南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『春朧』(57577系)

 

    『春 朧』(2021.3)(57577系)

 

 

詫びるごと 遣る瀬無き世に 長らえて そっと巻き上ぐ 鎧戸の陰

 

狭量を 捨ててくつろぐ 素浪人 この世にあれば 花の香を嗅ぐ

 

頑固者 互いに睨み 軽蔑し 蛇蝎の如く 嫌い合う仲

 

悲しみは 倍になるとも 喜びは 倍々になれ 包みふくらめ

 

縁ありて 怨なきままに 年経れど 血筋切れずと 辿る消息

 

繰り返す 毀滅のごとき 億兆子 かすかな時に 在りし証しよ

 

自らに 言い聞かせては ため息の 合間に空を 果てしなく追う

 

諦めの 重なる帳 かきわけて 一筋通す 糸の震えよ

 

避けきれぬ 闇の回路を 迷いつつ かすかな光 感じる方へ

 

悲観癖 オプティミストに つけかえて 内なる汚泥 流し去る術

 

突然の 欠落あれば 動揺す 連鎖の不調 激動の波

 

春みたい ああそうだねと ぽかぽかの 日向に出でて 冬服を脱ぐ

 

風吹けば 身を折り曲げる 雨降れば 顔ふせ首縮め 濡れながら行く

 

雨あがり 日が差し始め ぬくもれば 大きく伸びて 弾みつつ行く

 

天体の 運行見ても 今日明日の 定めは知れず 彷徨いて行く

 

平凡な 街の凡人 茫然と 梵鐘を聞く 滂沱の涙

 

声揃え 悪しざまに言う ひとあれば おのずから見る 歪みし虚像

 

騒乱の 世間にあれば 心憂し 瞳曇りて 道を過つ

 

ざわめきに あれば乱れる こころなら 静かの森へ 忍んで行こう

 

清掃か 警備か受付 配達か 細い路地にも しだれ梅咲く

 

心から 呼びかけてみる 応え来る 熱情の波 興奮の渦

 

原石を 手に取ってみる 透かし見る 磨けば光る 未来を見抜く