南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

短歌系『ワクチン接種』(2021.5~9)

 

短歌系『ワクチン接種』(2021.5~9)

 

            南原充士

 

 

おおよそは わかっていると 思ってた

動画を見れば 海馬が跳ねる

 

豆挽くも ほどよく挽けよ 苦ければ

香り立ち来て 舌先を刺す

 

全世界 ワクチン戦争 避けながら

億万回の 接種よ進め

 

食品の 値上げ相次ぎ 毎日の

暮らし模様は 掻き曇る空

 

暗いこと ばかり言っては 嫌われる

明るいことを 見つけたい日々

 

楽しみも 気の持ちようと 三食と

昼寝と散歩 テレビとお風呂

 

これほどに 変わってしまう 世の中は

悪夢ではない 当たれば痛い

 

命とは 流れるままに 変異して

伝えそこなう 言葉に似たり

 

あれこれの 居心地悪く 降る雨に

舌打ちすれば ずぶ濡れになる

 

自閉でも 自足でもない 自堕落を

自虐ばかりの 自戒に垂らす

 

難癖と よくぞ言いしよ つけすぎて

払いきれない 雲霞のごとし

 

さてもこれ それあれなどと めくらまし

にげそこなえば ひきつるわらい

 

へへへーい ほんならほーい はんだらーい

わくわくどきり せっしゅしたーよ

 

ひとはみな 不平不満の 産物か

掌返す 自足の一歩

 

喜びと 悲しみの量 おんなじか

何故とは無しに こぼれる涙

 

つかまって 漕いでいるのは 一輪車

捨て鉢だって かまわないから

 

痛み熱 頭痛に鼻血  倦怠感

四日過ぎたら ほぼ軽快す

 

梅雨入りと 聞けば湿れる 脳内も

能天気にて 晴れ間を生きる

 

上機嫌 ふりをするのも 芸の内

ふってふられて 梅雨の内

 

意地悪も 頑なもまた 人の常

こぼれる笑みで 変異完了

 

二面性 許してくれよ 許すから

梅雨の晴れ間の 空に微笑む

 

愚痴ばかり つぶやくおれの 唇を

強くこすれば 笑みがこぼれる

 

プラセボと 思えばなぜか 梅雨空も

晴れ間がさすと 予感に満ちる

 

愛すべき 医師小説家の ツイートに

イイネをつけて ワクチン接種

 

コロナ下に 塩一袋 買うために

マスクをつけて びくびく歩く

 

おそらくは じっと我慢の 無辜の民

右往左往の ぬかるみを行く

 

まいったな 舌打ちをする 巣ごもりの

ゆがんだ顔は おれではないか

 

ともすれば 悲観的に なりすぎて

自滅するのを 避けたいと思う

 

ちっぽけな 違和感あれば あれこれと

思い煩う 愚かさに泣く

 

坂道を 転げ落ちるを 止めるため

自力で付けた ブレーキを踏む

 

愚かさの 果てに彷徨う 半身よ

気の持ちようを 切り替えんとす

 

こんなにも おもしろいこと つうじない

おどろくなかれ だれでもそうだ

 

自分には 意見があるが それなりに

節度働く 自由のルール

 

物書くは どこか慰め 憂さ晴らし

花咲く園へ 歩み入りたし

 

ともすれば 押し売りになる 自覚あり

辟易させる 意図はなけれど

 

コロナとは 無縁かどうか 執拗に

訴える声 聞く耳求む

 

われながら 愚かさを知る 素行から

離れることも 止むこともなし

 

外からは 風吹き鳥が 鳴き寄せる

くすぶる内を  ただ裏返す

 

親切と 意地悪の顔 百面相

中を覗けば 無数の仮面

 

半分は 好みの合わぬ 人の住む

この世に生きる 息苦しさよ

 

わずかでも 意気投合の 友あれば

風の通い路 交わす言葉よ

 

高い空 期待に満ちた 風船は

しぼみながらも 風に漂う

 

人頼み 愚かなわれに 呆れては

自嘲の呪文 ひとりつぶやく

 

どこまでも 歩いていこう この道は

いつか来た道 いつも行く道

 

自己宣伝 うすら寒いよ 一人でも

噂をすれば かくもぬくもる

 

落ちにくい 汚れと覚悟 していたら

つま先のみで 消え失せるとは

 

押し売りに 勧誘電話 メール群

見てよ買ってよ 聞いてよ入ってよ

 

書く人と 読む人が住む 脳内は

放電充電 風神雷神

 

身近過ぎ 忘れてしまう 貴さに

気づけ今すぐ 和らげ視線

 

まあいいか いかのさしみも いい感じ

ぬる燗でいく ああいい加減

 

さだまらぬ おれのきもちは いっそうの

こぶねのごとく ふくかぜまかせ

 

これほどに せいこんこめて つくりたる

さくもつなれど だしおしみせず

 

桃むいて 切ればしたたる 水蜜の

甘さに溺れ 汁にしびれる

 

ののしれば ののしりかえす 永遠の

谺悲しく 虚空に響く

 

ライティング 雄弁術に 修辞学

身体を鍛え 心を磨け

 

先輩の 声なつかしい コロナ下の

老人ホームは 外出禁止

 

思わざる 応援団の 出現に

梅雨空さえも まぶしく光る

 

公園に 園児叫んで 駆け回る

引率の保母 見守るを見る

 

すばしこい めだかのような 子供たち

老木の脇 すりぬけていく

 

おそらくは SNSの 効果には

プラスマイナス 自他の軋轢

 

吐き出して 楽になるひと 吐き出され

苦しくなるひと そのくりかえし

 

よく見れば 見えるものさえ 見えぬ目に

今夜の月は 雲に隠れる

 

ディストピア 意識はしても ユートピア

肌に合わぬと リアルな路線

 

凡俗の 集合体の 破れ目に

真実を見る 実相を書く

 

当たり前 意外性なし 既視感を

わずかに超える 日常に拠る

 

ただひとつ 笑う世間に 鬼はなし

魑魅魍魎の 幻影あれど

 

いかにして 仏頂面を ゆるませる

破顔一笑 寄席は極楽

 

はやりもの 我には響かぬ ものもある

そういうものだと 思えば気楽

 

そういえば 今日から七月 気が付かず

傘さす散歩 合羽の幼児

 

どしゃぶりと 予報を聞いて 巣篭れば

曇れるままに 日は暮れにけり

 

日常の 生活ならば 共感す

イズムとなれば 敵対激し

 

好きな物 並べてみては 悦に入る

嫌いなものを 好きに変えては

 

笑いつつ 悲しむ心 憎みつつ

許す気持ちで 今日もはじまる

 

嫌われて いると思えば 偏屈に

こころ許せば 寛容になる

 

傑作と 思えば嬉し 湯気が立つ

しばらくすれば 冷や飯と化す

 

そのひとの ことを思えば 辛口に

いや甘口に なるとやいわん

 

本当は 焦る心と 不具合と

陰険至極の おれであっても

 

深剃りの 剃刀当てて 無精ひげ

剃りきりたれど 肌腫れあがる

 

朝寝して おそいランチに ずれこんで

夕食時も 食欲覚えず

 

クウネルを 日課としつつ 巣篭れば

地味な遊びも 心親しむ

 

ちょろちょろと 走り回るは 子供たち

思わず止まる 老いの足元

 

だれだって 幼い頃が あったんだ

タイムマシンよ 連れていってよ

 

くだらない つぶやきばかり 口を突く

それが現実 それが自分だ

 

だれもみな なにほどもない 平凡に

日々めくられて 年を取り行く

 

感覚の ずれたる者と 乗り合わせ

始終苛立つ 道行き辛し

 

ひとならば 多少の違和を 飲み込んで

柳に風と 流れゆきたし

 

これほどの 美女と思えば 消え失せる

果てなき夢の 夢のまた夢

 

かつどんの うまい店なら 知ってるよ

やわらかい肉 アツアツごはん

 

湯船には 催眠術師が 隠れてる

こっくりこっくり 船漕ぎはじめ

 

階段を 昇れば視界 広がって

遠望すれば 霞の彼方

 

昼時の ゆるむ時間の たゆたいに

浸るがままに 夢の世界へ

 

片田舎 午睡に耽る ハンモック

ゆらり揺れては 思い出の園

 

目覚めれば 軽い頭痛に ふらついて

いっぱいの水 しめやかに飲む

 

この石は 鈍く光れば ひっそりと

無人の島に ひとつ埋もれる

 

そのように わたしの胸に 響き来る

妙なる調べ 光を放つ

 

時間論 積もれる塵を 払いては

裸の謎に わなわなとする

 

瞑想の 霞を通し 現れる

象形あれば 目を凝らし見る

 

真実を 見る目を隠す 虚偽の靄

吹けど払えど 深く垂れ込む

 

わが胸の どこかに潜む 諧謔

泉よ湧けよ 巣篭る日々に

 

ウィンブルドン 時差を忘れて 見るテニス

うなるサーヴィス 刺さるリターン

 

年の功 見逃さないよ いいものは

真贋深く 見分ける目にて

 

いい詩なら 必ず見抜く 覚悟持ち

静かに触れる 脈動たしか

 

こよいこそ コロナを超えて 相会うは

銀河のほとり 夜空の彼方

 

七夕は ワクチン接種 二回目の

副反応も 星に願いを

 

二回目の ワクチン接種 このあとの

副反応よ 軽く済んでね!

 

気になるね 「かかりつけ医」って 何だろう

勝手に患者が 決めればいいの?

 

祭さえ 分断の中 興奮と

冷淡混じり 傾く神輿

 

おばさんは 年寄りだとは 思わない

おじさんはまあ そうかなと思う

 

副反応 予想はしたが 発熱と

倦怠感と 節々痛む

 

宣伝は したくないけど しなければ

だれもしらずに ほこりをかぶる

 

これほどに 気合を入れて 仕上げても

気まぐれだけは どうしようもない

 

見向くのも ほっておくのも そのひとの

気分次第と わりきってみる

 

便利だが 料金高く 複雑で

スマホ改善 高齢者祈る

 

年寄りに やさしいスマホ 作ってね

使いやすくて 料金安い

 

ガラケーに 戻る年寄り 多くいる

スマホにこだわら なければいいか

 

便利さは 危ない魔法 知らずして

手放すことが できないスマホ

 

ようやっと 副反応も 収まって

抗体たしかに わが身に備われ

 

さまざまな 出会いは不思議 できるなら

わが身に起きよ 息飲む奇跡

 

あれこれと テレビに映る 出来事に

ふりまわされて 危うく生きる

 

轟轟と 日々は激流 無差別に 

幸も不幸も 飲み込み流す

 

この文字は 全部過去だよ 現在は

飛ぶがごとくに 消える瞬間

 

ツイートで どれだけ人が わかるだろう

どちらともなく 感じ合えるか

 

中立を 基本としつつ 公正も

笑いにくるみ ひっそり生きる

 

なにを書く 書きながら書く 書くことは

書いているうちに 現れてくる

 

書いたもの そっと差し出す 読む人に

通じるところ あればいいなと

 

考えに 考えて書く 作品も

気分次第で 読まれもしよう

 

実直で 訥弁ながら 熱血派

オリンピックは どうなるのかな

 

全国の 各所で豪雨 注意報

熱中症の 警戒重なる

 

炎天下 幼児は乗ります 二輪車

見守る若き パパママまぶし

 

久しぶり 近くの大学 合格と

聞けば凛々しく 眉形よし

 

幻の この世はみんな 儚さの

ヴェールの陰に 覗く花影

 

なんとなく みなそれぞれに つぶやいて

自己中心に 他人は七味

 

それぞれに 言いたいことを つぶやくは

カオスの極み 自由の遊び

 

なにごとも 天気任せの 生き方は

晴れのち曇りのち 甘えのち苦労

 

わが体 わがものであると 思いつつ

ときには心 遊離したかと

 

一時の 不調であると 信じては

気を取り直し 深呼吸する

 

突き詰めて 追い詰めて知る 愚かさを

放してやれよ 勝手にしろよ

 

乱れても 心静かに 目を閉じて

八つ数えて 息整える

 

このマスク 捨て去るときは 深呼吸

叫びは響く 歓喜に満ちて

 

にわか雨 昨日と違う 降り方に

おやまあの顔 ふむふむと言う

 

ひとりでは 何も見えない 現実の

諸相複眼 合成動画

 

血が上る なにをそんなに 根詰めて

熱中症の 一歩手前に

 

だらだらと 過ごす梅雨明け しゃんとしろ

五分の魂 火もまた涼し

 

わが心 操ることが できるなら 

もすこしましな ひとになれたか

 

なぜこれが わからないかと 歯がゆさに

歩いてゆけば 蝉の鳴く道

 

おそらくは 違う素材の 心琴は

音色波長も まれに共鳴

 

掌に 包み込む虫 透明の

そら飛んでいけ 羽を広げて

 

瞑想の 夢の帳の その先に

後ろ姿で 座するはだれか

 

昔より 伝えられたる しきたりを

破る覚悟で 戸を開け放つ

 

怒髪天 いつも繕う 堪忍の

袋の緒まで 切れてしまえば

 

打ち壊せ 頭突き足蹴り 裾払い

ハンマーパンチ 銃刀爆弾

 

怒りくる 亡者の群れは 幽明の

壁を壊して 生者に迫る

 

コロナ下に 口を覆いて 巣篭れば

楽しいことも 呟きがたし

 

とりあえず そこに顔出し 見回せば

道は開ける 心は晴れる

 

非力だと 知って辿った この道も

こつこつ登り ここまで来たよ

 

今日もまた 言わずもがなの 一言を

取り戻せずに 剣呑至極

 

まだまだと 思っていれば 時は疾く

過ぎ去りゆけば 地団太を踏む

 

だれもみな 勝手なことを 言っている

奥歯が折れて 痛む舌先

 

ある意味で オリンピックの 開幕は

今の世界の 状況映す

 

はればれと 開会式が 行われ

わくわくどきどき できればいいね

 

なんとなく すっきりしない 曇り空

もやもや飛ばす 魔法はないか

 

平凡で 退屈至極 変わりない

当たり前でも かまいはしない

 

ともすれば 意外な見方 さかさまの

怪奇ホラーに 惹かれる世相

 

ほどほどを よしとはしない 魂に

突き動かされ 危険を冒す

 

ワクチンの 予約とれぬと いうひとの

耳にもじりり 蝉の声する

 

はじらいを なくしたわけじゃ ないだろう

マスクをすれば 読みえぬこころ

 

大谷君 オリンピックの 陰にいて

投げて走って 打って微笑む

 

それぞれに すました顔で 行き過ぎる

泣かせてやろう その無関心

 

他人など 無きがごとくに 無表情

叩いてやろう そのしりっぺた

 

あいさつを しない普通が 定着す

怒鳴ってやろう その勘違い

 

なぜかしら 遠くに見える ひとばかり

パントマイムも 狼煙も見えぬ

 

いくたびも 思い知ったが 愚かにも

また傷つけし 心が痛む

 

だれのせい 人のせいでは ないのなら

おれのせいだと 思うよりなし

 

失言を 吐いてしまった 唇を

きつく噛んでも 帰らぬ心

 

いくたびも 過つたびに 反省す

もう二度とせぬ 誓い新たに

 

コロナ下に 巣篭る同士 理不尽な

いさかいもある 賢く避けよ

 

流れ来る 泥水あれど 避難して

丘の上にて 水引くを待つ

 

お笑いを 聞いて微笑む 平常心

取り戻せれば とりあえず〇

 

歌声や 笑い声聞く 日常が 

いつのまにやら 帰って来いと

 

もともとの 冗談かわす 気心を

魔法の風で 吹き込まれたし

 

これもだめ あれもだめだと いうひとの

唇を見る 夕もやの中

 

これもいい あれもいいよと いうひとの

瞳を覗く 朝日の中に

 

もくもくと その日を過ごす 一個人

なにも言わずに 思い溢れる

 

できるなら 打てば響くを 望みたい

静まり返った 廃墟に佇む

 

崖削り 建てたマンション 幾棟も

並ぶ傾斜地 蝉鳴きしきる

 

気まぐれは 人の性なり ほどほどに

距離をとりつつ 憎悪は避けて

 

コロナ下の オリンピックは 手放しの

歓喜と言えず 空覆う雲

 

それぞれの 思いを胸に 生きるのみ

肺活量の ぎりぎりを吐く

 

崩壊を 認められずに 困惑の

末は言葉の あやにすがれる

 

さは言えど 寂寥感も 否めずに

罪悪に似て 後味悪し

 

沈黙に 戻りて明日は 巣篭りの

窓辺に立ちて 蝉しぐれ聞く

 

熱戦の 模様はひとり 思い出す

条件外せば 輝く選手

 

残響の 音に寄与する 心拍の

磁気レゾナンス いよいよ寂し

 

日替わりの 小さき違和に 戸惑えば

嵐の音に 震えて潜む

 

弱きもの だれのことかと 思いつつ

破綻崩落 脱力自滅

 

強風に 枝も折れよと たわむ樹の

中を駆け行く 幼子の脚

 

雨風の 激しき中も 鳴きしきる

蝉のしぐれに じっと聴き入る

 

祝祭の 終わりしのちの 番組は

どのチャンネルも 再放送多し

 

向かい風 進むことさえ ままならず

それでも犬を 連れたひとたち

 

回想と 言うには近い 祭典の

映像溢れ 胸詰まる今日

 

何思い 帰り行くのか 選手たち

カクテル光線 渦巻く心

 

かなしくて うれしいことは わりなけれ

責める咎める 褒めるおもねる

 

ときたまに 羽目を外して でたらめを

言いたい放題 カオスに酔って

 

ともすれば 常識さえも 揺るがして

蛇蝎の如く 影絵を生きる

 

よき夢を 見せておくれよ 夢の精

夜安らかに 深き眠りを

 

責任を とれと言われる ひとあれば

流れゆく川 精霊浮かぶ

 

洪水は 避難に限る 情報に

溺れぬように 賢く選ぶ

 

容量を 超えないように 脳内の

情報増水 放流すべし

 

ヴァリアント 絶えず変わるは ものの常

忍耐強く 対策を練る

 

大谷さん 39号 ホームラン

打てば飛び散る  歓びの声

 

ZOOMにて 熱のこもった ミーティング

意見を交わす 顔の近さよ

 

作品の 向こうに見える 作者あり

ひとつになって 読者を包む

 

なによりも たいせつなもの 仲間たち

淡い交わり 深い共感

 

付き合える 奇跡に感謝 わずかでも

接点あれば 真剣に会う

 

はかなさの 影通り過ぎ 去り行けど

今ここにある あなたとわたし

 

不可能を 可能とするは 魔術師の

手管にあらず 愚直な努力

 

奇妙さが ふつうになれば 穏やかな

景色と共に 人が消えゆく

 

どうしても おせっかい焼く ひとの性

余計なことは なさずもがなと

 

正義ぶり 反省強いる ひとのいて

真実を見ず 心は弱視

 

この深さ わたしは沈む この広さ

わたしは俯瞰 真実を見る

 

ありふれた 日々の暮らしの 開け閉めに

宿る見えない ギフトに触れる

 

炯眼の 持ち主はどこ たずねても

答えはなくて 夜霧は深し

 

雲間より 月は出で来る かたわらに

明るく光る 星の名はなに?

 

宣伝は うまい下手あり それ越えて

手元に届け 心に響け

 

自画自賛 自己満足に 自尊心

自己陶酔に 自己愛自己中

 

どなたかと わが著書の会う 幸あれと

切望しつつ 今日も始まる

 

判決は 死刑と聞けば おおと言う

執行までの 心臓の音

 

控えめはいい 頑ななのは やめてよね

すこし素直に なれば幸せ

 

だれにとも 問わず語りに 零れたる

心の露を 結ぶ一葉

 

あれこれと 欲深ければ 散る散るの

満ちる汚濁に 進路失う

 

文学は 人間科学 ありとある

知識経験 ふまえて語る

 

浅学を 恥じることなく 感覚の

たしかなキャッチ 忠実に描く

 

八月よ 過ぎる影追う 夏虫の

嘆きの声に ヴィオロンも泣く

 

ひとはみな こころがわりの 秋の空

ほほえみ消えて そっぽむく風

 

くりかえす サブリミナルに 呼びかけて

懐かしい声 聞こえる方へ

 

秋雨の けぶる裏道 抜けていき

地物野菜を 抱えて帰る

 

電子とは 永遠なれど 不安定

常に生滅 記録に不適