南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

   

 

子供たちが遊んでいるのを見る。
見守る大人を見る。
見知らぬ人々を見る。
木を見る。
空を見る。
夢を見る。
再び元のところを見るとだれもいない。
ほとんどは外からやってくる。
ちょっぴりの自分が
多くの素材によって
大きな翼を与えられる。
ゆっくりと飛んでいこう。
みんなといっしょに。
 

A Wing

 

I see children playing together.

I see grown-ups watching over their children.

I see strangers.

 

I see trees.

I see the sky.

I see dreams.

 

When I see the people again,

No one is there.

 

Almost everything comes from outside.

 

I, a small being, am given a wing

Made from a lot of things.

I will fly slowly

With anybody.

シェークスピア ソネット 113

 

ソネット 113

 

                           W. シェークスピア

 

わたしがあなたのもとを去ってからはわたしの眼は心にあります

わたしが出かける時にわたしを支配するものが

その機能を放棄して部分的な盲目となっています

見えているように見えても、実際にはよく見えていないのです、

なぜならそれはいかなる形も心に届けないからです

鳥も、花も、あるいはそれがとらえた形をも

心は眼がとらえた対象を見ることができません

眼自体もそれがとらえたものの形を保つことができません

もし眼が最も野卑なものや高貴なもの、

きわめて美しいひとや醜いひと、

山や海、昼や夜、

鴉や鳩を見たとしても、それはすべてをあなたに似せてしまうからです、

あなたのことだけを思い、あなたにどっぷりと浸った

わたしの誠実な心はわたしの眼を不誠実なものにしてしまうのです。

 

 

 

Sonnet CXIII

 

                                     W. Shakespeare

 

Since I left you, mine eye is in my mind;

And that which governs me to go about

Doth part his function and is partly blind,

Seems seeing, but effectually is out;

For it no form delivers to the heart

Of bird, of flower, or shape which it doth latch:

Of his quick objects hath the mind no part,

Nor his own vision holds what it doth catch;

For if it see the rud'st or gentlest sight,

The most sweet favour or deformed'st creature,

The mountain or the sea, the day or night,

The crow, or dove, it shapes them to your feature.

   Incapable of more, replete with you,

   My most true mind thus maketh mine eye untrue.

シェークスピア ソネット 112

 

ソネット 112

 

                   W. シェークスピア

 

あなたの愛と憐みが 

わたしの額に刻印された低俗な噂の傷跡を癒すのです

わたしを良いとか悪いとか言う声があっても気にしません

あなたがわたしの悪を覆ってくれ良さを認めてくれるからです、

あなたはわたしのすべてです ですからわたしは

あなたの言葉からわたしの恥辱と称賛を読み取らなければなりません

ほかのだれもわたしにはいないも同然でわたしもほかのひとのために生きてはいません

わたしの頑なな感性も正しいか誤っているかをわきまえるように変化します、

あの底知れぬ淵にわたしはすべての煩いを投げ込みます

ひとびとの声に対しては 批判的なことにも追従にも

クサリヘビのように耳をとじています

見てください わたしがどうしたら無視せずに済むのかを、

あなたはそんなにもわたしの生きる目的となってしまったので

わたし以外のひとびとにはあなたが死んだように見えるのです。

 

 

 

Sonnet CXII

 

       W. Shakespeare

 

Your love and pity doth the impression fill,

Which vulgar scandal stamped upon my brow;

For what care I who calls me well or ill,

So you o'er-green my bad, my good allow?

You are my all-the-world, and I must strive

To know my shames and praises from your tongue;

None else to me, nor I to none alive,

That my steeled sense or changes right or wrong.

In so profound abysm I throw all care

Of others' voices, that my adder's sense

To critic and to flatterer stopped are.

Mark how with my neglect I do dispense:

   You are so strongly in my purpose bred,

   That all the world besides methinks y'are dead.

南原充士 未完詩集のご紹介

 

いままでいろいろな詩を書いてきましたが、さまざまな事情で詩集として発行することなく自分の手元で眠っている詩篇がいくつかあります。

 それらの詩篇の中には、すでにどこかに発表したけれども詩集としては出版していないものと
まったくどこにも発表したことのないものとがあります。

 未発表の詩篇もできればいずれどこかに発表したいと思っていますが、とりあえず、この場にいくつかを載せてみたいと思いつきました。

 それらの未刊の詩集(小詩集と言ったほうがいいかもしれないぐらい小規模なものが多いです。)には、

 20代から30代にかけて書いた、

 小詩集『はつ恋』
 小詩集『なぜかぼくはやさしくなる』
 小詩集『駅の階段』
 小詩集『しずかな夜』
 小詩集『21世紀のわくわく星』

 と、

 50代, 60代に書いた、

 詩集『アシメトリー』(仮題)(恋愛詩篇
 詩集『忘却の川』(仮題)(抒情詩篇
 詩集『プラセボ組曲(仮題)』(叙事的な詩篇)、
 詩集『さびしがりやのロリポップ(仮題)』(抒情詩篇
 詩集『レジリエンス(仮題)』(さまざまな手法を試みる詩篇
  があります。

  さらに、

 詩集『滅相(仮題)』(言葉遊び、ユーモラスな詩篇
 詩集『歌声(仮題)』(暗喩を意識した詩篇
 詩集『放物線(仮題)』(抒情詩他様々なタイプの詩篇
 詩集『ヘルプデスク(仮題)』(現代社会の様相を描いた詩篇
 詩集『伝言(仮題)』(子供向けの詩篇
 詩集『時間論(仮題)』(時間にこだわった連作詩篇
 詩集『ノスタルジア館(仮題)』(思い出にこだわった詩篇
 詩集『今(仮題)』(私的なことがらを記した詩篇
  ほかにも取り掛かっています。
 
 上記のうち、詩集『レジリエンス』は、出版を予定しています。

 振り返れば、いろいろなタイプの詩を書いてきたような気もしますが、実際は、自分が思うほど違っていないのかもしれませんね?

 年齢は高くなっても、「いかに若々しい感受性を維持できるか?」 なかなか難しいとは思いますが、自分なり工夫をしていきたいと考えていますのでよろしくお願いします!

  
                                        令和3(2021)年3月 
                                                     南原充士

 

『春暖』(575系)(2021.3)

 

  『春暖』(575系)

 

      (2021.3)

 

 

春暖の すこし狂わす 身と心

 

近景と 遠景ありて 春朧

 

春雷を 風神雷神 叩く撥

 

春雷に 人事を乱す 内の神

 

珍しく 背中の張るは 春の乱

 

漏れ来るは 春の日差しか 戸惑いか

 

自らの 中のひとへと 春よ来い

 

寝返りを 打つがごときの 春の空

 

宣言に 振り回される ここも春

 

図らずも 名のみの春に 出会う人

 

花曇り 人の機嫌も 損ねがち

 

年代の 矜持を継いで 雛飾り

 

かたわらの ソシンロウバイ 浅い夢

 

梅の香も 嗅げぬをかこつ 無粋人

 

枝ぶりを 見つつ過ぎゆく 桃の園

 

春一番 足元揺らす 脳散らす

 

『春朧』(57577系)

 

    『春 朧』(2021.3)(57577系)

 

 

詫びるごと 遣る瀬無き世に 長らえて そっと巻き上ぐ 鎧戸の陰

 

狭量を 捨ててくつろぐ 素浪人 この世にあれば 花の香を嗅ぐ

 

頑固者 互いに睨み 軽蔑し 蛇蝎の如く 嫌い合う仲

 

悲しみは 倍になるとも 喜びは 倍々になれ 包みふくらめ

 

縁ありて 怨なきままに 年経れど 血筋切れずと 辿る消息

 

繰り返す 毀滅のごとき 億兆子 かすかな時に 在りし証しよ

 

自らに 言い聞かせては ため息の 合間に空を 果てしなく追う

 

諦めの 重なる帳 かきわけて 一筋通す 糸の震えよ

 

避けきれぬ 闇の回路を 迷いつつ かすかな光 感じる方へ

 

悲観癖 オプティミストに つけかえて 内なる汚泥 流し去る術

 

突然の 欠落あれば 動揺す 連鎖の不調 激動の波

 

春みたい ああそうだねと ぽかぽかの 日向に出でて 冬服を脱ぐ

 

風吹けば 身を折り曲げる 雨降れば 顔ふせ首縮め 濡れながら行く

 

雨あがり 日が差し始め ぬくもれば 大きく伸びて 弾みつつ行く

 

天体の 運行見ても 今日明日の 定めは知れず 彷徨いて行く

 

平凡な 街の凡人 茫然と 梵鐘を聞く 滂沱の涙

 

声揃え 悪しざまに言う ひとあれば おのずから見る 歪みし虚像

 

騒乱の 世間にあれば 心憂し 瞳曇りて 道を過つ

 

ざわめきに あれば乱れる こころなら 静かの森へ 忍んで行こう

 

清掃か 警備か受付 配達か 細い路地にも しだれ梅咲く

 

心から 呼びかけてみる 応え来る 熱情の波 興奮の渦

 

原石を 手に取ってみる 透かし見る 磨けば光る 未来を見抜く

 

 

シェークスピア ソネット 111

 

ソネット 111

 

            W.シェークスピア

 

おお!わたしのためにあなたは運命の女神をたしなめてくれませんか?

わたしを悪行に走らせた罪深い女神を

女神がわたしの生涯に与えたものは

俗世間の流儀で稼ぐ俗世間の実入りでしかなかったのでした、

それゆえわたしの名前は烙印を押され

わたしの本質は紺屋の手のようにそれが携わるものによって汚されます

わたしに慈悲をください、そしてわたしが生まれ変われるように祈ってください

そうして、従順な患者のようにわたしは

わたしの悪疫を治すために何回分かの酢を飲みます

どんなに苦い薬でも苦いとは思わないでしょう

悔い改めるためには倍の苦行もつらいとは思わないでしょう

ですから愛しいひとよ、わたしは請け合います

あなたの慈悲さえあればわたしを癒すのに十分であることを。

 

 

Sonnet CXI

 

       W. Shakespeare

 

O! for my sake do you with Fortune chide,

The guilty goddess of my harmful deeds,

That did not better for my life provide

Than public means which public manners breeds.

Thence comes it that my name receives a brand,

And almost thence my nature is subdued

To what it works in, like the dyer's hand:

Pity me, then, and wish I were renewed;

Whilst, like a willing patient, I will drink

Potions of eisel 'gainst my strong infection;

No bitterness that I will bitter think,

Nor double penance, to correct correction.

   Pity me then, dear friend, and I assure ye,

   Even that your pity is enough to cure me.