南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

殲滅

微細なものへと傾く心の磁針は揺れ動き

これまでに記録されてきた波形は心に収まり切れていない

とりわけ巨視的に水平線を追いかけたにじんだ視線を切り替えて

顕微鏡的な焦点を合わせ得るようにしたとき

新たな地平に現れた蜃気楼のごとき揺らめきを

素面では見続けることはできず

なんらかの麻酔作用を利用することによってのみ

うすい皮膚から抜け出していこうとする霊魂を

辛うじてひきとめることができる

見えない微粒子だけを狙い撃ちをしようと

特殊なゴーグルをかけて赤紫色の煙を現認し

高性能の吸塵装置を用いてその煙だけを吸い込み

超高温の焼却炉で徹底的に焼きつくす

なりを潜めていた人影がひとつまたひとつと戸外に現れ

次の瘴癘の跋扈までは束の間のなりわいに気を紛らす