南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2024-01-01から1年間の記事一覧

ダメ

夜と昼 人と魔物の 夢芝居 だれが演者か だれがお客か リセットの 朝日差し込み 本来の 退屈戻り ひとつ延びする だれもみな 二重人格 謎ばかり 茫然と立つ 場末の路傍 ·誤作動の 迷路は深く 延々と 脳髄狂う 認知の恐怖 設定に 振り回される デヴァイスの …

海東セラ詩集『薔薇とひかがみ』

海東セラ詩集『薔薇とひかがみ』。あらゆる現実が特殊な濾過装置によって淡い幻想へと変換される。砂時計に象徴される時間の経過。「おとことおんなはつちのなかのむくろ」という認識。だからこそ「ひそやかにあまく/ふるえる花のかげで」「えいえんを占拠…

清水鱗造小説『ぽっぺん放送』

清水鱗造小説『ぽっぺん放送』。蛇腹畑線の蛭泉駅近くの土産物屋「ぽっぺん屋」の二階に住むぼくが、ネットワークラジオを開局して沿線の住民と協力して様々な話題や情報を提供するという物語。奇想天外の発想や独特の名付け方や個性的な登場人物やユーモア…

清水鱗造詩集『まんずナマズ捕ってな』

清水鱗造詩集『まんずナマズ捕ってな』。しみりんワールドは、独特のイメージやユニークな用語や微細なものへのこだわりやユーモアあふれる展開などによって益々魅力度を増している。「すれ違えないものはない/(中略)踏ん張れば粘りが出て/計算どおりに歪…

日原正彦詩小説『風子1』

日原正彦詩小説『風子1』。若者耿は突然の交通事故で恋人の麻由を失ってしまう。そのショックからか4階のベランダから飛び下りて大けがをして病院に運び込まれる。そこで看護師をしている風子と出会う。二人は一年前に偶然出会っていた。女性的なタッチが今…

岡田ユアン詩集『囀る、光の粒』

岡田ユアン詩集『囀る、光の粒』。生きる者に「かならず訪れるとされてきた嫌忌」を忘れることはないが、詩の中で描かれるのは鳥の囀りや光の粒そして祝祭である。崩れかかる自分をとどめておくことを希うとき、「どうか とじないで、」「ひらかれながら、ひ…

なんとか

間に合わなかった 突然襲ってきた台風と地震 逃げ遅れた 暗くて寒くて歩くのも難渋した 転んだ痛みで気を失いそうになった トイレに行きたくなったが 足がすくんで思うように歩けなかった 体も心もぐちゃぐちゃになり 一寸先を見通すこともできなかった 危う…

望月遊馬詩集『白くぬれた庭に充てる手紙』

望月遊馬詩集『白くぬれた庭に充てる手紙』。常に新しい詩表現を模索してその成果を遺憾なく発揮し続ける著者の新刊は、故郷広島の思い出や歴史を踏まえた美しい物語詩となっている。特に宮島については地元への愛着と共に猿の扱い方についての批評的視点も…

大家正志詩集『一瞬の不安』

大家正志詩集『一瞬の不安』。禅問答のようだがもっと生身の人間の感覚に近い。民話や伝承のようでもあるがもっと現実の感性に近い。文学芸術はもとより哲学や物理学など幅広い知識と経験に裏付けられながら、どこか自分の本音が漏れるのがユーモラスだ。理…

違和

心が震える仕組みは人によって異なる 共有できる部分とできない部分とがある 芸術的な感動の場合評価が関わってくるとややこしい 時として貶しあいに通じる なんらかの権威が評価に重み付けをすると 社会的な評価の序列が定まってくる そのような力学の中で…

諦め

罅割れる 自負剥がれ落ち 鮫肌の 仮面被って 繕える自我

丸田麻保子詩集『カフカを読みながら』

丸田麻保子詩集『カフカを読みながら』。カフカや芥川龍之介の小説や様々な映画の場面や自らの経験を通じて、生きる上で感じるさびしさや人恋しさが抑制のきいた巧みな表現により詩化されている。既存の作品を利用して新しい世界を創り出す力量は並大抵では…

コロナ感染記

のどの痛み、咳、痰、頭痛、悪寒に息苦しさ、胃腸の不快感、全身脱力感、腰痛、 全体としてインフルエンザのような症状に思えたが、病名はよくわからなかった、 土日故病院は休み、 救急車を呼ぶにはやや重篤度が足りないかと思って、じっと自宅で寝ていた、…

豊原清明詩集『荒磯海のシンとジン』

豊原清明詩集『荒磯海のシンとジン』。Ⅰは、国や戦争への個人的な思い、日々の暮らしに感じる違和感、家族との関わりなどを技巧を凝らして描いた15篇、Ⅱは、荒磯海に現れた妖精のシンとジンの童話的で楽しい「シネポエム」10篇を収める。映画的な詩を書…

瀬尾育生『ユーラシア的戦争について』

瀬尾育生『ユーラシア的戦争について 詩史と世界史をとおって行く』。「満州」からシオニズム・イスラエルまでの世界史が広範で該博な知識と論考によって深く掘り下げられると共に、人間が「世界」という病気の深いメカニズムに触れるという意味合いで詩史を…

吉田博哉の詩「隣人」

詩誌『Culvert No.7』中の吉田博哉の詩「隣人」。このところ吉田博哉の詩作品は鬼気迫るものがある。まな板の音を立てている妻と本を読んでいる自分をめぐる現実と幻想あるいは異界とのあわいに繰り広げられる夢幻世界。懐かしさと妬みと狂おしさと恐怖がな…

大家正志、小説『食べてしまいたいほどかわいい』

大家正志 小説『食べてしまいたいほどかわいい』。地方の印刷会社の営業職として30年あまり働いた後再雇用されて同人誌や自分史などの小規模出版を手掛けながら、自分でも同人誌に小説を発表している主人公。友人の脇田がやっている居酒屋によく顔を出すが…

水田安則詩集『夏のこども』

水田安則詩集『夏のこども』。息子夫婦が別居して孫の姉弟がその母と暮らしはじめる。小学生の姉弟が次第に成長する姿が丁寧に描かれるが、その境遇に打ちひしがれるのは孫以上にジジである自分の方らしい。「夏のこどもはやがて/夏の若人へと羽ばたく/さ…

初夏に寄す

In early Summer 初夏に寄す Dogwoods are talking with cherry blossoms, Remembering an old story, Two countries presented each other their respective lovely trees. ドッグウッド 桜とかわす 物語 In early summer, A helicopter is flying over the…

竹内敏喜詩集『夢みる宝箱の冬』

竹内敏喜詩集『夢みる宝箱の冬』。圧倒的な詩想の豊かさとそれを表現する知識や言葉の該博さに驚嘆する。「ヴォルフィー変奏」と「蛇足から」の二部構成。日常生活、歴史、文学、音楽、科学、哲学等大きな引き出しから文明批評、時代認識、未来予想等が箴言…

大家正志詩集『しずく』

大家正志詩集『しずく』。孫娘らしい「しずく」の0歳から7歳までの成長記録。日常生活の中でのしずくのしぐさや言葉を愛情深く見つめる祖父の視線とともに、著者自身の物理学的関心や人間存在や宇宙のさまざまな事象への深い問いかけを融合させた不思議な…

池田康詩集『ひかりの天幕』

池田康詩集『ひかりの天幕』。この世にあることの不安や不穏な感覚を縦横無尽のイメージと語彙と言葉遊びを駆使して詩に体現させている。どこか芝居の一場面のような情景の設定や見栄を切るようなセリフが深刻な中にも笑いを呼び起こす。幅広い知識と経験が…

柊月めぐみ詩集『星降る森の波音』

柊月めぐみ詩集『星降る森の波音』。緻密な現実観察が幻想的イメージへと移っていく。知的で上品で想像力に富んだ詩の構成や豊富な語彙や言葉の使い方が読者を様々な世界へ連れて行く。キーツを始め英詩にも通じた教養の広さがロマンティックな詩空間を創り…

立花咲也詩集『光秀の桔梗』

立花咲也詩集『光秀の桔梗』。関西弁でなされる家族との会話がなんとも軽妙で思わず笑ってしまう。実際にあった話をもとに巧みに詩作品に仕上げてしまう力量は大したものだ。しかも笑いを通して感じられる人生の喜怒哀楽や生老病死への鋭い洞察にも感心させ…

日原正彦詩集『主題と変奏ーポエジーの戯れ』

日原正彦詩集『主題と変奏ーポエジーの戯れー』。「くそまじめな言葉の仕事から離れて、言葉と遊んでみたい、戯れてみたい」という意図の下、「悲遊曲」「かのん」「うた(立原道造へのオマージュ1~5)」「誕歌 嘆歌 啖呵」「主題と変奏」「路上(本詩取り…

大谷選手の結婚を祝って

『大谷選手の結婚を祝う』 春匂う ビッグ・ヴァレーの ファンファーレ そっと寄せたい 祝いの言葉 ある線を 超えればひとり 彷徨いて 疎外のグラフ 手探りで描く 感覚は 説明不能 デリケート 依拠するものは ほかになければ ただひとり 粋に感じる 色合いを …

春の空

春の空 口喧嘩 決裂までは 行かぬ春 言う言わぬ 齟齬の寒さも 春遠し 好きだよと 言ったことなし 春まだき ガムランの 夢に鳴るのか 時は春 どうしても おれは消せない 春の火事 そろそろと ドルチェの似合う 春近し 本当は 言えないことの 春クレド たいせ…

吉田隶平詩集『青い海を見た』

吉田隶平詩集『青い海を見た』。人生の終わりを意識しながらも紡ぎ出される言葉はおだやかだ。静かに自分の人生を振り返りさまざまな出会いや出来事を思い出す。「何かをしなくてはいけないか//森の木が/陽の光を浴び/風にそよぐように//ただいるだけ…

良くも悪くも

良くも悪くも良くも悪くも 自分は自分。愚かでも 弱くても 貧しくても それ以上でもそれ以下でもない。ぼんやり考え込んでいるうちにすっかり日は暮れて鏡に映るのは白髪しわだらけの老人だ。「時間を大切に!」と若者によびかけ自分は自分の日々を生きるた…

著書宣伝

Amazon.co.jp: 南原充士: books, biography, latest update