南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

「条約、協定、黙約、暗黙の了解など」(価Ⅲ=その4)

 

     『 条約・協定、黙約、暗黙の了解など 』  (価値観の研究第三部 その4)


 昨年、民主党政権が発足したときに、わたしはこのブログで国際関係は難しいから要注意だと指摘したところであるが、案の定、鳩山政権は普天間問題でもたついており、政権維持すら危ぶむ声が大きくなっている。わが国にとってきわめて由々しき事態だ。なんとか、事態の打開を図ってもらいたいと切望する。

 ところで、国際的な約束の代表的なものは、条約や協定だが、実は、それとともに、さまざまな約束事が存在するようだ。覚書、黙約、暗黙の了解、メモなど。ものによって、法的拘束力にちがいがあるので、違反した場合の効力にはちがいがあるが、いかなる世界においても、グレーゾーンは存在せざるをえないのであり、建前とは別の本音や沈黙や阿吽の呼吸といったさまざまな要素をひっくるめて国際関係はとらえる必要があると思う。それは、国内関係やふつうの社会におけるさまざまな関係においても同様だと思う。

 今回の鳩山内閣における最大の問題点は、手順前後、シナリオライターの不在あるいはシナリオライティングを明確に指示しなかったリーダーのミス、明文の条約や協定や合意の拘束力の軽視、連立内閣での閣内調整不調、米国政府との交渉ミス、地元へのアプローチミスなどが重なって深刻な手詰まりに陥ってしまった。

 法的な拘束力を前提としつつも、昨今の社会情勢においては、法的な義務はなくても地元の基本的な了解は必要である。そういった極く初歩的な手順を踏まずに従来の方針の大転換をしようとした態度は大胆ではあったが軽率のそしりをまぬかれない。

 すべてをオープンに論じることは民主的かもしれないが、外交や軍事のように機密保持が必須な分野については、秘密裏に物事を検討し協議し大筋の方向をさぐっておくべきである。政府が公表することを踏まえて、マスコミや評論家などが黙約や暗黙の了解の部分について解説をほどこすというのが望ましい役割分担だ。

 こうした役割分担は、当事者によって相談の上決まるものではなく阿吽の呼吸で決まるものだ。そして、それは政治においてのみならず、財政、経済、貿易、金融その他のさまざまな分野においてもきわめて重要である。

 たしかに複雑な方程式を解く程度の知性と正確さと慎重さを求められるが、事柄の重要さを考えれば、それだけの能力を持つ者がリーダーとして的確な指揮命令を発してくれなければ、日本は危機に瀕することは明らかである。

 理屈をこねることはたやすい。だいじなのは、責任ある立場の人間による責任ある判断と行動だ。