南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2022-01-01から1年間の記事一覧

瀬崎祐詩集『水分れ、そして水隠れ』

瀬崎祐詩集『水分れ、そして水隠れ』。「虚の言葉と現の言葉が、水彩絵の具のように重なっていく」〈あとがき)。眼球と風景、潤いと乾き、光と暗さ、疎水や湖、旅館や湯等のキーワードが現実と幻想がないまぜになった不思議な物語を紡いでいき、揺れ動く感…

詩集『レジリエンス』刊行の知らせ

【新刊詩集のお知らせ】 このたび詩集『レジリエンス』を思潮社より刊行いたしましたのでお知らせいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 思潮社 新刊情報 (shichosha.co.jp)

日原正彦詩集『はやく来てー子どもの詩ー』

日原正彦詩集『はやく来てー子どもの詩ー』。大人が子どもの目を借りて書いた、楽しくて面白くて辛くて怖い、29篇。若い頃から今日まで溢れる詩心を存分に発揮してきた著者の創作の秘密を垣間見るような純粋な目と心の動きが魅力的だ。何歳になっても詩を…

シェークスピア ソネット 141

ソネット 141 W. シェークスピア 実を言えばわたしの眼はあなたを愛してはいないのですよ なぜならあなたがたくさんの過ちを犯していることに気づいているからです でもわたしの心はわたしの眼が軽蔑するものを愛してしまうのです 心は眼と相反して盲目的に…

葉山美玖詩集『春の箱庭』

葉山美玖詩集『春の箱庭』。ホームにいる父のこと、心を病んでいた母のこと、試練に満ちた自分のことなどがありのままにだが確実な表現技巧により述べられる。最後に、希望に向けて旅立とうとする姿勢が見えるのが救いだ。「この小さな私の箱庭のような街か…

シェークスピア ソネット 140

ソネット 140 W. シェークスピア あなたは残酷なのと同じくらい賢く振舞ってほしい 言いたいことも言わずにいるわたしをあんまりいじめないでほしい 悲しみのあまりわたしが言葉を発し その言葉が 憐みを懇願するようなかたちで表現されるのを避けたいから、…

シェークスピア ソネット 139

ソネット 139 W. シェークスピア おお!あなたの冷たさがわたしの心を悩ましているのに そんなひどい仕打ちを弁護するようにとわたしに言わないでください 言葉ならまだしも視線でわたしを傷つけないでください わたしの命を取るなら計略ではなく力づくでや…

シェークスピア ソネット 138

ソネット 138 W.シェークスピア わたしの恋人が自分は本当のことしか言わないと誓う時 わたしは彼女が嘘をついているとわかっていてもその言葉を信じる 彼女がわたしを世間のまやかしの機微を悟っていない 世慣れない若造だと思えるように、 彼女がわたしの…

村田諒太の言葉

村田諒太は、2022年4月9日のWBA&IBF世界ミドル級王座統一戦でゲンナジー・ゴロフキンに敗れたが、互いにリスペクトしながら死闘を繰り広げたのは称賛に値するものだった。 後日、あるテレビ局のインタビューに応える中で、村田諒太は、「人は桜の花に…

岸本嘉名男詩集(新・日本現代詩文庫)

『岸本嘉名男詩集』(新・日本現代詩文庫)。地元せっつへの愛着をベースに書かれたさまざまなスタイルの詩。一貫しているのは誠実な人柄が観察し経験した多くの事柄だ。英語に訳した詩も興味深い。萩原朔太郎の研究書もあり、幅広い活動は着実な成果を上げ…

シェークスピア ソネット 137

ソネット 137 W. シェークスピア 盲目にしておバカさんのキューピッドよ、おまえはわたしの目に 何をしようというのだろう わたしの目は世間を観察しているが、見ていることさえ見えないと思わせることだろうか? わたしの目は美が何であり美がどこにあるの…

細田傳造詩集『まーめんじ』

細田傳造詩集『まーめんじ』。子供時代のこと、韓国のこと、孫のこと、筑波山のこと、パリのこと、なにを書いても巧みな話術に引き込まれてしまう。下世話な事や俗っぽい事が多くてもユーモアとたしかな人生への洞察力が読者を上質の詩の世界に連れて行って…

望月遊馬詩集『燃える庭、こわばる川』

望月遊馬詩集『燃える庭、こわばる川』。広島の地形をなぞり伝承に分け入り自らの物語を形作ってゆく。切なくも悲しく美しい時空を呼び覚ますために、自らの思い出は伝承と一体化し新たな神話がポリフォニックに無限旋律の波のように語られる。被爆者への鎮…

一句

今時分 微分積分 春気分

美容師

美容師 ある映画の原作を読んだら夢中になってしまった どんなに調べたり取材をしても限界があるから その先は想像力が勝負なんだろうね 美容師は話術に長けていて 見た目だけでなく内面を飾るのも巧みなので 世間話で盛り上がらせ かっこよくなったと満足さ…

2022南原充士プロフィール

南原充士(なんばら・じゅうし) 2022年3月現在 1949(昭和24)年2月7日生、茨城県日立市出身 1972(昭和47)年3月 東京大学法学部卒 日本詩人クラブ会員 本名 桑原 薫(くわばら・かおる) 詩、小説、575系短詩、57577系短詩、英詩翻訳、評…

シェークスピア ソネット 136

ソネット 136 W. シェークスピア わたしがあなたに近づきすぎると言ってあなたの心があなたを責めるなら わたしはあなたの恋人だったのだと事情知らずの心に言ってやってください そうすればあなたの心もわたしの恋がそこでは認められるのをわかるはずです …

吉田隶平詩集『在ったという不思議』」

吉田隶平詩集『在ったという不思議』。まだ七〇代の著者だが、なぜか死を強く意識しているようだ。人生の深い洞察としみじみとした思いが胸に迫るような巧みな詩篇が並ぶ。「理路整然と語っていることには/嘘が入ってくる/ぽつりと呟いたことを/繋ぎ合わ…

シェークスピア ソネット 135

ソネット 135 W. シェークスピア どんな女性にも欲求があるように、あなたにも欲望があります その上膨大な欲望、有り余るほどの欲望をもっています あなたを求め続けるわたしは こんなふうにして あなたの甘美な欲望を過剰なまでに増長させるのです、 広大…

山田兼士詩集『冥府の朝』

山田兼士詩集『冥府の朝』。突然の発熱で入院。意識を失った中での2か月の治療と5か月のリハビリを経て退院。コロナの中での元気回復。冥府からこの世に蘇った自らの経験を二年にわたり丁寧に振り返り叙述している。生死という重大なテーマが個人の体験を…

詩集つれづれ=問わず語り2022.1.22

『詩集つれづれ=問わず語り 』 2022年1月22日 1.南原充士詩集=わが既刊詩集14冊を振り返って これまでの詩集についてどんな思いで刊行したのか振り返ってみたい。 詩集『滅相』は、詩集『時間論』に続いてKindle版で出版した2冊目の詩集…

詩集『滅相』目次

詩集『滅相』 目次 Ⅰ 生 相 滅相 伴奏 七夕 で、 ゲーム 小銭入れ 百歳 愛想の悪い隣人 さがしもの つぶやき 日々是好日 流域 かいりくくう 言葉を取り逃した日 振り子 シャーラップ シャドープレイ ろれつのお稽古 因果関係 三角関係 どっしっし まちがいさ…

詩集『滅相』出版のご案内

このたびKindle 版で詩集『滅相』を出版しましたので お知らせいたします。前詩集『時間論』に比べると言葉遊びやユーモア詩を 中心にしているのでとっつきやすいと思いますので、是非お気軽にご覧くだされば 幸いです。 ダウンロードは下記からお願いいたし…

冨上芳秀詩集『言葉遊びの猟場』

冨上芳秀詩集『言葉遊びの猟場』。脳髄の片隅に住まわせている一人の読者が「あなたは本当に詩を書きましたか」と問いかける。伝えないことで伝える「言葉遊び」の実験は、そんな読者への答えとして誰もやったことのない方法を模索した多様な詩群として結実…

2022年 年頭雑感

2022年 年頭雑感 南原充士 箱根駅伝 往路 まぶしい光にも濃い影がある 山を登る足取りは確かだ 気が付けば順位が入れ替わっている 筋肉の動きを見ると心が躍る この一瞬一瞬が冷気を切り裂く あらゆる角度から見守る視線 様々な叫びがはるか遠くへ響く …

謹賀新年!

明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いいたします! 小説、詩、俳句系、短歌系、英詩翻訳、評論、書評などいろいろ手掛けておりますのでどうぞご覧ください! 電子書籍も多数用意がありますので、ダウンロードしていただければ幸いです!