南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『幻覚と妄想』(57577系短詩)

 

   『幻覚と妄想』(57577系短詩)

 

                   南原充士

 

幻覚と 妄想の差は なんだろう 施設のひとと 話しつつ問う
シーソーの 上がり下がりや ぶらんこの 行ったり来たり 人の気持ちは
つらくても 薬物やらず 覚醒の 苦痛に耐えて 現実を見る
囁きは 悪魔の仕業 眠らせて 恐怖の谷へ 導き落とす
催眠も 祈祷も拒み 傷つけど 覚悟の朝も 静かに目覚む
つきつめて 物を思えば 梅雨時の しずくとなりて いずこかに落つ
目を覆い 耳をふさいで やり過ごす ここはたしかに 今の世界か
今更に 人種差別の 先鋭化 アジア人種も 他人事で無し
就寝時 愚痴をこぼすか 強がるか 今日の復習 明日への予習
なんとなく そこにいるよな 気がしては 寝つきが悪く とろとろと寝る
いつだろう だれともしれぬ 人の顔 尋ねてくると 風の知らせ来
われの名を 呼ぶかのごとき 声がして ふりかえりても 姿は見えず
愚かさに 恥じ入る暇も あればこそ 乱れ狂いて 両頬を打つ
たいせつな ひとはだれかと 知りながら またもわりなき 言動に泣く