南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『春暖』(575系)(2021.3)

 

  『春暖』(575系)

 

      (2021.3)

 

 

春暖の すこし狂わす 身と心

 

近景と 遠景ありて 春朧

 

春雷を 風神雷神 叩く撥

 

春雷に 人事を乱す 内の神

 

珍しく 背中の張るは 春の乱

 

漏れ来るは 春の日差しか 戸惑いか

 

自らの 中のひとへと 春よ来い

 

寝返りを 打つがごときの 春の空

 

宣言に 振り回される ここも春

 

図らずも 名のみの春に 出会う人

 

花曇り 人の機嫌も 損ねがち

 

年代の 矜持を継いで 雛飾り

 

かたわらの ソシンロウバイ 浅い夢

 

梅の香も 嗅げぬをかこつ 無粋人

 

枝ぶりを 見つつ過ぎゆく 桃の園

 

春一番 足元揺らす 脳散らす