南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2022-01-01から1年間の記事一覧

詩集『遡及2022』刊行のお知らせ

年末ぎりぎりになって新詩集『遡及2022』をKindle 版で出版しました。今年一年間に書いた短い詩62編を収めました。日々の思いを率直に書いた詩篇なので読みやすいと思います。通常300円でダウンロードできますが、正月3が日は無料キャンペーンを実…

新たな朝

新たな朝 今年もあと二日と思えば胸が騒ぐ。 やがてざわつきが収まり 諦めに似た気持ちになると 急に一年間に起きたことがハイライトとなって瞼を去来する。 それらが懐かしい思い出となってゆらめきながら消えていくと 代わって真っ青な空が限りなくひろが…

『詩ってなんだろう』(谷川俊太郎)

『詩ってなんだろう』の文庫本を著者の谷川俊太郎さんから送っていただいた。実は、すでに文庫本になる前のこの本を持っていて読んだことがあったのですが。あらためて読んでみて、「子供向けにわかりやすくいろいろなタイプの詩が収録されていますが、大人…

南原充士の電子書籍小説のご紹介(2022.12)

『南原充士の電子書籍小説』の御紹介(2022.12) 1.BCCKS SF小説『転生』。 宇宙飛行士の主人公が不時着したアレー星での主人公コータとアレー星人とのやりとりが目玉です。短編ですからすぐ読めますよ! https://bccks.jp/user/135493 2.Amazon (…

2022.12南原充士のプロフィール

南原充士(なんばら・じゅうし)プロフィール 2022年12月現在 一九四九(昭和二四)年二月七日生、茨城県日立市出身 一九七二(昭和四七)年三月 東京大学法学部卒 日本詩人クラブ会員 本名 桑原 薫(くわばら・かおる) 詩、小説、五七五系短詩、五七…

詩集つれづれ(2022.12)

『詩集つれづれ=問わず語り 』 2022年12月21日 1.南原充士詩集=わが既刊詩集15冊を振り返って これまでの詩集についてどんな思いで刊行したのか振り返ってみたい。 詩集『レジリエンス』は、詩集『思い出せない日の翌日』から7年ぶりに刊行し…

シェークスピア ソネット 147

ソネット 147 W.シェークスピア わたしの愛情はいつも発熱のように 長きにわたって病気の世話をするものを求めており 患いを長引かせるものを摂取する 不確かで病的な欲求を満たすために、 わたしの愛情に対する医師であるわたしの理性は その指示が守られな…

山田兼士さんによる詩集『レジリエンス』評

山田兼士(Facebook)2022.8.29 南原充士『レジリエンス』(思潮社) 多岐にわたるモチーフを様々なスタイルで構築した40篇。シリアスに世界の謎に向き合いつつ、時にユーモラスに、時にアイロニカルに突き放すストイックさは貴重な個性と思われ…

冨上芳秀『ジジイの覗き眼鏡』

冨上芳秀『ジジイの覗き眼鏡』。「詩的現代」に11回にわたって掲載した詩集評等を収録した本書は、単なる書評集と言うより、著者の詩に対する思いやさまざまな出会いなどのエピソードをたっぷりと盛り込んだ読み物風の面白さに満ちている。死を強く意識し…

小島きみ子詩集『空と大地の眼で織られた布(テキスト)-愛と希望のmethod-』

小島きみ子詩集『空と大地の眼で織られた布(テキスト)-愛と希望のmethod-』。詩の求道者的な真摯な姿勢だけではなく個人的な経験や思いと様々な芸術作品を織り交ぜることで新たな物語詩を生み出した著者の超絶技巧が光る。生と死のしがらみを超えて愛と希…

シェークスピア ソネット 146

ソネット 146 W.シェークスピア わたしの罪深い肉体の真ん中にあるあわれな心よ お前を包囲し飾り立てる反乱軍に糧食を供する心よ どうしてお前は外壁をそんなにも豪華に飾り立てるかわりに 内部はやつれて飢えに苦しむのか? どうしてお前はそんなにも膨大…

木枯らし

木枯らし孤愁にも いや勝り行く 隔絶の深部凍りて 木枯らしの吹く深い谷 たどりて行けば 地下深く断層滑り 激震に果つ無理解の 砂漠を行けば 蜃気楼物書きの夢 幻想の城

紅葉映え

紅葉映え 無となりて いずこに行くか 秋の悲歌 固陋さえ 包む紅葉の 輝ける 孤愁にも 紅葉は来たり 照り勝る 共感を 超えても叫ぶ 秋の暮れ 共感を 得られなくとも 秋を詠む 好き嫌い 言いようのない 紅葉映え 無理解と 理解のあわい 紅葉愛 感性の 自由に任…

老いの坂道

老いの坂道おたがいに 中古になれば いたわって休みつつ行く 老いの坂道気が付けば ひとは他人に 生かされる死ぬも生きるも 花咲く散るも楽観も 悲観もなくて 淡々と天体運行 成り行き任せ真実は 自撮りできるか 幻滅の肖像画など 修正に出す想像の 自分はど…

文化の日

文化の日 我が心 流しきれずに 紅葉川 かくばかり 訪ねて見れば 紅葉山 切なくも 覗きやまれぬ 紅葉谷 雲に乗る 心地を共に 秋の空 消去法 残った愛を 掌に 帰納法 いずこに行きし 栗ご飯 そうだねえ 自分勝手な 秋が好き それぞれに 好き嫌いあり 秋の味 去…

シェークスピア ソネット 145

ソネット 145 W. シェークスピア 愛の女神ビーナスの手によって造られた彼女の唇は 「わたしは嫌いよ」という言葉を吐き出した 彼女に恋焦がれているわたしに対して、 でも彼女がわたしの悲し気な様子を見たとき 彼女の心にすぐさま憐みの気持ちが湧いてきた…

たなかあきみつ詩集『アンフォルム群プラス』

たなかあきみつ詩集『アンフォルム群プラス』。ロシア語をはじめとする外国語を含む広範な語彙、書物、絵画、音楽、写真、オブジェ、記事、映画やテレビドラマ、様々なイメージと引用と言葉の氾濫、複雑で重層的で凝縮した詩篇から零れるのはくすっとした笑…

シェークスピア ソネット 144

ソネット 144 W. シェークスピア 慰めと絶望、わたしのふたりの恋人は 二つの精霊のようにいつもわたしを誘惑するのです 善良な天使はこの上なく美しい男性であり 邪悪な精霊は厚化粧した女性です、 わたしをすぐにでも地獄へと突き落そうとして わたしの女…

『オミクロンの秋』

『オミクロンの秋』(2022年9月) わりなくも 口喧嘩する 秋の精 信じれば 裏切られても 秋まかせ 掌を 返したのちは 秋に聞け 台風の 余波に濡れつつ どこへ行く 敬老を 忘るるほどに 何をする 放浪を 心に秘めて 秋と和す ずっとずっと あるもののよ…

野間明子詩集『襤褸』

野間明子詩集『襤褸』。現実と空想、自問自答、生死等アンビバレントな感覚、突き詰める意識、高度な表現技巧から生まれる詩篇は、ある種メタフィジカルな世界に入り込む。例えば、「深紅や純白の花も覚めれば襤褸、明日花になるわたし」の色彩や音色や身体…

八重洋一郎詩集『転変・全方位クライシス』

八重洋一郎詩集『転変・全方位クライシス』。広範な知識と経験と膨大な語彙を駆使して今世界が置かれた危機的状況を強烈なインパクトを持った詩篇として描き出し警鐘を鳴らし告発している。沖縄の現状、琉球の歴史、ムンク、カフカ、デカルト、ジョイス、狂…

シェークスピア ソネット 143

ソネット 143 W. シェークスピア ほら、家事にいそしむ主婦は 逃げ出した家禽類を捕まえようと走り出します 赤ん坊を床に置き、捕まえたいと思う家禽類を追いかけて 全速力で走ります、 放置された子供は 彼女の後を追いかけ 泣きながら彼女を捕まえようとし…

清水鱗造詩集『ころころころ』ほか

清水鱗造幻想小説『トラセミ・バッジ』。最近相次いで出版している幻想小説の一篇。溢れ出るイメージ、新造語、物語、登場人物、架空の世界。トラセミの「虫嵐」が来ている中をぼくが低速走行のバスで小旅行に出かけて、そこで出会ったひとびとや訪れた場所…

岩田英哉『詩文楽』(南原充士詩集『思い出せない日の翌日』評)

詩文楽 - Shibunraku: 南原充士の詩集『思い出せない日の翌日』を読む

大家正志小説集『海辺のくらし』

大家正志著、小説集『海辺のくらし』について 『海辺のくらし』 海辺の納屋をジイさんから借りて住んでいるぼくが、たまたま夜仕事帰りに、近くの畑に倒れている女を見つけて自分の納屋まで連れてくる。女はウェットスーツを着たままでいる。言葉も話さない…

高田昭子詩集『冬の夕焼け』

高田昭子詩集『冬の夕焼け』。人の生死を静かに見つめる目は現実と夢が入り混じった情景を見る。幼い時大陸から命からがら引き上げた経験が重しとなって著者の心に戦争の理不尽さを刻み付けた。冬の夕焼けにおける「豊かな死の収穫期まで/みなかなしく生き…

南原充士プロフィール(2022年7月現在)

南原充士(なんばら・じゅうし)プロフィール 2022年7月現在 1949(昭和24)年2月7日生、茨城県日立市出身 1972(昭和47)年3月 東京大学法学部卒 日本詩人クラブ会員 本名 桑原 薫(くわばら・かおる) 詩、小説、五七五系短詩、五七五七七系短詩、英…

シェークスピア ソネット 142

ソネット 142 W. シェークスピア 愛するのはわたしの罪 憎むのはあなたの気高い美徳 罪深い愛情に基づきわたしの罪を憎むこと おお!せめてあなたは自身の振舞いをわたしの振舞いと比べてみて下さい そうすればあなたはわたしの振舞いが非難に値しないことが…

山田兼士詩集『ヒル・トップ・ホスピタル』

山田兼士詩集『ヒル・トップ・ホスピタル』。まさかの入院治療。一か月ほどの間に書いた16篇の詩。「ささやかな記録としてたいせつな記憶として書かざるを得なかった人生詩」。治療が成功して「ムンドゥス・ケンジ―ニア」が蘇り再び多彩な活動でわたしたち…

「瀬崎祐の本棚」

『瀬崎祐の本棚』で、拙詩集『レジリエンス』について紹介記事を書いて下さいました。ありがとうございます。 詩集「レジリエンス」 南原充士 (2022/07) 思潮社 - 瀬崎祐の本棚 (goo.ne.jp)