南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

詩「無頼」

無 頼 南原充士 気まぐれな浮遊子が無数に混じり合ってたまたま出会いぶつかりすれ違い引き合ったり反発したり無視し合ったりする確率論でできているとはなんとも歯がゆいが愛も憎しみも幸も不幸も喜びも悲しみも泡の如くかつ消えかつ結びてとどまるところが…

詩集つれづれ(2020年6月)

『 詩集つれづれ=問わず語り 』 2020年6月27日 1.南原充士詩集=わが既刊詩集12冊を振り返って これまでの詩集についてどんな思いで刊行したのか振り返ってみたい。 まず、詩集「思い出せない日の翌日」は、自分としてはきわめて「私的」な位置…

シェークスピア ソネット 94

ソネット 94 W.シェークスピア ひとを傷つける力を持ったひとたちでも、実際に傷つけはしないだろういかにもやりそうに見えることでも実際にすることはないほかのひとたちの心を動かすことはあっても 自らは石のように無感動で冷たく誘いにもあまり乗らな…

『社会距離』(575系短詩)

『社会距離』 南原充士 こもりても 心うるおす 青時雨梅雨の入り 滅入るそぶりを つゆ見せず一日は 雨降りやまぬ ロ短調濡れる身を 心奮いて 乾かせりコロナ梅雨 見果てぬ夢の 濡れそぼる自嘲気味 鏡に映る 雨の外陽炎の 見下ろす微視の 社会距離嫌われて 梅…

『幻覚と妄想』(57577系短詩)

『幻覚と妄想』(57577系短詩) 南原充士 幻覚と 妄想の差は なんだろう 施設のひとと 話しつつ問うシーソーの 上がり下がりや ぶらんこの 行ったり来たり 人の気持ちはつらくても 薬物やらず 覚醒の 苦痛に耐えて 現実を見る囁きは 悪魔の仕業 眠らせ…

詩「ボール遊び」

ボール遊び 南原充士 広場ではいつまでも少年たちがボール遊びをしている空にはうっすらと三日月が浮かんでいる少しの間 目を離していたら すっかり暗くなっている家族が迎えに来たのだろう 名を呼ぶ声がこだまする見えないものを恐れながらも 足元は激しく…

57577系短詩

なぜ「57577系短詩」と言うのかと言えば、 1.5□7□5□7□7 のように各節の間は一字空ける。 2.現代的仮名遣いを基本とする。 3.現代語を基本とする。 ということを基本としているため、短歌とは一線を画していると考えているからです。 nambara…

575系短詩

なぜ「575系短詩」という言い方をしているのかと言えば、 1.5□7□5というように、各節間を一字空けとしていること。 2.現代的仮名遣いを基本としていること。 3.現代語を基本としていること。 4.季語にこだわらないこと。 5.切れ字は基本的に…

シェークスピア ソネット 93

ソネット 93 W.シェークスピア ということで、わたしは不実を働かれた夫のようにあなたが真にわたしを愛していると思いながら暮らしていくのだろうか?あなたが心変わりをしたとしてもわたしを愛する表情はいつまでも変わらないように見えるかもしれないあ…

梅雨入り(575系短詩)

梅雨入り(575系短詩) 南原充士 祈りへと 傾く気圧 雨期を押す 想像の 雨界を消して 空晴れる 嫌われて 梅雨前線 居座りぬ 陽炎の 見下ろす微視の 社会距離 自嘲気味 鏡に映る 雨の外 コロナ梅雨 見果てぬ夢の 濡れそぼる 濡れる身を 心奮いて 乾かせり …

シェークスピア ソネット 92

ソネット 92 W.シェークスピア だがあなたはわたしを捨てるなどいうひどいことをするでしょうかなぜなら生涯あなたはわたしのものでありあなたの愛が終わればわたしの命も終わるからですわたしの命はあなたの愛次第だからです、だからわたしは最悪の事態を…

『梅雨入り近し』

『梅雨入り近し』 南原充士 表現は 悩み苦しみ 躓けど 辛抱強く 水脈を追う 表現は こんがらかった 細糸を 辛抱強く ほぐすに似たり 表現は ひとりこもりて 営めど 他者につながる ときを待ちわぶ 相対の 靄に浮かんで 絶対の 生身を生きる 割れたる柘榴 コ…

表現について

表現は、 『表現したい』 と 『「表現できない」「表現すべきではない」「表現したくない」「表現を禁止されている」「表現技術が未熟である」「表現する価値に乏しい」「表現がだれかを傷つけるおそれがある」』 などのはざまにある。 自分としては、このよ…

幽囚

幽 囚 南原充士 果て知れぬ思いをかかえて有機的に暮らす 照葉の輝きに心は恥じらう寝違えた首筋が体のありかを知らせる こんなに胸騒ぎがするのに空腹はやってくる とらえどころのないものの中でただ失われ行くのは耐えられないと電柱の鴉に叫んでも底知れ…

写生

写 生 南原充士 喉元まで出かかった言葉を飲み込む爪先まで書きかけた言葉を書かない前頭葉に浮かんだイメージを描かない小耳にはさんだ噂を記録しないよくよく揉んでくちゃくちゃになったらおおよそは捨て去り消し去ってたまたま枝先に引っ掛かり枯れかかっ…

シェークスピア ソネット 91

ソネット 91 W.シェークスピア 栄光ある家柄、栄光ある技術栄光ある富、栄光ある強靭さけばけばしくはあるが最新流行の栄光ある衣裳栄光ある鷹や猟犬、栄光ある馬、あらゆる気質は ほかの喜びを上回る喜びをその中に備えているだがこれらの喜びはわたしの…