南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

危機

 

    危 機

 

            南原充士

 

外の景色を見ていると、
時空のゆらぎは見えないが、
心の揺らぎは感じる。
子供たちが遊んでいるのを見ていると、
自分の影は見えないが、
未来を感じる。
ひとりひとりの顔は見えないが、
夥しい人々がこの世界に生きていることを想像する。
どんな危機があろうと、
ひとびとは生まれ死ぬのだと痛感する。

2020南原充士プロフィール

 

南原充士(なんばら・じゅうし)


1949(昭和24)年2月7日生、茨城県日立市出身
1972(昭和47)年3月 東京大学法学部卒


日本詩人クラブ会員

詩、小説、575系短詩、57577系短詩、英詩翻訳、評論、エッセイ等幅広く手掛けていますのでどれかひとつでもご覧いただければ幸いです!


◇既刊詩集12冊:

『散歩道』『レクイエム』『エスの海』(以上、私家版)
『個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか』(近代文芸社
『笑顔の法則』(思潮社) 
『花開くGENE』『タイムマシン幻想』『インサイド・アウト』『ゴシップ・フェンス』『にげかすもきど』『永遠の散歩者 A Permanent Stroller』(以上、洪水企画)
『思い出せない日の翌日』(水仁舎)


◇所属詩誌:『space』『repure』『詩素』『buoy』


◇既刊小説7冊:

* Kindle 小説

『エメラルドの海』
『恋は影法師』
メコンの虹』
『白い幻想』
『血のカルナヴァル』
カンダハルの星』


* BCCKS 小説

『転生』


◇ブログ:*『きままな詩歌と小説の森』 https://nambara14.exblog.jp/  
     *『続・越落の園』https://jushi14.hatenablog.com/
                             ―論考『価値観の研究』ほか掲載-


◇翻訳詩:

* ディラン・トマス小詩集(16篇)
* シェークスピアソネット(全154篇を少しずつ翻訳中)


          以上は、上記『きままな詩歌と小説の森』に掲載中。


Amazon著者ページː https://www.amazon.co.jp/l/B00UBG2BMI


SNStwitterFacebookmixi、灰皿町

◇メールアドレス: nambara25@hotmail.com

ドッジボール

    ドッジボール

 

             南原充士

 

どっちみち
当てるか当てられるかだ
癖球をかわし
速球をかわし
上手くいけばナイスキャッチ
波のように寄せては引いて
どっちもどっちだ
最後のひとりがかわしそこねる
鈍重なのは情けない
土性骨の座った
燕小僧を
味方に入れて
今度こそ勝ちだ
どじなボールは許さない

 

 

ヒタヒタ

 

 ヒタヒタ

 

    南原充士

 

何かが追いかけてくる
ヒタヒタ

急ぎ足になる
ヒタヒタ

道を曲がる
ヒタヒタ

無人小屋を突っ切る
ヒタヒタ

川を渡る
ヒタヒタ

丘を越える
ヒタヒタ

谷底に落ちる
ヒタヒタ

地中に埋もれる
ヒタヒタ

正体不明だ
ヒタヒタ

遡ってみる
ヒタヒタ

出発地点に戻る
ヒタヒタ

入れ替わっても
ヒタヒタ

出まかせを言っても
ヒタヒタ

消え失せても
ヒタヒタ

 

 

シェークスピア ソネット 89

ソネット 89

 

        W.シェークスピア

 

もしあなたがなにかわたしのした過ちのためにわたしを見捨てることがあるとしたら
わたしはその仕打ちについてじっくりと考えるだろう
わたしの詩がお粗末だとあなたが言えばわたしはそのように書くだろう
あなたが挙げる理由に対して弁解などはせずに、
恋人よ、あなたはわたしのことをその半分も悪しざまには言えず
あなたが変化を願ったとしても丁寧な表現にとどめる
なぜならわたしは自分自身を辱めるのであるし、あなたの意思をわきまえているので 
わたしはあなたとの関係を断ち切り、疎遠に振舞うだろう、
あなたの歩くところへは出向かず、愛しいあなたの名前も
もはやわたしの口の端に上ることはないだろう
なぜならわたしが卑俗過ぎてあなたの名誉を傷つけたり
たまさかわたしたちのこれまでの関係を漏らしたりするといけないから、
あなたの側に立ってわたしは自分にさえ不利な弁論をすることを誓う
というのはあなたが嫌う人物をわたしは決して愛してはならないからだ

 

Sonnet LXXXIX

 

        W. Shakespeare

 

Say that thou didst forsake me for some fault,
And I will comment upon that offence:
Speak of my lameness, and I straight will halt,
Against thy reasons making no defence.
Thou canst not, love, disgrace me half so ill,
To set a form upon desired change,
As I'll myself disgrace; knowing thy will,
I will acquaintance strangle, and look strange;
Be absent from thy walks; and in my tongue
Thy sweet beloved name no more shall dwell,
Lest I, too much profane, should do it wrong,
And haply of our old acquaintance tell.
For thee, against my self I'll vow debate,
For I must ne'er love him whom thou dost hate.

 

風薫る

 

風薫る


我が里に つつじうぐいす ハナミズキ  月影冴える 八十八夜
つまらない けんかをしては かえりみる おろかなじぶん かわりはしない 

すくなくも おろかであると しったうえ けんかをさける かしこさをしる

けんかする パターンをしり あらかじめ あやういふちに ちかづきはせぬ
ひととびに 夏日となりて かく汗は  千筋となりて わが身を伝う
冷汗を なめる唇 塩辛く 今日もささいな いさかいに泣く
コロナとて 自粛で過ごす 日常に 忍び寄る影 長くたゆたう
頼らねば 生きていけない 者同士 ののしりもまた 愛護のごとし
見えもせぬ 驟雨のごとき 襲来に 覚めても消えぬ 桎梏の夢
悪疫は うつつ跋扈し 跳梁す 無情の滝よ したたかに打て
今夜には 心をこめて おやすみを 明日の朝には おはようを言う
明日の朝 おはよう言うと 誓っては 今夜はそっと おやすみと言う
おやすみと 言えば明日は やってくる こんやは深い 眠りの園へ
めざめれば 今日もうれしい ことがある かなしいことに さよならをして

おはようと くちずさんでも とどかない 声のかわりに こころを送る
曇り空 晴れ行く先を 見上げては 湧き来る思い 気球に飛ばす
くやみつつ おろかなことを くりかえし これが自分と 途方に暮れる
いたわりを 宗としつつも われしらず 口を出るのは 暴言ばかり
苦しみを おおきな愛に 包み込み 自粛の窓辺 みんなは祈る
いつのまに ひとを避けつつ 歩くわれ 触れてはならぬ 話してならぬ
みつめつつ ささやくひとと 出会えずに 嘆きの壁に こうべを垂れる
あたらしき スキンシップの 発明を ためしてみたい わくわくしたい
長袖を 半袖にして 初夏の 日射し浴びれば 体が火照る
夏らしい 子供の日だと 気が付いて なぜか幼い 自分に戻る
老人と なりたる自覚 足らずして 鏡の中に いるのはだあれ?
いつのまに こんな姿に なったのか 孫に向かって 笑うのはだれ?
晴れた空 甘い空気に 誘われて 出かけてみれば 夕立の降る
現実が ストレスフルと 知りつつも ステイホームで 空想が飛ぶ
だれもみな 不意の嵐に あおられて  浮足立つも 立ち止まり見る
真夜中に 緊急地震 警報の けたたましくも 鳴りて響きぬ
そのときに 目覚めし子らは 母の手に 泣きべそかいて すがりつきけむ
こんな時 泣きっ面に 蜂かもと 不気味な揺れの 収まるを待つ
予期しない 便りを読めば なぜかしら 心は弾む ボールのように
だれのため 雲一つない 空の下 なにをするため わたしはいるか
そんなにも 考えすぎては 身の毒と そこいらへんを ひとまわりして
無になって 空気になって ふわふわと 透明人間 大空翔ける
月齢の 日めくり見つつ 見上げれば 月影さやか 天頂に満つ
スケボーで 並んで走る 少女たち リズムに乗れば 天使の舞へ
ストレスを 化学反応 瞬間に そよ風にして 飛ばしてあげる
これ以上 できないぐらい やってみる あとはたとえば ひねもすのたり
心配も くたくたになり ぼろきれの しぼりねじれば からからと鳴る
てやんでえ 言ってはみても あとはない 風に任せて さすらいびとよ

 

The Environment

I try to harmonize the change of the weather with going up and down of my feelings.
A living body of mine consists of the body, mind and environment roughly speaking.
A person is to blame for his or her vulnerability
But the weather is not in such position.
I know that as you are the environment of me,
I am the environment of you.
Is it going to rain after sunny weather today?