南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2020-12-25から1日間の記事一覧

詩「花火」

花 火 南原充士 秋の日はたちまち傾き 公園にも暗闇が訪れる頃 しゅっと光るものがある かたわらを過ぎゆく人には それが花火だとわかるが ひとの姿は見えない 今年は大きな花火大会が中止になった 夏休みもぱっとしたことがなかった 大人も子供もどこかにく…

『2020年 オリオン座』(575系短詩)

『2020年 オリオン座』 (575系短詩(2020年12月) 新しい 暦を吊るす 心映え メリーX と 言われりゃ返す 無心人 訃報など 聞かずにいたし 年の暮れ はね返せ 氷の刃 毒の針 氷より 冷たいひとの 舌の先 無慈悲より 寒さ厳しき 無関心 やせ我慢…

『2020年 コロナに暮れる』(57577系短詩)

『2020年 コロナに暮れる』 (57577系短詩(2020年12月)) これもそれ あれも乗り越え ここにいる ようやくにして 小人ひとり 山谷を 超えて到れる 人の世に 魑魅魍魎と なりてはびこる あと一歩 ひとへの道を 踏み出さん 餓鬼道を抜け 人非…

「笑う種」5

「笑う種」5 南原充士 お笑い塾では今日も 塾生たちが絞られていた ――笑いの壷を探してこい ――笑いの骨を拾ってこい 優等生は卒業して 次々と高座に上がった 落ちこぼれはやむなく お笑いの道を断念した 客席に入り浸って 笑い続ける者がいた 巧みな笑いが…