南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

現代詩手帖9月号について(感想)

 「現代詩手帖9月号」に掲載されている詩作品についての読後感、以下のとおりである。

 いずれの詩作品も甲乙つけがたい力作だが、あえてぼくが特に惹かれた作品を数編取り上げてみたい。

 まず、辻井喬の「今日という日」は、外国のスパイ小説を読むようなおもしろさがあって、作品の
長さを感じさせないストーリーの展開に巧みさを感じた。

 北川透の作品は、いつもの実験的な姿勢に好感が持てたが、起承転結といった観点から見て
作品の流れにやや必然性を欠くようにみえる点が惜しまれた。

 瀬尾育生の作品は、漢字の持つ視覚的な効果と聴覚的な効果をたくみに活用した
独自の表現スタイルを、練りに練って仕上げたということが読み取れていいのだが、
読者の立場から見るとちょっと難解すぎるかもしれないので、今後どのようにこのスタイルを発展させることができるかどうか興味を持って見守りたいと思った。

 ぼくが今号でもっとも注目したのは、和合亮一の「らら駱駝もう止せ駱駝だだ」である。
はじめ読んだときは、「何だこれは!」と驚かされたが、次第に、言葉の流れとイメージの展開
雄大な快さに脳内にはドーパミンがいっぱい分泌されてしまった。

 ・砂漠をゆったりと歩く駱駝がおもしろい!
 
 ・「はははは」とか「らららら」とか埋め尽くされるひらがなや漢字が邪魔にならない!
 むしろ視覚的なインパクトで笑わせてくれる!
 
 ・亜細亜や世界といった雄大さがいい!
 
 ・時空を超えて飛び回る自由自在さがいい!
 
 ・小さなことにこだわらない爽快感がいい!
 
 ・荒唐無稽な言葉が出現するように見えるが、リズムやイメージや言葉に
全体的な調和とリズムと必然性を感じるところがいい!

 以上のようなことを感じた。

 和合亮一は、迷路に迷い込んだ不安や絶望を書き綴る詩人が多い中で、珍しく風通しのよい詩人だと
思う。今後ますますの活躍に期待したい。

 あわせて、現代詩手帖9月号で、力作を発表されている詩人のみなさまに敬意を表するとともに、更なるご健筆を祈りたい。