岸本嘉名男詩集(新・日本現代詩文庫)
『岸本嘉名男詩集』(新・日本現代詩文庫)。地元せっつへの愛着をベースに書かれたさまざまなスタイルの詩。一貫しているのは誠実な人柄が観察し経験した多くの事柄だ。英語に訳した詩も興味深い。萩原朔太郎の研究書もあり、幅広い活動は着実な成果を上げている。CD化された『沖縄の女』もある。
シェークスピア ソネット 137
ソネット 137
W. シェークスピア
盲目にしておバカさんのキューピッドよ、おまえはわたしの目に
何をしようというのだろう
わたしの目は世間を観察しているが、見ていることさえ見えないと思わせることだろうか?
わたしの目は美が何であり美がどこにあるのかを知っているのに
最悪のものを最良のものにとりちがえてしまう、
もし目が余りに誘惑的な容貌に眩惑されて
あらゆる男がたむろする湾に錨を下ろすなら
わたしの心の分別が結び付けられているフックを
おまえはなぜ目の偽りから造り上げたのだろうか?
わたしの心はそれが広い世間の共有地であると知っているのに
なぜわたしの心がそれを私有地であると考えなければならないのだろうか?
あるいはわたしの目は そのことを見ていながらそうではないと言うのだろうか?
そんなにも醜い顔に美しい真実を塗るために、
正しいものや本当のものの中にありながらわたしの心と目は誤りを犯してしまった
そしてそれらは今やこの偽りの疫病へと引き寄せられてしまった。
Sonnet CXXXVII
W. Shakespeare
Thou blind fool, Love, what dost thou to mine eyes,
That they behold, and see not what they see?
They know what beauty is, see where it lies,
Yet what the best is take the worst to be.
If eyes, corrupt by over-partial looks,
Be anchored in the bay where all men ride,
Why of eyes' falsehood hast thou forged hooks,
Whereto the judgment of my heart is tied?
Why should my heart think that a several plot,
Which my heart knows the wide world's common place?
Or mine eyes, seeing this, say this is not,
To put fair truth upon so foul a face?
In things right true my heart and eyes have erred,
And to this false plague are they now transferred.