南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『 アンケート調査の位置づけ 』 (価Ⅱ=48)

 『 アンケート調査の位置づけ 』       

(価値観の研究第二部=48)


1.すべてのことに対して科学的なアプローチをしたいと思うのは基本的には妥当な姿勢だと思う。しかし、自然科学のようなジャンルならいざ知らず、社会科学のように人間の心理的な要素が絡んでくると、完全な客観的・科学的アプローチをとるのはきわめて困難だ。

 たとえば、ある道路を作るかどうかとういう政策決定をするときに、利便性とコストを比較して、その効用が大きい順に優先順位をつけるというような方法がとられている。

 道路を作れば移動時間が短縮できて、ひともものも効率よく動けるようになる。生産性が向上し、利益が増加する。飲食店やみやげ物屋がもうかる。消費も拡大し、生産も拡大する。所得がふえれば生活も豊かになる。反面、環境は悪化する。排ガス、騒音・振動などによる健康被害や生活環境への悪影響。場合によっては、交通事故もふえるかもしれない。景観がそこなわれるかもしれない。
 そういうプラス・マイナスを数値化して比較するとしたら、さまざまなモデルや統計を用いて計算したうえで、どうしても数値化が困難な要因についての最後の手段はアンケート調査だ。単純に言えば賛否を問うことだ。さらには、騒音などは、どれぐらいなら我慢できるかとか、いくらぐらい所得がふえたら受け入れてもいいと思うか、などといって強引に数値を引き出してしまうといった例もある。

 2.政党支持調査などもアンケート調査、世論調査もある意味ではアンケート調査だ。
消費者の購買行動や進路、余暇時間の過ごし方、外国に対する親近感、将来への見通し、環境や福祉への注文などアンケート調査のテーマは枚挙に暇が無い。
 アンケート調査はそれなりの意義があることは認めるが、安易にその結果を信じることには危険が伴うと思う。
 なぜなら、アンケートの質問表の内容や対象の選び方、調査の仕方、ヒアリングを実施する者の特性、回収努力などによって、結果には大きな差が出てくるおそれがあるからだ。特定の者に有利になるように政策を誘導するための方策として使われることを防ぐ必要もある。しかし、それはなかなかむずかしい。
 
3.アンケート調査結果を見るときに注意すべき点をいくつか挙げれば次のようであろう。

① 実施主体はだれか?
② アンケートの目的・内容は妥当か?
③ アンケートを実施するスタッフはどんな者か?
④ アンケートの結果の評価方法は妥当か?
⑤ アンケートに利害関係者がどのようにからんでいるか?
⑥ アンケート調査を用いる必要性があるか?
⑦ アンケート調査の持つ限界をどのように意識しているか?
 
 いずれにしても、さまざまな場面で、今後とも、アンケート調査は活用されるにちがいない。だが、この方法には、それなりの問題をはらんでいることを関係者及び一般国民は知るべきであろう。便宜的なものが権威を得すぎないように。結果に問題があれば、調査の内容や方法を見直したり、再調査して、すこしでも調査内容を改善する努力が続けられるべきものと思う。