南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

シェークスピア ソネット 129

ソネット 129 W. シェークスピア 恥ずべくして不毛な精力の浪費は 満たそうとする欲望であり 満たされるまでは欲望は 偽りであり殺人的であり血なまぐさく罪深く 野蛮で極端で野卑で残酷で信じられない、 欲望は満たされるや否やすぐさま軽蔑すべきものにな…

シェークスピア ソネット 128

ソネット 128 W. シェークスピア わたしの喜びの調べ、あなたのしなやかな指が 幸福な鍵盤に触れて楽の音を奏でる時 あなたの柔らかな動きが わたしの耳を魅惑する弦の調和を生み出す時、 キスを受けるはずのわたしの哀れな唇が 誇らし気な鍵盤を弾くあなた…

シェークスピア ソネット 127

ソネット 127 W. シェークスピア 昔は、黒は美しいとはされなかった あるいは仮に黒が美しかったとしても美という名前は持たなかった だが今では黒は美の跡継ぎだ そして美は私生児という呼ばれ方で貶められている、 なぜなら人はみなそれぞれに自然の女神の…

短歌系『ワクチン接種』(2021.5~9)

短歌系『ワクチン接種』(2021.5~9) 南原充士 おおよそは わかっていると 思ってた 動画を見れば 海馬が跳ねる 豆挽くも ほどよく挽けよ 苦ければ 香り立ち来て 舌先を刺す 全世界 ワクチン戦争 避けながら 億万回の 接種よ進め 食品の 値上げ相次…

詩「いいひと」

いいひと 南原充士 いいひとでいたいと おもうひとのどこかに いいひとになれないひとがいる みぬかれているのに どうしようもなく ざんこくなつめをたてるとかげ またみちばたで ふみまちがえたアクセルが こうふくなかぞくをころす しっとぶかいいでんしが…

高橋馨詩集『それゆく日々よ』

高橋馨詩集『それゆく日々よ』。80歳とは思えない心身の活力や現実世界への関心の持ち方そして女々しさを吹き飛ばすような反骨とユーモア。思わず引き込まれる多彩で巧みな人物や動物や風景の描写の陰には消滅の悲しみも内包されている。記憶は永遠だとい…

シェークスピア ソネット 126

ソネット 126 W. シェークスピア おお、わたしの可愛いひとよ、あなたは 時の変わりやすい鏡や鎌、時間をしっかりとその手に収めている あなたは年をとるにつれ成長したが、そのことで 素敵なあなたが成長するにつれあなたの親しい人たちが老いゆくことを示…