南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

シェークスピア ソネット 123

ソネット 123 W. シェークスピア いやいや、時よ、わたしが変わりゆくとしても、勝ち誇るべきではない、 新たな権力によって建てられたその尖塔も わたしにはまったく目新しくはなく、新奇でもない それらは過去の光景の新たな装いにすぎない、 われわれの寿…

シェークスピア ソネット 122

ソネット 122 W. シェークスピア あなたの贈り物、ノートブックはわたしの頭の中にあります いっぱいに書き込まれた忘れ難い記憶は いつまでも、というより永遠に 様々な雑多な書き込みによって残っていくでしょう、 あるいは少なくとも頭と心が 与えられた…

大家正志『袋あるいは身のまわりにおきたこと』

大家正志『袋あるいは身のまわりにおきたこと』。『袋』はバイトの運転手が運んでいる袋の中身にこだわって夜の工場に忍び込む話。『身のまわりにおきたこと』は夫や娘や自分に起きる意外なできごとに翻弄される45歳の主婦の心理や行動を描いた話。いずれ…

シェークスピア ソネット 121

ソネット 121 W. シェークスピア 放埓でないのに放埓だと非難されるとき 放埓だとみなされるより実際に放埓である方がましだ 自分の感覚ではなく他者の見立てで判断されるなら 自分が正しい行いをしているという喜びさえ失われる、 なぜ他者の偽りにして淫ら…

詩「嘆きの壁」

嘆きの壁 南原充士 はるばるやってきた巨大な壁 名もない壁だけれども 知る人ぞ知る壁 ここではだれも言葉を交わさない 黙って佇んで 祈りを捧げるだけだ 地図にも載っていないが 口づてに伝わり 人けが絶えることはない 心にはめいめいが 収まりきれない悲…

広場で

広場で 広場では 子供たちが集まって 騒いでいる ボール遊びの合間に お菓子を分け合って食べたり いたずらをしたり くすぐりあったりしている 楽しそうに騒いでいる子供たちには 意地悪な風は感じられない どこかでじっと機会をうかがっている悪魔の視線な…

日原正彦詩集『はなやかな追伸』

日原正彦詩集『はなやかな追伸』。人間の生死や動植物やさまざまな物への思いを澄んだ目でとらえ、込み上がる感情を肩の力が抜けた言葉のスケッチとして自在に描いている。豊富な人生経験に基づく深い洞察力と優れた表現力と巧まざるユーモアは、悲喜こもご…

Kindle版小説『喜望峰』あらためてご紹介

『新型コロナウイルス禍のもと、小説『喜望峰』を読んで希望を持ちましょう?』 南原充士 1.はじめに 昨年8月にKindle版小説『喜望峰』を出版してからまもなく1年が経過します。幸い読者の方からは好評をいただいております。この際あらためてその概要を…

シェークスピア ソネット 120

ソネット 120 W. シェークスピア かつてあなたにされたひどい仕打ちを今度はわたしがしてしまった その時感じた自分の悲しみを思うと 今のわたしは罪の意識で頭を垂れるしかない わたしの神経は真鍮でもなければ鋼鉄でもないのだから、 なぜなら もしあなた…