微細なものへと傾く心の磁針は揺れ動き
これまでに記録されてきた波形は心に収まり切れていない
とりわけ巨視的に水平線を追いかけたにじんだ視線を切り替えて
顕微鏡的な焦点を合わせ得るようにしたとき
新たな地平に現れた蜃気楼のごとき揺らめきを
素面では見続けることはできず
なんらかの麻酔作用を利用することによってのみ
うすい皮膚から抜け出していこうとする霊魂を
辛うじてひきとめることができる
見えない微粒子だけを狙い撃ちをしようと
特殊なゴーグルをかけて赤紫色の煙を現認し
高性能の吸塵装置を用いてその煙だけを吸い込み
超高温の焼却炉で徹底的に焼きつくす
なりを潜めていた人影がひとつまたひとつと戸外に現れ
次の瘴癘の跋扈までは束の間のなりわいに気を紛らす