南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

詩集『時間論』目次、あとがき等

 

   詩集『時間論』  

 

          南原充士

 

目 次

時間論 0

時間論 Ⅰ

時間論 Ⅱ

時間論 Ⅲ 

時間論 Ⅳ

時間論 Ⅴ

時間論 Ⅵ

時間論 Ⅶ

時間論 Ⅷ

時間論 Ⅸ

時間論 Ⅹ

時間論 ⅩⅠ

時間論 ⅩⅡ

時間論 ⅩⅢ

時間論 ⅩⅣ

時間論 ⅩⅤ

時間論 ⅩⅥ

時間論 ⅩⅦ

時間論 ⅩⅧ

時間論 ⅩⅨ

時間論 ⅩⅩ

時間論 ⅩⅩⅠ

時間論 ⅩⅩⅡ

時間論 ⅩⅩⅢ

時間論 ⅩⅩⅣ

時間論 ⅩⅩⅤ

時間論 ⅩⅩⅥ

時間論 ⅩⅩⅦ

時間論 ⅩⅩⅧ

時間論 ⅩⅩⅨ

時間論 ⅩⅩⅩ

時間論 仮説

あとがき

 

 時間論

 

  初めに問があった……。

  

問一 時間は相対的な時間と絶対的な時間とがあるのか?

問二 絶対的な時間があるとして、それは測定可能か?

問三 絶対的な時間の速度はいくらか?

問四 『現在』という時点は宇宙のすべての地点で同一か?

問五 動いている物体は静止している物体よりも時間が遅れる。また進行方向に

長さが縮む。そのことと『現在』がすべての物体が同時に存在する時点である

ことは両立するか?

問六 時間と時刻と時計の違いを明確にすべきではないか?

問七 時間は過ぎ去るのか?それとも空間が変化するための見えない媒介作用

にすぎないのか?あるいは時間という要素(次元?)は空間を変化させる直接

的作用をするのか? 

問八 時間は一瞬ごとに更新されていくと考えてよいか?

問九 存在は『現在』においてしかないと考えてよいか?

問一〇 過去は消えうせるが、記録としては現在に残りうる。

問一一 空間はある時刻に応じて存在するが一瞬後には別の空間へと入れ替わ

ってしまう。空間は連続的に変化していくが同じ時刻にはひとつの空間しか存

在しえないと考えてよいか?

問一二 地球上の人類がとらえている時間は、時計で計測しうるような時間であ

り、秒、分、時、日、月、年等々の単位で測られるが、基本的には移動に要す

る時間としてとらえられているとみてよいか?

問一三 宇宙は一三八億歳だとハッブル定数等から計算されているが、宇宙のす

べての地点で同じ年齢だとみてよいのか?

問一四 同一時刻に同一宇宙空間はひとつしか存在できないと考えてよいか?あるいは、地点ごとに異なる時刻があっても「現在」という共通の時点(空間とともに変化し続ける共通の時点)があると考えてよいか?

問一五 過去は記憶や記録されても、現実には存在していないと言ってよいか?

 

   時間論 仮説 

 

時間は見えない。

時間は経過する。

時間には運動の法則の想定する時間とそれ以外の時間(絶対時間)がある。

相対性理論も絶対時間を論じてはいない。

固有時や時間の遅れや長さの縮小も絶対時間にも当てはまるかどうかはわからない。

絶対時間の性質はよくわからない。

絶対時間の速度も定速か否かも方向も機能も作用も実体もよくわからない。

時計は運動の観測から生まれたが、絶対時間が時計で測れるかどうかはわからない。

空間は時間の経過とともに入れ替わる(移動するかどうかはわからない)。

空間は現在においてのみ存在し、過去になれば消え失せる。

過去の映像も物体も記録もすべてが現在に引き継がれて残存している限りにおいて存在しているのであって、過去の事物はすべて消え失せてしまっている。

過去は膨大な幻影であり、ビデオを再生してもそれは現在において再生されるに過ぎない。

運動の法則はあたらしい時間を前提にしても当て嵌る。

すなわち、物体の運動は時間の経過に応じて刻々と入れ替わる空間に連続的につながることができると考えれば運動の法則は成り立つ。時間とともに入れ替わる空間に物体も入れ替わるはずだから。

現在は宇宙全体で共通の時刻であって同時である。

現在においてだけすべては存在する。

未来は可能性でしかない。

過去は過ぎ去り存在しない。過去は現在に残存する限りにおいて存在する。

時間と空間の性質そしてその間の関係は完全には解明されていない。

絶対時間が存在するとした場合、これまでの物理学(力学、電磁気学など)や化学や分子生物学や医学などにどういう影響を与えるか明らかにする必要がある。

(絶対時間がないということが証明されれば話は別だが。)

日常生活における時空の感覚が現実の時空と異なっていることはありうることだ。

脳がどれだけ時空を論理的にとらえることができるか限界があるかもしれない。

宇宙や生命というもの自体の持つ不可思議性や謎めいた性質はかんたんには解明されないかもしれない。

 

 

あとがき

 

 時間は時計を通して日常生活に溶け込んでいるので、多くの人々は、時間があることには余り疑問をもたないと思う。しかし、歴史的には、時間をめぐって様々なとらえ方がなされてきたし、いろいろな理論が提示されてきたところである。近年においてもハイデガーの『存在と時間』に代表されるように時間は哲学の重要なテーマであり続けているし、ニュートンの時間概念やアインシュタイン相対性理論による時間概念など物理学においても重要な概念であり続けている。特に相対性理論は画期的で現在の物理学をリードしている理論であるので、素直に受け入れておけばよいともいえるが、自分の貧しい知力を尽くして考えてみると、相対性理論さえも時間を正確にとらえきれているとは言えないような気がしてくる。時間は運動との関係で理論化されているにすぎないのではないかという素朴な疑問である。つまり時計で測るのが時間であるというとらえ方を特別の根拠もなく運動論以外の分野(たとえば、さまざまな生体反応や化学反応など)に拡大適用しようとすることは正しいだろうかということである。運動以外の分野においても時間が経過するのであってそれもまた時計で測定可能だと安易に言い切れるものだろうか。そもそも、相対性理論はリーマン幾何学という高等数学を物理学に応用することで革命的な発展を遂げることができたが、数学における時間と物理学における時間を混同してはいけないのだと思う。

 初心に帰って考えれば、現実の時間は見ることができず、過去から未来へ進んでいるかどうかもわからず、時計で測れる時間と同一なのかどうかも明らかになっていない。宇宙は誕生以来およそ百三十八億年が経過しているそうだが、宇宙空間がどのように変化してきたのかも正確にはわかっていない。現在の宇宙は膨張し続けているらしいが、宇宙空間の変化は次々と空間を脱ぎかえるあるいは脱皮するような現象だととらえられないだろうか?その変化を「変間」という概念でとらえて、時間と区別したら理解しやすくなるのではないかというのがわたしの仮説である。この仮説の証明はかんたんにはできそうもないが、そのような問いかけをする余地があるほどに物理学の理論は現実の時空を正確にとらえきれていないのではないかということを指摘しておきたかったのである。

 我々の生活に身近な時間について考えることは、単に物理学だけでなく、広く様々な分野において重要であり興味深いことだと思う。文学においても時間は様々な角度から描かれてきたが、この『時間論』のようなスタイルによって書かれた文学書は前例がないと思われる。本書を詩集と名付けることにはためらいもあったが、詩として表現したかったと言うのがわたしの本音であり書き上がった作品を見ればやはり詩と言うのが最適の仕分けだと言う気がする。

 果たして本詩集『時間論』が多くの読者に興味を持っていただけるかどうかはおぼつかないが、人類が長らくかかえてきた時間という謎めいた存在をできるだけ詳しくわかりやすく掘り下げて問いかけてみたので、たまには変わり種の抽象的観念的な頭の体操を試してみようという気になっていただけたらとても嬉しく思う。

 

新型コロナウイルスはまだまだ終息には至っていない中でも、詩の行為が持続できることを祈りつつ――。

 

南原充士

 

二〇二一年七月一日 

 

 

【著者略歴】

 

昭和二十四(一九四九)年 茨城県生まれ

昭和四十七(一九七二)年 東京大学法学部卒

 

【既刊詩集】

 

『散歩道』(昭和五十一年刊)

『レクイエム』(昭和五十三年刊)

エスの海』(昭和五十八年刊)

『個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか』(平成十三年近代文芸社刊)

『笑顔の法則』(平成十七年思潮社刊)

『花開くGENE』(平成二十年洪水企画刊)

『タイムマシン幻想』(平成二十二年洪水企画刊)

インサイド・アウト』(平成二十三年洪水企画刊)

『ゴシップ・フェンス』(平成二十四年洪水企画刊)

『にげかすもきど』(平成二十五年洪水企画刊)

『永遠の散歩者』(英和対照)(平成二十六年洪水企画刊)

『思い出せない日の翌日』(平成二十七年水仁舎刊)

 

【既刊小説】

 

 「Kindle版(電子書籍)」 

 

『エメラルドの海』(二〇一五年刊)

『恋は影法師』(二〇一五年刊)

メコンの虹』(二〇一五年刊)

『白い幻想』(二〇一六年刊)

『血のカルナヴァル』(二〇一七年刊)

カンダハルの星』(二〇一八年刊)

喜望峰』(二〇二〇年刊)

 

 「BCCKS(電子書籍)」 

 

『転生』(二〇一五年刊)

 

 

 

 

      詩集 時間論

 

      著者 南原充士(なんばら・じゅうし)

 

         発行日 二〇二一年七月一日

 

         発行所 亜鈴亭阿舎

 

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