南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

モーツァルトとダ・ポンテ

きのうある本屋で「モーツァルトとダ・ポンテ」の関係を扱った本を見かけた。最近出版された本で、ヨーロッパ人が書いたものを日本語に訳したものだった。それでも、ダ・ポンテにかかわる本が出たのはよろこばしい。

なぜなら、モーツァルトは天才の名をほしいままにして今や世界で知らぬものはいないぐらいの存在だが、フィガロの結婚ドン・ジョバンニコジ・ファン・トゥッテといった名作オペラの台本を書いたダ・ポンテのことはまったく知られていないのはなげかわしいのではないかと指摘してきたからだ。

どうやら、当時の台本作家も音楽家と同様に身分も生活も不安定だったらしい。自分を庇護してくれる大御所(たとえば皇帝など)がなくなったり、地位をうしなったりすると、そのあおりを食らって失業したりしたらしい。

そういう不安定な生活環境のなかで、注文主の意向に沿った仕事をしながら、芸術的にも高い作品を残したことは驚異的であり、賞賛に値すると思う。

モーツァルトのオペラファンの皆様は少なくとも「ロレンツォ・ダ・ポンテ」の名前を覚えて置いてくださいね!