南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

森田直詩集『乾かない』

森田直詩集『乾かない』。日常生活の隙間に入り込む違和感や疎外感や脱力感がふとした拍子に詩の言葉として生まれてくる。人の心の奥深さが意外性に富んだ様々なイメージややるせなさやユーモアとして魅力あふれる詩に結実する。さりげなさの中にぐっと引き…

小網恵子詩集『不可解な帽子』

小網恵子詩集『不可解な帽子』。日常の生活の情景がきわめて緻密に抒情的に描かれる。花や自然を愛し家族や友達を大切にしながらも、光は必ず影を伴うことを知っていて、座席に置いてある帽子にも不可解なものを感じたり、空を見上げれば漠然とした不安を感…

うめのしとみ詩集『どきんどきん』

うめのしとみ詩集『どきんどきん』。ひとが生きることを死ぬこととのつながりとしてとらえて、驚くべき冷静な観察眼とリアルな描写とファンタジックでユーモラスな表現が読者の心を強くとらえる。たとえば「A総合病院地下談話室」の生者と死者の対比はあまり…

たなかあきみつ詩集『境目、越境』

たなかあきみつ詩集『境目、越境』。おそるべき膨大な語彙が自由自在に駆使される。文学、絵画、音楽、写真など広範な芸術家や芸術作品の引用と日常接するニュースや事件の融合が、高踏派と通俗性を独特の詩の世界に結実させている。自分の急病さえ客観的に…

佐野豊詩集『夢にも思わなかった』

佐野豊詩集『夢にも思わなかった』。平易な言葉で素直に自分の気持ちを表現しながら着実に感動の核心を掴んでいる。例えば冒頭の「暖のとりかた」では愛するひととひとつのふとんにもぐる様子が実にほほえましく描かれている。詩集名は、父が所有したレコー…

詩「歌」

詩集『レジリエンス』からー冒頭詩篇ー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 歌 粗密な天体の網状のからまり 鋏で切れるものは何ですか ミルフィーユを食べると夢見がいいです 乾いた涙を福笑いに貼り付けます 迷子になった子供は夜中に地図のお化け…

詩誌『詩素』連載のエッセイについて

詩誌『詩素』にはエッセイを連載しています。 これまでのタイトルをご紹介します。 「『価値観と詩』について」(14号) 「想像力について」(13号) 「時間について」(12号) 「夏目漱石『草枕』のことなど」(11号) 「反骨精神について」(9号) 「…

南原充士詩集つれづれ(2023.5)

『 詩集つれづれ=問わず語り 』 2023年5月1日 1.南原充士詩集=わが既刊詩集16冊を振り返って これまでの詩集についてどんな思いで刊行したのか振り返ってみたい。 詩集『遡及2022』は、Kindle版で出版した3冊目の詩集である。新型コロナで…