南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田博哉「橋のなまえ」

吉田博哉「橋のなまえ」(詩誌「Culvert No.2」)。「浴渡橋、久米路の橋、来るか橋」など橋に係る短い詩が七篇。「橋の工夫」の橋にまつわる奇妙な思い出や夫婦の微妙な感情が風変わりな橋の名前に託して巧みに描かれる。七つの悪夢のような奇談がややホラー…

吉田義昭詩集『風景病』

吉田義昭詩集『風景病』。高齢化社会を生きる一人の高齢者として現在の心境を率直に述べている。幼いころから現在までの自分の人生を振り返り問い直す。最愛の妻を亡くし親しい友を失って感じる生のはかなさ。科学者や臨床心理士や歌手など多くの顔を持つ著…

大工美与詩集『これからは』

大工美与詩集『これからは』。高齢化社会を生きる誰にとっても共感を感じる詩集。自身の心臓病を始め父母や家族、友人の闘病や死の様子などが目に浮かぶように描かれている。高齢になっても「丁寧に 丁寧に生きることで/何かが生まれて来る予感がするのです…

今井好子詩集『朝の裏側へ』

今井好子詩集『朝の裏側へ』。様々な日常生活の記憶が無駄のない言葉で的確に描かれる。深い思いがあるのに言葉は抑制が効いていて叫ぶことがない。詩篇もまた整っていて女性らしい美学を貫いている。「地図」に「はり残した/いくつかの断片をのせて/朝の裏…

犬伏カイ詩集『ぼくのブッダは祈らない』

犬伏カイ詩集『ぼくのブッダは祈らない』。先祖調べから詩の世界が開かれ、それらは壮大な宇宙的・地史的・人類史的な広がりを持つ時空へと発展していった。叙景からフィクションまで現実を見つめる冷徹な目と想像力溢れる神話的物語まで、作者の思いが強い…

『目礼』(短歌系)(2023.7~8)

『目礼』(短歌系)(2023.7~8) 仮初の 目礼であれ 電流の かすかな励起 促すよすが 不機嫌の 飽和の街に 居づらさも 息苦しくて こすれる心 一瞬も 消えぬ体を 消え去ると 感じる心 まだらにゆらぐ じーじーの 鳴き声弱い なにゆえに 今年の蝉の 油が…