南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2007-01-01から1年間の記事一覧

名目GDPの減少(価Ⅱ=15)

きょう(平成19年12月27日)の新聞各紙の報道によれば、2006年の日本の名目GDPは、4兆3755億ドル。前年比4%減。世界に占める割合は、9.1%で、24年ぶりに、10%を割り込んだとのことだ。(内閣府26日発表) また、国民一人当た…

詩について思うこと(その2)

「詩について思うこと」の続きである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 六.詩はだれのものか 一般に商品は消費者に購入されてはじめて、その目的を達成します。商品の場合は、生産者がその技…

詩について思うこと(その1)

「詩界」(No.251)(平成19年9月日本詩人クラブ発行)に発表した、エッセイ「詩について思うこと」を転載する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 詩について思うこと 南原 充士 一. はじめに…

人間はみな不完全(価Ⅱ=14)

防衛省の不祥事を見ていると、やはり人間は誘惑に勝てないものだという思いを深くする。 防衛省のトップになるというのはたいへんなことだ。きわめてすぐれた人材だと見てよい。 それでも、あのような贈収賄事件の当事者にあるのだから、世の中はおそろしい…

表現と本音(価Ⅱ=13)

建前と本音という言葉はよく使われる。 また、思ったことや感じたことをそのまま表現せずに、言い換えたり、やわらかな言い方をしたり、遠まわしに言ったりするということは、生活の知恵としてしばしば見られるところである。 筒井康隆、星新一、宮部みゆき…

クレーメルとツィンメルマンのデュオ

昨日、サントリーホールで、クレーメルとツィンメルマンのコンサートを聴いた。 ブラームスのバイオリンソナタ、一番から三番まで。 あまりのプログラムのよさに行く前から、期待で胸がふくらんだ。 クレーメルはぼくが愛してやまないバイオリン奏者である。…

本屋の利用法(価=Ⅱ その12)

インターネットでの情報収集が格段に便利になった現在、本や雑誌の存在理由はなんだろう? 自分の経験で言えば、人間は動物であるので、五感を活用したい。そういう観点からすれば、アナログ的な情報の触れ方も重要だ。デジタルとあいまって総合的な情報収集…

マリア・ジョアン・ピリス ピアノリサイタル

昨日(H19年11月4日)、すみだトリフォニーホールで行われたピリスのピアノリサイタルを聴いた。 曲目は、 ヒナステラ 3つのアルゼンチンの踊り D.スカルラッティ ピアノ・ソナタ イ長調 K.208 シューベルト ピアノ・ソナタ 第13番 シューベ…

若き巨匠、ティーレマン!

本日(H19年11月3日)、サントリーホールで、クリスティアン・ティーレマン指揮によるミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートが開かれた。 演目は、 R・シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」 R・シュトラスス 交響詩「死と変容」 ブラー…

安倍前総理辞任のこと(価Ⅱ=11)

多くの反響があった安倍前総理の辞任劇も福田新総理の誕生とともに少しずつ沈静化したようだ。 突然の辞任について、整理しておきたい。 臨時国会冒頭で所信表明演説をした直後に辞任したタイミングの悪さについては異論の余地はないだろう。 では、参議院選…

『トリスタンとイゾルデ』(バレンボイム指揮)

昨日(平成19年10月14日NHKホール)、ベルリン国立歌劇場オペラ「トリスタンとイゾルデ」を観た。 ワーグナー作曲。台本もワーグナー。 指揮、ダニエル・バレンボイム。演出、ハリー・クプファー。 3幕、4時間に及ぶ大作。 結論的には、完璧な出来だった…

愛国心の問題(価Ⅱ=10)

一国の国民が愛国心を持つことは至極自然なことだ。だが、それを強制すべきかどうかとかどのように表現すべきかという点については微妙な問題がかかわってくる。 最近のある英字新聞の記事(キャスリーン・パーカー)によれば、アメリカ大統領候補者のひとり…

福岡伸一「生物と無生物のあいだ」

福岡伸一は、京都大学やハーバード大学等で分子生物学の研究を行ってきたたいへんなエリートであるようだ。 しかし、この新書版で出版された「生物と無生物のあいだ」では、素人にも実にわかりやすくかつドラマティックに医学の最先端の情報が紹介されている…

南川優子の詩を読む(その5)

南川優子のホームページ「そふと」から、「窓拭き」を引用する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 窓拭き Ⅰ ゴンドラに乗って 十階建てビルの 窓拭きをしていると 地上から管理人が お前はどう…

南川優子の詩を読む(その4)

南川優子のホームページ「そふと」から、「光」を引用。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 光 昨日 ミシンをかけている間 太陽の寿命が尽きた 縫い目は 途切れた線路のように 行き先を失い 窓が…

南川優子の詩を読む(その3)

南川優子のホームページ「そふと」から、「ページ」を引用する。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ページ 嵐の晩 窓辺で本を読む 爪のような雨が ガラスを割り 水が 顔を打つ わたしは 本の…

南川優子の詩を読む(その2)

南川優子のホームページから、「テーブルクロス」を紹介したい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー テーブルクロス あなたを思いながら 庭を眺めるダイニングルームで 洗いたての 白いテーブ…

谷川俊太郎の「絵七日」(すばる10月号)を読む!

いまさら谷川俊太郎でもないだろうという思いもあるが、やはり、最近の充実ぶりを見ると、やっぱり谷川俊太郎だなあという思いを禁じえない。 70歳を過ぎてなお進化しつづけているというのはたいへんなことだ。 おそらく、生きる姿勢がしっかりしているの…

南川優子の詩を読む(その1)

南川優子の詩に出会ったのは、まだ最近のことだ。(敬称略、以下同じ。) 清水鱗造が主宰している「灰皿町」というホームページに参加させてもらってから、灰皿町の住民の詩やエッセイや日記などを読むうちに、いたくぼくの心をとらえる詩に出会った。それが…

平山郁夫展

東京国立近代美術館で開催中の「平山郁夫展」を見た。 やはり、展示内容は期待に違わぬ充実したものだった。 全部で83点。四つのパートにわかれていた。 第一章 仏陀への憧憬 第二章 玄奘三蔵の道と仏教東漸 第三章 シルクロード 第四章 平和への祈り 19…

平山郁夫(価Ⅱ=9)

きょうのテレビで平山郁夫のインタビューの場面があった。 それによると、平山は、新たに、シルクロードの大作にとりくんでいるのだそうだ。 平山は、尾道の出身で、被爆体験もあるらしい。その暗い体験が根底にあって、彼の美術に影響を与えてきたそうだ。…

現代詩手帖9月号について(感想)

「現代詩手帖9月号」に掲載されている詩作品についての読後感、以下のとおりである。 いずれの詩作品も甲乙つけがたい力作だが、あえてぼくが特に惹かれた作品を数編取り上げてみたい。 まず、辻井喬の「今日という日」は、外国のスパイ小説を読むようなお…

価値観の共存(価Ⅱ=8)

人類の歴史が教える知恵を最大限活用して世界に最大限の平和と繁栄をもたらすようにするにはどうしたらいいか?これが価値観の共存共栄であり、この研究がめざすところである。 キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンズー教、ユダヤ教などの宗教や、資本主義、…

朝青龍問題(その2)(価Ⅱ=7)

再び、朝青龍問題をとりあげてみよう。 こういう具体的な問題に対して関係者がどう対処するか、マスコミがどう報道するか、国民がどう受けとめるか、といったことをスタディするにはいい材料だ。 本件は、よちよち歩きながらも方向としては、いい方向に進ん…

決断(価Ⅱ=6)

わからないことをわからないとするのが科学的な態度だと強調してきたが、研究者ならわかりませんですむところを、政治家とか経営者とかはすべてをわかったうえで決断をするのではないところに問題のむずかしさがある。判断にまよいながらも決断を迫られる。…

「価値観外交とはなんだろう?(価Ⅱ=5)

最近、安倍総理の外交を『価値観外交』と名づけているようだ。マスコミがそう呼び始めたのか、安倍総理のほうで自らそう名づけたのかは知らないが、ちょっとおもしろい呼び方なので気になった。 なにせ、ぼくは、「価値観の研究」を書き続けている人間だ。と…

バカロレア(価Ⅱ=4)

テレビで、フランスの大学入試=バカロレアのことをやっていた。 文科系のバカロレアでは、哲学の比重が高いそうだ。哲学ってなんだろう?たとえば、「独裁政治家を暗殺することは許されるか?政治と道徳とのかかわりにおいて述べよ」といった問いに記述式で…

無宗教は可能か?(価Ⅱ=3)

お盆のシーズンということもあって、テレビでは、仏教関係の特集番組がいくつか放映されている。 ゲストが、仏教や仏像への敬虔な思いを述べるのを聞くと、なるほどという気持ちを感じるとともに、そんなにすんなりと宗教心て持てるのだろうか?という疑問も…

赤城農相のこと(価Ⅱー2)

赤城農林水産大臣の辞任については、非難轟々の環境の中で追い込まれた決断だっただろう。 赤城農相を弁護する意見はあまり聞かれない。 わが国のひとつの特徴であり、また、危険な点でもあるといわれるのが、付和雷同型の社会であることだ。 みんなが反社会…

朝青龍のこと(価Ⅱ-1)

朝青龍が二場所出場停止処分を受けた。マスコミはおおむねそれを支持しているように見える。 日本相撲協会の規定に基づいた適正な処分だから、手続き的には問題がないのだろう。 しかし、反対意見もありうると思う。 まず、朝青龍が診断書に基づいて巡業に参…