南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

シェークスピア ソネット 112

 

ソネット 112

 

                   W. シェークスピア

 

あなたの愛と憐みが 

わたしの額に刻印された低俗な噂の傷跡を癒すのです

わたしを良いとか悪いとか言う声があっても気にしません

あなたがわたしの悪を覆ってくれ良さを認めてくれるからです、

あなたはわたしのすべてです ですからわたしは

あなたの言葉からわたしの恥辱と称賛を読み取らなければなりません

ほかのだれもわたしにはいないも同然でわたしもほかのひとのために生きてはいません

わたしの頑なな感性も正しいか誤っているかをわきまえるように変化します、

あの底知れぬ淵にわたしはすべての煩いを投げ込みます

ひとびとの声に対しては 批判的なことにも追従にも

クサリヘビのように耳をとじています

見てください わたしがどうしたら無視せずに済むのかを、

あなたはそんなにもわたしの生きる目的となってしまったので

わたし以外のひとびとにはあなたが死んだように見えるのです。

 

 

 

Sonnet CXII

 

       W. Shakespeare

 

Your love and pity doth the impression fill,

Which vulgar scandal stamped upon my brow;

For what care I who calls me well or ill,

So you o'er-green my bad, my good allow?

You are my all-the-world, and I must strive

To know my shames and praises from your tongue;

None else to me, nor I to none alive,

That my steeled sense or changes right or wrong.

In so profound abysm I throw all care

Of others' voices, that my adder's sense

To critic and to flatterer stopped are.

Mark how with my neglect I do dispense:

   You are so strongly in my purpose bred,

   That all the world besides methinks y'are dead.