南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

シェークスピア ソネット 122

 

ソネット 122

 

                                 W. シェークスピア

 

あなたの贈り物、ノートブックはわたしの頭の中にあります

いっぱいに書き込まれた忘れ難い記憶は

いつまでも、というより永遠に

様々な雑多な書き込みによって残っていくでしょう、

あるいは少なくとも頭と心が

与えられた能力を持ち続ける限り

そのいずれかがあなたの記憶を奪われるまでは

あなたの記録は決して失われることはありません

その小さなノートブックにはそれほど多くを書き込めないでしょう

またあなたの大切な愛を数える割符は必要ないでしょう

だからわたしは自信を持ってそのノートブックを手放したのです

わたしの頭の中のノートブックはあなたのことをより多く書き込めるからです

あなたを思い出すためのよすがとしてなにかを持っているなんて

わたしがあなたのことをすぐ忘れてしまうということになってしまいます。

 

Sonnet CXXII

 

       W.Shakespeare

 

Thy gift, thy tables, are within my brain

Full charactered with lasting memory,

Which shall above that idle rank remain,

Beyond all date, even to eternity:

Or, at the least, so long as brain and heart

Have faculty by nature to subsist;

Till each to razed oblivion yield his part

Of thee, thy record never can be missed.

That poor retention could not so much hold,

Nor need I tallies thy dear love to score;

Therefore to give them from me was I bold,

To trust those tables that receive thee more:

   To keep an adjunct to remember thee

   Were to import forgetfulness in me.