南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

クレーメルとツィンメルマンのデュオ

 昨日、サントリーホールで、クレーメルとツィンメルマンのコンサートを聴いた。

ブラームスのバイオリンソナタ、一番から三番まで。

あまりのプログラムのよさに行く前から、期待で胸がふくらんだ。

クレーメルはぼくが愛してやまないバイオリン奏者である。

骨太でかつデリケートで多彩。芸術の神髄がわかっていてそれを表現できる稀有な存在である。

 ところが、昨日は、違った。

 音が弱い。ピアノと呼吸が合わない。

 前半は、2番、1番の順で演奏されたが、なんとも言えない不完全燃焼ぶりに愕然として意識が遠くなったほどだった。

 休憩後の3番。

 なかなか調子が出ない。


 だが、最後のフォルテのパートに至って、やっとバイオリンとピアノが叫びを上げ、呼吸が合った。

 救われる思いがした。

 アンコールの、ニーノ・ロータの映画音楽「ラ・ドルチェ・ヴィタ」とモーツァルトのバイオリンソナタ第39番第一楽章および第二楽章は、リラックスして弾いたせいか、楽器の音色も豊かで、デュオの息も合って、後味がよかった。

 総じて、不満が残る残念なコンサートだったといわざるをえない。

 原因は、なんだったのだろう?

 ぼくにはよくわからない。

 席がクレーメルの背中を見る位置だったので、音が聴こえにくかったせいか?

 クレーメルの体調が悪かったせいか?

 ツィンメルマンのピアノ演奏に問題があったのか?

 ふたりの相性がわるかったせいか?

 その他の理由のせいか?

 どなたか、専門家の方が聴いておられたら、ぜひ教えていただきたいと思う。