南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

尾久守侑詩集『悪意Q47』

尾久守侑詩集『悪意Q47』(思潮社刊)について(感想) JK(女子高生)がひとつの通奏低音となって流れているところが特徴的だ。そこには若い女性歌手のグループから受けるような甘酸っぱいムードが充満しているので読者は浮ついた精神状態になって詩作品の展…

詩「ソーシャルディスタンス」

ソーシャルディスタンス 南原充士 それ以前から距離はとっていた それ以上近づけないから 諦めるしかないと感じていた あと一歩前へと 心の中で命じる声が聞こえても うっかり近づきすぎれば 傷つけあうふたりがいる この距離からでも それにふさわしい情愛…

詩「白い虹」

白い虹 南原充士 小さなトラブルでもショックは大きい。 大きな災いなら声も出ない。 中庸を行けと教えてくれた人はもういない。 かまびすしい世間で黙って生きていく。 自分だけが苦境にあるわけではないとわかっていても 躓き転べばひどく痛い。 曇り空の…

シェークスピア ソネット 101

ソネット 101 W. シェークスピア おお怠惰な詩神よ、美に染められた真実を蔑ろにしたことを どんなふうに償うというのでしょうか? 真実も美もわたしの恋人に依存し、 あなたもまた同様で、それによって尊厳を獲得するのです、 詩神よ、答えてください、おそ…

『喜望峰』について

小説『喜望峰』について 小説『喜望峰』では、南アフリカでの白金族金属の開発プロジェクトを中心として、ワインの会、合唱クラブを通した恋愛、友情、夫婦の形を描いています。南アフリカの人種問題やエイズなどの感染症の問題なども取り上げています。 南…

『喜望峰」(57577系短詩)

『喜望峰』(57577系短詩) 2020.9 甘えなど 許されないと 雷に 向かって走る 僧侶の如く あめんぼは 雨が降っても 晴れの日も 線形幾何学 すいすいと解く ころころと 坂を転がる 大玉の 張り子破れて 中身が漏れる 巣篭りて 文を鬻いで 過ごす日…

詩「砂漠」

砂 漠 南原充士 濡れている 拭き取る まだ濡れている ぬぐいとる くさい 消臭剤をふりかける 嗅ぐ 準備はととのった なんのための? 外出はしない どこかにこもるか なにかがやってくるか 早くしないと じわっと汗がにじんでくる ふと気が遠くなるような気が…

シェークスピア ソネット 100

ソネット 100 W.シェークスピア 詩神よ、どこにいるのですか? あなたのすべての力の根源である彼を そんなにも長い間詩に取り上げることを忘れてしまって あなたの詩才をなにかくだらない詩を作ることに費やし 卑しいテーマにばかり光を当てることであなた…