南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2009-01-01から1年間の記事一覧

「価値観の創造」(「価値観の研究」第三部(価Ⅲ=その1))

「価値観の創造」 ひさしぶりに、「価値観の研究」を再開する。第三部のはじまりである。 すでに第一部で、体系的な整理をし、第二部で、個別論による補足をおこなったところであるので、第三部では、論じ忘れたことや思いついたことを少しずつ書いていきた…

『詩の批評の方法について』

『 詩の批評はどのように行われるか? 』=わたしの方法論 「詩の批評」は、実際にはどのように行われているのだろうか? いろいろな批評の仕方があると思うが、ここでは、わたしなりのアプローチの仕方を述べて議論の材料に供することとしたい。 わたしは、…

『文学における言葉の役割の再検証=詩を中心として』(その3)

『文学における言葉の役割の再検証=詩を中心として』(その3) 7.谷川俊太郎詩集「トロムソコラージュ」に即して これまで抽象論を展開してきたので、このへんで、具体的な作品をとりあげて論じてみたい。 やはり、詩は作品がすべてを語ると思うからだ。…

『文学における言葉の役割の再検証=詩を中心として』(その2)

『文学における言葉の役割の再検証=詩を中心として』(その2) 4.社会の変化と言葉の変化 言葉の本質が概念化にあるということを仮定すると、言語表現とは、点や線や断片を用いてデッサンを描くような作業だととらえることができる。 そこには余白をイメ…

『文学における言葉の役割の再検証=詩を中心として』

『文学における言葉の役割の再検証=詩を中心として』(その1) 1.言葉の限界 脳科学の発達で脳の機能についての研究が目覚しい進歩をとげている。 個人の心理や行動だけでなく、集団としての心理や行動についても、社会心理学や神経経済学といったジャン…

村上春樹「1Q84」を読む!

「村上春樹『1Q84』を読んで」 1.小説「1Q84」は、Book1と Book2の二巻からなり、それぞれ24章からなっている。主人公の、女性=青豆と男性=天吾が交互に登場するという構成がとられている。 なお、「1Q84」というタイトルは、有…

文学において『現代的』とはどういうことか?

「文学において『現代的』とはどういうことか?」 1.文学における現代性について、考えてみたい。 ここでいう「現代的」とは、感覚の現代性及び言語表現としての現代性という意味あいで用いている。時代の最先端である現在を基準座標として明確に意識する…

山本貴志ピアノリサイタル

昨日(平成21年10月8日)浜離宮朝日ホールで開かれた、山本貴志ピアノリサイタルは、若さとパワーと誠実さがミックスしたさわやかな演奏だった。 曲目は、ベートーヴェン後期の、30番、31番、32番のピアノソナタ。 難曲をそろえたピアニストの意…

『 民主党の政権獲得 』 について

「 民主党の政権獲得 」について 1.去る8月30日の総選挙結果は、予想通り民主党の圧勝に終わった。わが国の歴史において画期的なできごとだといえよう。 百年に一度と言われた世界不況もやや改善の兆しがみられるものの、まだまだ予断を許さない不安と…

「源氏物語の女たち」

『 源氏物語の女たち 』 源氏物語に登場する女性は数多く、個性的な女性が多い。ここでは主要な女性たちについて簡単な感想を書いてみたい。 1.光源氏をめぐる女性たち ① 紫の上 紫の上は、総合的に見て登場する女性たちのうちのベスト。美貌と教養。穏や…

「現代的」であるとはどういうことか?

「 芸術において『現代的』であるとはどういうことか? 」 1. イタリアのルネサンスは人間の解放を目指した表現スタイルを追求する運動であったと思うが、そ の芸術的な流れは数百年にわたり続いてきたと思う。 一言で言えば、人間らしい感動を超絶技巧に…

『 源氏物語 』 を読んで

『 源氏物語 』 を読んで 源氏物語を原文で読んだ。原文と言っても、草書体で書かれたものではなく、注釈付きの活字体であるので、厳密には原文ではないが、現代語訳でもない。 たった千年前の日本語の文章がここまで理解できないということに驚いたが、注釈…

『 声の幻 』=VOICE SPACE (芸大・現代詩研究会) 公演を聴いて

『 声の幻 』 (VOICE SPACE(東京藝術大学現代詩研究会)第一回公演) を聴いて 1.昨日(平成21年6月26日)、新宿文化センターにおいて、VOICE SPACEの公演「声 の 幻」を聴いた。(以下、敬称略) VOICE SPACEは、東京芸術大学…

『 マウリツォ・ポリーニ ピアノ・リサイタル(H21.5.15 サントリー・ホール) 』

『 マウリツィオ・ポリーニ ピアノ・リサイタル 』を聴いて 平成21年5月15日 サントリーホール リサイタルからはちょっと時間が経ったが、わが備忘録として残しておきたいと思う。 1.マウリツィオ・ポリーニは、まさに巨匠である。本年、4月26日に、同…

『 エフゲニー・キーシン ピアノリサイタル 』(H21.4.26サントリーホール)

『 エフゲニー・キーシン ピアノリサイタル 』 (H21.4.26 サントリーホール) 1.昨夜、サントリーホールは異様なほどの熱狂につつまれた。 約2時間リサイタルが終わっても、ほとんどの聴衆は席を立たない。万雷の拍手と怒号のようなブラボーの声…

『世界は今?』  (価Ⅱ=50)

『 世界は今? 』 (価値観の研究第二部=50) 価値観の研究第二部もこれで50篇目。これをもって一応の区切りとしたい。 しめくくりとして、世界の現状を概観した上で、価値観の共存の重要性を再確認したいと思う。 1. 世界の現状 昨秋、百年に一度の…

『 革命とはなにか? 』 (価Ⅱ=49)

『 革命とはなにか? 』 (価値観の研究第二部=49) 1.人類の歴史を振り返るとき、紆余曲折はあるものの、大きな流れとしては、人類は、基本的人権が尊重され、平和で豊かな社会に向かって前進しているように見えるし、そう信じたい。 だれもが平和な世…

『 アンケート調査の位置づけ 』 (価Ⅱ=48)

『 アンケート調査の位置づけ 』 (価値観の研究第二部=48) 1.すべてのことに対して科学的なアプローチをしたいと思うのは基本的には妥当な姿勢だと思う。しかし、自然科学のようなジャンルならいざ知らず、社会科学のように人間の心理的な要素が絡ん…

『 アラサー、アラフォーについて 』(価Ⅱ=47)

『 アラサー、アラフォーについて 』 (価値観の研究第二部=47) 1. 最近、テレビドラマがきっかけとなって「アラサー」とか「アラフォー」という新語が生まれた。アラウンド・サーティーとかアラウンド・フォーティーの略で、英語で「おおよそ30」と…

『 選択するということ 』(価Ⅱ=46)

『 選択するということ 』 (価値観の研究第二部=46) 1. 人生の各段階で、ひとは、さまざまな決断を迫られる。 幼いうちは、親などの後見人が決定を下すだろうが、成長するにしたがい、自分の決断というものが必要になる。 たとえば、中学、高校、大学…

『 老いることは悪いことか? 』=(価Ⅱ=45)

『 老いることは悪いことか? 』 (価値観の研究第二部 その45) 古ゆ 人の言いくる 老人の 変若つといふ水そ 名に負ふ滝の瀬 万葉集 寒6-1034 1. 古来、不老長寿の薬が求められ、若返りの秘術が追究され、アンチエージングの方策が探られてきた。…

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ 連続演奏会 第4回 』

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ 連続演奏会 第4回 』 (平成21年3月28日(土) 紀尾井ホール) 昨日、紀尾井ホールで、第四回が開催された。 四回にわたる演奏会の最終回。 今回も、フォルテ・ピアノとモダン・ピアノで弾き分けられた。 曲目は、…

『 《ひとはだれも死をまぬかれない》 という認識 』(価Ⅱ=44)

『 《 ひとはだれも死をまぬかれない 》 という認識 》 (価値観の研究第二部 その44) 1. 人間はだれも「生まれる」のであって、そこには選択権はない。あとは、死ぬまでどのように生きるかが残されているだけだ。 生きることが耐えられなくなれば、自…

「『生きがい』について」(価Ⅱ=43)

「 『生きがい』について 」 ( 価値観の研究第二部 その43 ) 1. なにを今更「生きがい」を取り上げるのかと疑問に思う方もいるかもしれない。 しかし、やはり、「生きがい」が、人間にとって最大の問題であることは変わらないのだとあらためて思う。 …

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会 第3回 』

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会 第3回 』 H21年3月7日 於 紀尾井ホール 曲目 ピアノ・ソナタ 第15番 ヘ長調 KV533 ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 KV332 ピアノ・ソナタ 第7番 ハ長調 KV309 幻想曲 ハ短調 KV475 ピアノ・ソナ…

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会 』

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会 』 平成21年1月24日、2月21日、3月7日、3月28日と4回にわたり、紀尾井ホールで、菊池洋子のモーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会が開催されている。 すでに2回開催されたが、とても味わ…

『 加山又造展を見て 』

『 加山又造展を見て 』 昨日(平成21年2月28日)、国立新美術館に、加山又造展を見に行った。 思えば、40年ほど前、新潮社の詩人全集のひとつ「萩原朔太郎」の表紙に加山又造による装画を見出して、強く惹かれるものを感じて以来、テレビや書物など…

『 金融危機その後 』

『 金融危機その後 』 昨年秋の金融危機の世界経済への影響は予想以上に大きいようだ。 およそ世界の主要国で、景気がいい国は一国もなさそうだ。程度の差こそあれ、いずこも、不景気や倒産や雇用不安にあえいでいる。やはり、百年に一度の不況というのは過…

倉田良成の職人芸

『 倉田良成 の 職人芸 』 1.SNSの効用 ミクシィに代表されるSNS(ソーシャルネットワークサービス)は、さまざまな功罪があるにせよ、使い方によってはとても役に立つと思う。 小生も、いくつかのSNSを利用させてもらっているが、そのひとつに、…

言葉と行動(価Ⅱ=42)

『 言葉と行動 』 価値観の研究第二部 その42 (価Ⅱ=42) 言葉と行動は必ずしも一致しない。それには、さまざまな理由があるだろう。政治的、経済的、社交的、個人的、故意、過失等々。 人間は、いろいろな場面で、言葉を求められる。沈黙は金だが、言…