南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

谷川俊太郎

谷川俊太郎はあまりに有名なので今更とやかく言う必要がないと感じてしまうが、それでも最も気になる詩人であるのでどうしてもなにか言いたくなる。

天才詩人というのは夭折が似合うと思われてきたが、谷川俊太郎は長命であるのが意外性があっておもしろい。

驚くべきは何歳になっても感覚は新鮮で言葉も初々しい。マンネリ化することなく次から次へ新しい詩集を刊行する。思想的にも偏ることなく実に現実をよく観察して自分の意見をしっかりと持っている。そういう意味でも非凡である。

最近『普通の人々』という詩集が気に入ったのであるひとに上げてしまった。いろいろな名前を持った登場人物のちょっとしたエピソードを集めた内容の詩集になっているが、これだけ多くの名前が出てくる詩集は珍しい。意表を突かれた感じで、またしてやられた、という思いが強くする。この詩人はごく普通の人間を描いても非凡な詩にしてしまうのだなあ。

しばしば『普通の人々』が読みたくなる。そこでたまらずにまたこの詩集を買ってしまった。こういうことは自分には珍しいことなのだが、文句なしに楽しめる詩集というものはざらにはないので、満足している。

最近では、『トロムソコラージュ』以来の傑作詩集だと思っていろいろな人に勧めている。