南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

篠田翔平詩集『おくりもの』

篠田翔平詩集『おくりもの』。一見みずみずしい初恋の物語のように見えるが、よく読むと場面や時間が飛んでいたり、会話もとぎれとぎれになっていたり、登場人物も明確な像を持たなかったりと、複雑な構造を持つ超絶技巧が凝らされていることに気づく。儚い…

木葉揺詩集『アーベントイアー』

木葉揺詩集『アーベントイヤー』。奇想天外のドタバタ劇。コーヒーメーカーで切り刻んだ蟻の列が巨大な一匹の蟻になったり、両肩に絡まった柿木がフェリーから投身自殺したり、暖炉の前で死んだ熊を解体し火葬に付す等弾ける言葉による「冒険」は笑いが止ま…

川中子義勝詩集『ふたつの世界』

川中子義勝詩集『ふたつの世界』。猥雑で苦悩に満ちた世界が著者の濾過装置により澄み切って穏やかで懐かしい芸術世界に変換される。全編に詩的なノスタルジアが宗教音楽のように鳴り響き、言葉による美しい結晶として析出している。とりわけ「Ⅲミステルの旅…

シェークスピア ソネット 131

ソネット 131 W. シェークスピア あなたは暴君のようです、あたかも美女たちの誇るべき美貌が 彼女たちを残酷にさせるように なぜならわたしの切実な愛に溺れる心にとってあなたが最も美しく最も貴重な宝石であることを あなたはよく承知しているからです、 …

清水鱗造『彩りキノコ』

清水鱗造『彩りキノコ』。蛇腹畑線という鉄道沿線を舞台として繰り広げられるキノコ狩りの物語。登場人物も場面も行為も関心事も一風変わっていて、「彩りキノコ」とか「蛙地」等の駅名とか「滲出場所マニア」とかの独特のネーミングと相まって、ユーモラス…

時間論Ⅸ

時間論 Ⅸ 南原充士 むかしよく行った海辺の灯台にひさしぶりに行こうと思った 最寄のバス停から三十分ほど歩くと灯台へ通ずる細道の入り口まで着き そこからちょっと崖を上ったところに灯台はある 幸い空は真っ青に晴れて白い雲さえ浮かんでいたので なんと…

加藤思何理詩集『おだやかな洪水』

加藤思何理詩集『おだやかな洪水』。結婚、出産、性、仕事、母、家族、親友の病気、色々な思い出等暮らしの様々な情景が瀟洒なスタイルの詩へと変換される手際は見事だ。それは現実世界が濾過されて言葉で再構成された芸術世界であり、生のリアルな悲喜交々…

森雪拾詩集『ゆきふるよる』

森雪拾詩集『ゆきふるよる』。丁寧に選び抜かれた言葉が静かに並べられると、そこにはなつかしい自然の情景が瞼に浮かんでくるが、森や岸辺や海に木や花や鳥や船を見る目は生きる者の嘆きや幻影を見透している。安っぽい感傷に流れない上質の抒情詩集。特に…

シェークスピア ソネット 130

ソネット 130 W. シェークスピア わたしの恋人の眼は太陽とは程遠い 珊瑚は彼女の唇よりもずっと赤い 雪が白いとしても彼女の胸はなぜ灰色っぽいのだろう 髪の毛が糸だったとしたら彼女の頭には黒糸が生えている、 わたしはこれまでにダマスク色、赤色、白色…

詩集『時間論』目次、あとがき等

詩集『時間論』 南原充士 目 次 時間論 0 時間論 Ⅰ 時間論 Ⅱ 時間論 Ⅲ 時間論 Ⅳ 時間論 Ⅴ 時間論 Ⅵ 時間論 Ⅶ 時間論 Ⅷ 時間論 Ⅸ 時間論 Ⅹ 時間論 ⅩⅠ 時間論 ⅩⅡ 時間論 ⅩⅢ 時間論 ⅩⅣ 時間論 ⅩⅤ 時間論 ⅩⅥ 時間論 ⅩⅦ 時間論 ⅩⅧ 時間論 ⅩⅨ 時間論 ⅩⅩ 時間論 ⅩⅩ…