南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

俳句『半夏生』

   半夏生

我流にも 手応えあれば 夏に沿う
いっぱしの 夏の装い 風来坊
地図もなく 迷い続ける 在の夏
せせらぎに しばし涼とる 奥平
敏感を 色に染め分け 夏の川
遠雷に 読みふけりしは 夏の夜
夏の午後 うつらうつらの 綿入子
お互いに シカとしあって 夏ゆらり
生体の 交感かすか 夏の午後
七月の コーヒーの午後 やや苦く
夏という くくれぬ混合 季節感
きょうもまた 大谷コール サマータイム
魔術師の 弟子にもなれぬ 夏季講座
諤々と 脳かまびすし 熱帯夜
食欲を 失くす恐怖は 夏の罠
眠れない 七月初め 青動悸
錯乱の ただなかにある 呵々の夏
落ち着けと 自らに言う 夏の月
大小の 異変抱えて 夏半端
卵割れ 気を取り直す 夏の宵
紙本を 棚上げにして 避暑地行
夏の山 木陰に開く 電子本
夏の海 こころ溺れる 身は流る
酷暑にも 一日一楽 唱えつつ
富士の山 登らぬままに 年重ね
短冊に 書いて消したる 高望み