南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会 』

イメージ 1

 『 菊池洋子 モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会 』


 平成21年1月24日、2月21日、3月7日、3月28日と4回にわたり、紀尾井ホールで、菊池洋子モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会が開催されている。

 すでに2回開催されたが、とても味わい深い演奏会なので、聴衆からの反応もなかなかよかったと思う。

 菊池洋子は、2002年、ザルツブルクで行われた第8回モーツァルト国際コンクールにおいて日本人としてはじめて優勝したという輝かしい経歴の持ち主だ。

 すでに終わった2回の演奏会の曲目を紹介すれば次のようである。

   
   第1回演奏会曲目

     ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 KV279
幻想曲 ニ短調 KV398
ピアノ・ソナタ第8番 ニ長調 KV311
     ロンド イ短調 KV511
     ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 KV330
     ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 KV333

   第2回演奏会曲目

     ピアノ・ソナタ 第2番 ヘ長調 KV280
  ピアノ・ソナタ 第3番 変ロ長調 KV281
  ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 KV282
  アダージョ ロ短調 KV540
   ピアノ・ソナタ 第16番 ハ長調 KV545
  ピアノ・ソナタ 第9番 イ短調 KV310


 毎回、前半の曲をフォルテ・ピアノで、後半の曲をモダン・ピアノで演奏するという趣向であるのが珍しく、また興味深い。
 
  実際に、2回の演奏会を聴いてみて、ふたつの楽器の違いがよくわかったし、演奏者の狙いも聴衆に十分伝わったと思う。

  第1回の演奏会の冒頭、菊池が、あいさつとともに、フォルテ・ピアノとモダン・ピアノの違いを要領よく説明してくれたのもよい試みだったと思う。多くのクラシックコンサートでは、出演者がスピーチをすることは稀だからだ。
 
  2回の演奏会を通じて、菊池のモーツァルトの音楽への解釈が非常に正確である事及びたしかな演奏技術と表現力の持ち主である事が確認できた。国際コンクールの優勝者であることを証明するできばえの演奏だったと思う。

  とくに、フォルテ・ピアノの生演奏をあまり聴いたことのない小生は、強い魅力を感じながら演奏を傾聴したが、モーツァルトの時代の楽器として作曲者が念頭に置いていた繊細な音色や強弱が的確に表現されているように感じた。

  モーツァルトのピアノ・ソナタを全曲演奏すること、さらにはフォルテ・ピアノとモダン・ピアノで弾き分けるという試みは、なかなか勇気のいることであり、準備や当日の気持ちの持っていき方も困難なものがあると推測するところである。

  残り2回も是非これまでの2回のような充実した内容であることを切に望むとともに、小生も聴衆のひとりとして演奏を心から楽しみたいと思っている。