南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

シェークスピア ソネット 103

ソネット 103 W. シェークスピア ああ!わが詩神はなんと貧しい詩しか生み出さないのでしょうか、 その詩才を存分に発揮し得る広範なテーマがあるというのに、 わたしが付け加える称賛の言葉などないほうが 詩の対象はより価値あるものとなるのです! おお!…

一表現人として

一表現人として 同じ物事も人によって違って見える。 正邪。好悪。愛憎。快不快。立場。育ち。環境。敵味方。 自分の見方が絶対ではありえない。 相対性のくびきの中で いかに正義に近づけるか 知恵と忍耐と努力が求められる。 ただ批判し続けるだけでは 解…

詩「やり直し」

やり直し 南原充士 秋晴れの空を見上げていると くよくよしていた自分をしばし忘れる まぶしい光がわたしの表面を暖め やがて内部へと沁みとおる 鉄塔がいくつも並んでいるのを辿ると 街のかたちが浮かんでくる いつか踏んだ踏み石はどのように 今日の足元に…

ルイーズ・グリュック「夏の公園」(試訳)

夏の公園(試訳) ルイーズ・グリュック 何週間か前にわたしは母の写真を発見した 母は日射しを浴びながら座っていて、その顔はなにかを成し遂げたかあるいは勝ち得たかのように紅潮していた。 太陽が照っていた。犬たちが 母の足元で眠っていた、そこでは時間…

ルイーズ・グリュック「夏の公園 第4連」(試訳)

夏の公園(試訳) ルイーズ・グリュック 4 ベアトリスは子供たちをシーダ―ハーストの公園に連れて行った。 太陽が照っていた。飛行機が 頭上をあっちこっちへと過ぎていった、平和に、なぜなら戦争が終わっていたから。 それは彼女の想像の世界だった。 真偽…

シェークスピア ソネット 102

ソネット 102 W. シェークスピア 見かけ上はわたしの愛は弱まっているように見えるかもしれませんが 実際は強まっているのです 表面的に弱まっているように見えても愛する気持ちは少しも弱まってはいないのです 商業的な愛ならば その持ち主が至る所でその極…

松尾真由美詩集『多重露光』

松尾真由美詩集『多重露光』。世界に一台しかない高性能カメラは、第一段階で現実の情景をさまざまに加工して細密な映像に作り上げ、第二段階でそれを光によって言葉に変換する。装飾的な様式美にこだわったポリフォニックで多彩で緻密な言葉の造形は、類例…

詩の推敲について(一考察)

詩の推敲について(一考察) 1.まず詩を書く。 2.書いた詩を読む。 3.書いた詩を推敲する。 具体的な推敲のステップ(一例) ①全体をチェック ・テーマがうまく表現できているか? ・テーマと文体が合致しているか? ・分量は適当か? ➁連レベルのチェ…