南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『詩の批評の方法について』

   『 詩の批評はどのように行われるか? 』=わたしの方法論


 「詩の批評」は、実際にはどのように行われているのだろうか?

 いろいろな批評の仕方があると思うが、ここでは、わたしなりのアプローチの仕方を述べて議論の材料に供することとしたい。

 わたしは、ある詩を読むときには、次のような順序で分析評価をすることにしている。

 (なお、断っておきたいことは、詩の評価は、はじめて詩を読んだときに感じる「印象、感触」みたいなものがあって、実は、その時点で直感的に行っているような気もするのだが、ここでは一応論理的な読み解き方法として示してみたい。)


 まず、「1.洞察力」をチェックし、
 
 次に、「2.言語技術」をチェックする。

 最後に、全体を読み返して、総合的な評価を下す。

 基本的には、このようなステップで詩を解析することしている。

 それについて、少し詳しく述べてみることにしたい。

 
1.洞察力についてのチェック

  ここでいう「洞察力」とは、現実社会や人間存在への観察力、分析力、判断力などの総合的な把握能力のことである。

 洞察力があるかどうかは、自然環境、社会環境などそのひとが置かれた種々の制約の中で、自分の知識、経験、才能などを駆使していかに正確に事物をとらえうるかによって判断する。

 最後は、価値観の問題に到達することになるが、そこまで行くと相容れない価値観に基づいて書かれる詩の批評という不可能な域に踏み込む可能性があるがそれはやむをえない。

 ① 主義主張、思想、信条、宗教、民族、タブーなど

  それらの存在と意味を正確にとらえているか。

 ② 偏見、皮相、悪意、差別、矮小、無知蒙昧、不遜、高慢、抑圧など

  そういう意識を明確にとらえているかどうか。

 ③ 発見、新規性、芸術性、ポエジー

  どこかに新しい発見や用法や感覚が見出せるか。

 ④ そのほか


2.言語技術のチェック

 これはすでにさまざまなひとによって述べられてきたことであり、詩の書き方、読み方の本もいくつもあるので、くわしいことはさしひかえたいが、現状の詩の問題は、詩人がそれぞれ独自のテーマと手法で詩を書くという傾向が徹底していることから、詩の基本である「詩の技術(レトリック〈修辞))」についてあまり重視されない風潮があるように見えることである。

 あるひとは、「詩人たる者は、当然、一定の技術は身につけているので、技術論は意味がない。問題は、その技術を駆使してどんな詩を書くかである」というように言っている。

 たしかにそういう一面もあることは否定しないが、私見では、初歩的と思える言葉の使い方の欠点を持つ詩が多すぎると思うので、もっと基礎的な勉強をする必要があるのではないかと思っている。

 とりたてて変わったことはないと思うが、念のため、わたしが言語技術をチェックする点を挙げれば次のようである。

 ① テーマ(詩作の意図や動機など)の内容分析把握、 テーマと詩のバランス
 ② 詩の全体の構成、分量(行分け、散文、長短、過不足がないか、など)
 ③ 起承転結
 ④ リズム、語感、音楽性
 ⑤ 言葉の使い方(単語、詩句、行、連、全体)
 ⑥ 種々の技巧(比喩(直喩、隠喩、換喩、引喩など)、擬人法、倒置法など)
 ⑦ 現代性(テーマ、内容、情報、知識、意識、現代語、古語、方言)
 ⑧ 抒情性
 ⑨ 叙事性
 ⑨ ユーモア
 ⑩ 言葉遊び
 ⑪ 外国語、外来語
 ⑫ リアリティ
 ⑬ イメージ
⑭ その他(ナンセンス、シュール、モダニズム、ヴィジュアルほか)

 以上のような点をひとつひとつ吟味して言葉が的確に使われているかをチェックすることにしている。

3.総合評価

 上述のように、「1.洞察力」、「2.言語技術、」をチェックした上で、また全体を読み返して、あらためて詩の総合的な評価をすることにしている。