南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

『 民主党の政権獲得 』 について

  
    「 民主党の政権獲得 」について


1.去る8月30日の総選挙結果は、予想通り民主党の圧勝に終わった。わが国の歴史において画期的なできごとだといえよう。

 百年に一度と言われた世界不況もやや改善の兆しがみられるものの、まだまだ予断を許さない不安と不透明さを伴っていると見るべきだろう。

 このような時期に新たに政権を担当する民主党はわが国及び国民に対してきわめて重大な責任を負っている。

2.民主党政権のプラスとマイナスを整理しておこう。

(1).まず、プラス面は、自公のような過去へのしがらみがない分、思い切った改革が断行しやすいということだろう。長い間に形成された組織や人間のつながりは、かんたんには切れない。そういう意味で、老朽化した制度をあらため、むだを排し、予算配分の大胆な見直しをしてほしいと思う。

(2).次にマイナス面は、

① 政治や行政についての知識と経験を持った人材の不足だろう。
 
 マニフェストでどんなにかっこうのいいことを述べても、現実は、複雑な利害関係と過去から義務化されてきた正当な補助や支援措置でがんじがらめになっており、ばっさり切り捨てようとしても容易に切れるものではない。細部にわたるチェックが必要だ。それは政治家と実務者としての公務員などとの連携によってしか実現できない。叩くだけでは組織や人員を動かすことはできない。最後は妥協も必要だ。その意味で、勉強と辛抱と指導力が求められる。

 おそらく、当面は人材難に直面するだろう。したがって、優秀な人材を各分野から調達することも緊急対策として積極的に考えるべきである。

 国会が始まれば自民党からの厳しい批判が予想される。たじたじとなって答弁に窮する閣僚が出なければいいが。しっかりとした理論武装が望まれる。

 民主党は、子供手当てなどに重点を置いているイメージがあるが、今の日本ではやはり、景気回復が最優先課題ではないだろうか?企業が競争力を持って製品を作り売れる仕組みを発展させないかぎり、労働者の雇用や賃金も保証されない。「弱きを助け強きをくじく」というのはかっこいい言い草だが、経済の仕組みを考えれば、問題がある。
 まず、景気対策で、需要を喚起し、産業を立て直すことがたいせつだ。優先順位をしっかりと定めた予算配分や政策の立案が望まれる。

 私見によれば、無駄遣いをいくら減らそうとしても、何兆円も捻出することは困難だと思われる。いずれ、財源問題にぶつかり、消費税の増税をせざるをえなくなることはほぼ間違いない。それでも、今までなら削れなかった予算を削減できれば御の字だと言えよう。

 なお、国民が覚悟しておく必要があるのは、無駄をなくす一環として、公務員を減らせば、行政サービスが低下するということだ。窓口は混雑し、書類の間違いはふえ、手続きには時間がかかるようになる。負担が少なくなればサービスも低下するという当然のことを忘れてはいけない。

② 次の懸念は、世界との協調がうまくやれるかだ。日米関係を中心にすえるしかない現状において、まずはアメリカとの信頼関係を確立してほしい。

 そのうえで、アジア諸国との信頼関係を確立し、欧州、その他の外国とも友好的な関係をつくりあげていくことが望まれる。

 政権が交代しても、国際社会での約束は継続する。徐々に修正していくことはさしつかえないにしても、不連続は避けるべきだ。外交についての専門家の意見を聞いたり、人材を登用したりして、的確な外交政策を樹立し実行してもらいたい。 日本は世界と協調しなければ生きていけない。妥協も必要だと思う。

3.今後は、首班指名に続き組閣があり、外交日程があり、年末には政府予算案が決まるだろう。年明けからは国会で論戦だ。それまでに、景気が上向いていればいいが、もし下に向いていたら、事態は深刻だ。来年度にはいれば、新予算が成立し、新たな組織も設置されて、いよいよ民主党連立政権の腕の見せ所だ。 一年ほどの間に、つまずくようなことがあれば、再び政権交代の声が上がるだろう。場合によっては、民主、自民が再編されて、新党が誕生するかもしれない。そうなれば、新たな二大政党の誕生となる。

 二大政党が政権を交互に担当していくということ自体は望ましいので、是非このあり方は定着してほしい。いつまでも同一政党が政権を担当すれば弊害も避けられないだろうからだ。

 当面、民主党の手腕と意気込みに期待して、見守っていきたいと思う