南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『目礼』(短歌系)(2023.7~8)

 

『目礼』(短歌系)(2023.7~8)

 

 

仮初の 目礼であれ 電流の 

かすかな励起 促すよすが

 

不機嫌の 飽和の街に 居づらさも

息苦しくて こすれる心

 

一瞬も 消えぬ体を 消え去ると

感じる心 まだらにゆらぐ

 

じーじーの 鳴き声弱い なにゆえに

今年の蝉の 油が足りぬ

 

振り返る 反省もする 禊して

清らかになる 透明になる

 

ようやっと ひとつゴールが 見えてくる

五里霧中にも かすかな光

 

自らを たいせつにして さりげなく

他者を敬う ひとの通い路

 

きみの詩に 恋してしまい 熱くなる

覚めても恋は 輝きの星

 

どの本に ぐっとくるかは 未知数の

はらはらどきどき 恋に似ている

 

マイペース ひとり楽しむ 心境を

さぐる指先 かすかにふるえ

 

ユーモアと 言葉遊びは 気の薬

笑い飛ばせば 命永らう

 

ひねくれた 同士とは言え 無理解の

罵詈雑言は 無用に候

 

勘違い 度忘れ増えて 躓きの

足を鍛えて 夏坂を越す

 

七月の 終わりの日には 剣が峰

来光拝み 息災祈る

 

このところ 笑い忘れて 苦虫を

かみつぶす顔 鏡に映る

 

交々の 日々の思いと 出来事に

嬉し悲しの 波動関数

 

明日知れぬ 身のはかなさに 気づいては

夜更けに一人 ため息をつく

 

お休みと だれにともなく 言う夜の

穏やかなれば 安らかに寝る

 

世の中に 絶望しても 心身に

折り合い付けて だましつつ生く

 

短詩系 ウォーミングアップ 口唇の

動き滑らか 中枢刺激

 

衰えが 諍いになる 罪な事

いたわり合って 補い合おう

 

衰える あれもこれもと わずらいの

とりわけ進む 記憶の劣化

 

むらむらと 村人立てば ちまちまと

待ち人座して 到着を待つ

 

ひとりでも その目に留まる 僥倖を

願って今日も 喜望を鬻ぐ

 

はめられて たまるか悪しき 挑発の

言辞爆弾 青二才発

 

谷を抜け 山を迂回し 往く道の

険しくあれば 一休みする