南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

2021年 丑年

2021年 丑年

 

目覚めると

あふれる光が

新しい年を知らせる

 

沖を行く老朽船の

針路を示す計器盤

電波は見えない

 

年を越せなかった命が

凍らせる背筋

生者は黙々と歩き出す

 

どんなことがあっても

乗り越えていこう

もぐもぐと草を食む牛の群れ

『2020年紅白を聴く』(57577系短詩)

 

 

『2020年紅白を聴く』(57577系短詩)

 

 

だれもみな バイアスの罠 陥りて

呻吟しつつ 光をつかむ

 

誰の言 信ずべきかは 自らの

身を切るごとき 精進の果て

 

轟轟の 幾万人の 叫喚に

真実告げる 沈黙を聞く

 

年の瀬は 心静かに 窓辺にて

日に当たりつつ 海苔餅を食う

 

さびしさを にぎわいに変え 悲しみを

喜びにする 魔法がほしい

 

そのひとの 機嫌の悪さ 気づかずに

不機嫌のまま 年を越せない

 

ちょっぴりは 口げんかして 仲直り

できるうちなら 幸せ者よ

 

ねたみなど もたないつもり みちたりた 

ミニマムあれば よしと思って

 

花屋には 滅多に行かない 暮れなれば

正月用の 花束を買う

 

花の名は 知らぬカタカナ 覚ええず

和名に変えて 持ち帰る道

 

はるばると 来ぬと思えば いとしさも

一入なりと 聞く鐘の音

 

わはは鳩 からから鴉 へへへ蛇

さよなら子年 笑うっしっし

 

ひとはみな かわいい生まれ ナルシスの 

幻影映る 水辺に群れる

 

紅白を 見てきた自分 振り返る

 よくも悪くも 日記の一部

 

美と醜は メビウスの輪か くっきりと

裏と表を 剥がしきれぬか

 

年ごとに 先ゆく時に 遅れるを

気づかぬままに 迷い歩くか

 

時代とは 見えない川か 流れつつ

人も事物も 置き去りにする

 

だれひとり 狂乱の渦 避けきれず

悲鳴は裂けて 光は消える

 

一個人 無限の後に 生まれ来る

まだ見ぬ宙に 思いを馳せる

 

詩「餅」

    

杵と臼
ぺったんぺったん
つくごとに
心は弾み
よき年を
願う気持ちがふくらんで
白く尊い 餅となる

お雑煮を
一口食べれば
やわらかな
深い味わい
広がって
やさしく強いひとになる
そんな自信が湧いてくる

南原充士 2020年の文学活動

 

南原充士 2020年 文学活動の記録(2020.12)

 

1.小説関係

 Amazon Kindle電子書籍で7冊目の小説『喜望峰』出版(2020年8月)

     (参考) 既刊電子書籍小説
      BCCKS   『転生』
      Amazon  『エメラルドの海』
           『恋は影法師』
           『メコンの虹』
           『白い幻想』
           『血のカルナヴァル』

           『カンダハルの星』    

https://www.amazon.co.jp/-/e/B00UBG2BMI

 

2.詩関係

詩誌「space」 150号(時間論ⅩⅩⅢ)
         151号(時間論ⅩⅩⅣ)
         152号(時間論ⅩⅩⅤ)
           153号(時間論ⅩⅩⅥ)
         154号(時間論ⅩⅩⅦ)
         155号(時間論ⅩⅩⅧ)
② 詩誌「repure」 30号(空虚)
          31号(シゾク)  
③ 詩誌「詩素」  8号(手をつなぐ)(論考=ベートーヴェンピアノソナタ)

                                           (谷川俊太郎詩集『普通の人々』書評)
          9号(夏の日は輝く)(論考=反骨精神について)

➃ 詩誌「みらいらん」 5号(大人の童話)
⑤ 「09の会」(詩の合評会) ZOOMで開催。数回参加。
⑥ 「松下育男詩の教室(buoyの会」コロナにより3月から休止。

       なお、同教室の廿楽順治氏が立ち上げたWEB上の「詩の広場」に参加。
⑦ 柿原妙子氏主宰「英詩研究会」に出席(3月、9月)
⑧ 詩集寸評 ブログ「きままな詩歌の森」および「続・越落の園」に随時掲載。

⑨『うろこアンソロジー2020版』に 詩「コウノトリ」を発表。

(参考) 南原充士の既刊詩集
① 散歩道(私家版)
② レクイエム(私家版)
エスの海(私家版)
④ 個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか(近代文芸社
⑤ 笑顔の法則(思潮社
⑥ 花開くGENE(洪水企画)
⑦ タイムマシン幻想(洪水企画)
インサイド・アウト(洪水企画)
⑨ ゴシップ・フェンス(洪水企画)
⑩ にげかすもきど(洪水企画)
⑪ 永遠の散歩者(洪水企画)
⑫ 思い出せない日の翌日(水仁舎)

3.575系短詩および57577系短詩関係

   随時、ブログ「きままな詩歌と小説の森」(エキサイト・ブログ)   

ブログ「続・越落の園」(はてなブログ)に発表
『南原充士 2020年 575系短詩』 年間とりまとめ発表。

 『南原充士 2020年 57577系短詩』 年間とりまとめ発表。

4.ブログ関係

「きままな詩歌と小説の森」(エキサイト・ブログ)

https://nambara14.exblog.jp/i0/
自作詩歌、詩集短評、ディラン・トマスの詩の翻訳、論考『価値観の研究』等を掲載。
なお、シェークスピアソネット集の翻訳は、全154篇中106篇まで和訳完了。
② 「続・越落の園」(はてなブログ

https://jushi14.hatenablog.com/
   Yahoo!ブログサービス終了に伴い、はてなブログに移行。

5.SNS関係

   ①twitter
   ②Facebook
   ③mixi

https://mixi.jp/home.pl

 

 

詩「花火」

 

   花 火

 

         南原充士

 

 

秋の日はたちまち傾き

公園にも暗闇が訪れる頃

しゅっと光るものがある

かたわらを過ぎゆく人には

それが花火だとわかるが

ひとの姿は見えない

今年は大きな花火大会が中止になった

夏休みもぱっとしたことがなかった

大人も子供もどこかにくすぶっていた火薬に

火をつける機会を待っていたのだろう。

『2020年 オリオン座』(575系短詩)

 

『2020年 オリオン座』

 

  (575系短詩(2020年12月)

 

 

新しい 暦を吊るす 心映え

 

メリーX と 言われりゃ返す 無心人

 

訃報など 聞かずにいたし 年の暮れ

 

はね返せ 氷の刃 毒の針

 

氷より 冷たいひとの 舌の先

 

無慈悲より 寒さ厳しき 無関心

 

やせ我慢 乾布摩擦で くしゃみする

 

寒気にて 縮める心 裏返す

 

目覚めれば 丑三つ時の オリオン座

 

しょぼくれた ひとさえ照らす 真冬の日