南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

オプティミスト(57577系短詩)

 

オプティミスト(57577系短詩)

 

               南原充士

 

 

空間の 脱ぎ替わりこそ 時間なら 巨大な皮を 剥ぎ取る鋏

 

いつのまに いらつくひとは だれだろう 鏡を見れば 見知らぬ顔よ

 

わけもなく 大声を出し おどろいて 気まずくなれば 居場所に困る

 

いくたびも 痛切に知る 愚かさよ 開き直って 落語の時間

 

こもりつつ おいしい たのしい うれしい おもしろい きもちいい すがすがしいとかのとき

 

起きる 顔洗う 歯を磨く 髭を剃る TVを見る

食事する 休息する PCを開く 新聞を読む 体操する

メールする 電話する 散歩する 買い物する FMを聴く

食事する 入浴する 寝る

 

こんなこと そんなこととか あんなこと こんなときにも あんなときにも

 

なにごとも ないかのような 今日の日は 奇跡に近い 特別な日と

 

不都合や 不自由来たり 急病や 失業貧困 放浪の危機

 

予測など できぬ天気の 気まぐれに 翻弄されて 浮かぶ笹舟

 

なにごとも 修練の道 急坂を 登らずしては 奥義に至らず

 

言葉より 行為をみよと 知るはずも 言葉を送る 行為は見えず

 

短冊も 心の中で とりどりの 願いを記し 吊るす七夕

 

はかなさを 繰り返し知る 人の世に 天の眼差し 瞬き続ける

 

きみあなた そちらのひとも あのひとも 同じ喜び 憂いに生きる

 

いかにして 楽天的に 過ごせるか 雨天の彼方 星に願いを

 

ほとんどは 遠く離れて 暮らしつつ 近い同士も 近寄りがたし

 

強面か 柔和な面かに 関わらず ひとなつこさを 隠すにあらず

 

ああ今日も なにごともなく 過ぎゆけば これ以上ない 幸福と知る

 

心情の うつろいやすく はかなければ 強気の言は ためらわず吐く

 

ともにあり ともに生き行く ひとあれば 手をとりあって 星を見上げる

 

毒舌と 言われてみれば そうかもね 今日からきつい 言葉は吐かぬと

 

誓っても 一晩寝れば 元通り そんな愚かな 自分を叱る

 

惻隠の 思いを胸に 身を振れば 濁れる灰汁の 零れ落ち行く

 

スキンシップ 失われゆく 淡薄の 時代となれば 心は砂漠

 

濃厚の 反対語とは 淡薄と 記してみれば 文字薄れゆく

 

コロナ来て 触れ合うことも ままならず 夢幻か うすばかげろう

 

荒れ模様 負けずに心 整えて 体に力 みなぎらせよう

 

胸苦し 言葉もなくて 黙祷す 瞼に浮かぶ 古今の地獄絵

 

そういえば 自分勝手な ひとばかり それが憂き世を 生きる術だと

 

いいひとの ふりをしなけりゃ 生きられぬ あれこれ迷い 困る振りして

 

そもそもが 善悪正邪の 複合体 何を言うのか なにをするのか

 

われもまた 一自由人 奔放に 生きていいよと 託宣聞こゆ

 

降りてこい 神に似たひと 透明な 天女を連れて ここにたゆたえ

 

くりかえし 襲い来る鬱 振り払う ピエロとなりて 世間を巡る

 

今日の日は 楽観の日と 決めたから なにがあっても スマイル消さぬ

 

昨日より 空を仰いだ 生き方へ 変えたと言えば 今日もふんばる

 

らんらんと 歩いてゆけば ドーパミン 会って話して 飲んで歌えば

 

ちくちくと 陰口悪口 きかないと 決めればふしぎ 心晴れ行く

 

そののちに 白い雲間に 夕陽の 白く輝く 西空を見る

 

できるだけ 身近なところ 見聞きして 触ってみれば 考え浮かぶ

 

感覚を 使ってみれば 脳細胞 目覚めて動く 喜悦の軸索

 

助走路を 軽く走れば 身は軽く 浮いて飛んでく オプティミスト