ちわぶ 相対の 靄に浮かんで 絶対の 生身を生きる 割れたる柘榴 コ…

風薫る

風薫る 我が里に つつじうぐいす ハナミズキ 月影冴える 八十八夜つまらない けんかをしては かえりみる おろかなじぶん かわりはしない すくなくも おろかであると しったうえ けんかをさける かしこさをしる けんかする パターンをしり あらかじめ あやう…

自分の場所

危機にありて 知恵者は語る 愚者もまた わたしも語る 自閉を超えて ここにこそ わたしはいるが 叫ばない 空の彼方へ 愁いを飛ばす あなたとは 違う場所へと 煩いを 隠して今日も メールを送る

コロナ雑詠

『コロナ雑詠』 2020年3~4月 リーダー リーダーを 責めるばかりは どうですか 虚心坦懐 よいことはよいと躊躇せず あらためるべきは あらためて 立場を超えて 助け合えたら 非常時は 問われるトップの 力量が 暮らし委ねて 命預けて家にいれば 怒りっ…

リーダー

リーダー リーダーを 責めるばかりは どうですか 虚心坦懐 よいことはよいと 躊躇せず あらためるべきは あらためて 立場を超えて 助け合えたら 非常時は 問われるトップの 力量が 暮らし委ねて 命預けて 家にいれば 怒りっぽくなる 家族とも けんかをしちゃ…

手紙

手紙 在宅の アルピニストの 言うことにゃ 家を掃除し 手紙を書こう そう言えば メールばかりで 手で書いた 手紙はがきを 出すのもまれだ 悪筆は 直らぬけれど 自分なりに 一字一字に 思いを込める 声かける 電波に乗せて 笑う顔 エレクトロマグネティックの…

新生

新 生 世の中は 変わってしまった われわれも 変わらなければ 生きてはいけぬ なんという 不自由世界 なにびとも 疑心暗鬼に 遠ざけ合って 新しい 生き方に慣れ お互いを 守り合いつつ 希望見出す ツイートは 癖になるんだ つぶやきは ぶつぶつ言えど 流れて…

春の雨

春の雨 雨は降る 景色は煙り 風も吹く 家々に聞く ため息深し この雨も やがては上がる 空晴れて 窓より遠く 稜線を見る くつろいで 過ごすつもりの 一日も 明日の予定が 立たぬ苛立ち くりかえし 沈む気持ちを 励まして 浮かぶ不安を 笑い飛ばそう 嘆きつつ…

小さな息

小さな息 大声で 叫ぶ人あり ひっそりと 歩む人あり ささやく人も 真実は 届きにくいが 良心は 小さな息に 乗って運ばる 混乱の さなかにありて 迷う道 しるべなければ 探りつつ行く のびのびと 小さな公園 こどもたち 遊んでいるよ どうかこのまま 知り過ぎ…

ため息

ため息 ちっぽけな 自分であれば 沈黙が ふさわしいとも 思いつつ生く 愚かなる 自分であれば 賢明な 知者の言葉に 耳を傾く さりながら 自分は自分 ほかならぬ 生きるため息 漏らすことあり 結局は 良心的に 迷いつつ 決めるしかない 危機のさなかに 晴れた…

カレンダー

カレンダー コロナより 怖い偏見 憎しみを 弱める薬 開発望む 思い出す 違う意見を 排斥し 罵り合って 叩き殺した 絶望を 希望に変える 魔法薬 危機の今こそ 投入の時 できるだけ こきおろさない けなさない ちがういけんを もつのはしぜん 全力で 取り組む…