南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2023年の詩集評等

2023年の詩集評等 南原充士 2023.12.31 高橋馨詩集『蔓とイグアナ』。第一部は、詩と写真の組み合わせ、第二部は、自由線画集、第三部はエッセイ『私のダロウェー夫人』。幅広い芸術への造詣や豊富な人生経験を踏まえた、鋭い社会洞察や風刺や…

山田兼士『谷川俊太郎全《詩集》を読む』

山田兼士『谷川俊太郎全《詩集》を読む』。昨年亡くなった著者の御夫人と御子息による刊行。谷川俊太郎という偉大な詩人の全詩集をコンパクトに紹介するという画期的な試みはいかにも著者らしい緻密で情熱溢れる努力の賜物で深い感動なしにページを繰ること…

泪橋

泪橋泪橋 こだわりの店 用水の ほとりに立ちて 順番を待つ付けたのは ホルター型の 記録計 臨床検査 技師の言うまま寄る辺なき 川虫けらの ため息に おのれの呻き 重ねつつ病む不覚にも 頭部裂傷 脳震盪 幻と見る 現世の揺らぎ運命を 聴きつつこなす 雑用に …

川井麻希詩集『滴る音をかぞえて』

川井麻希詩集『滴る音をかぞえて』。陣痛が来た時に書くことに決めたわが子とのこと。「忘れてしまえば消えるだけの日常」をしっかりと観察して丁寧に言葉に記していこうとする思いが、繊細で驚きに満ちたいのちの営みを精密な絵画や音楽のように記していく…

前野りりえ詩集『サラフィータ』

前野りりえ詩集『サラフィータ』。サラフィータは太宰府をイメージした造語。Ⅰ章は1月から12月までのサラフィータ詩篇。Ⅱ章は時空を超えて奔放に駆け巡る想像力の生みだした多彩な物語詩篇。空想好きの詩人ならではの意外性に富んだフィクションもいいが…