南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

春の空

 

    春の空

 

口喧嘩 決裂までは 行かぬ春

言う言わぬ 齟齬の寒さも 春遠し

好きだよと 言ったことなし 春まだき

ガムランの 夢に鳴るのか 時は春

どうしても おれは消せない 春の火事

そろそろと ドルチェの似合う 春近し

本当は 言えないことの 春クレド

たいせつな 視野は乱すな 春の風

祈る空 ここだの春の 乱れても

ドローンに 埋め尽くされる 春の空

ずっとずっと 泣いているよな 春まだき

錯乱を 詫びる間もなく 寒戻る

負い目なき 一日を生きる 寒の土

狂乱を 教訓にして 春うらら

独り言ち はらりと落ちる 冬一葉

朝来れば 夕べを思う 春を待つ

風来坊 途中の春は 風任せ

すれちがい 途方に暮れる 春何処

 

深遠な 理念も言葉 無力でも いつか花咲く 未来を創る