南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

性善説か性悪説か?(価値観の研究=その12)

 性善説を信じたいが、歴史をふりかえればそんな甘い見方はできない。
では、性悪説が正しいだろうか?
歴史を振り返れば、そうとばかりもいえない。
どうやら、人間は、正邪両面をもっているらしい。

 ひとりの人間の中に天使と悪魔が共存する。

 皆殺しを命じ、命乞いをするおんなこどもさえ切捨て、家屋敷は焼き払った残酷無比な武将も、舞を愛し、茶の湯やハイカラな文物を好んだ。有能な部下を取り立て活用した。商業の発達を促進した。武芸に秀でただけでなく、経済や文化や風俗にも意を用いた。芸術への理解もあっただろう。

 人間の内面は脳科学や心理学、社会学などが総動員されなければ研究が進まないと思う。

 ともすれば、善悪。正邪、真偽、明暗、強弱、など、二元論に陥りやすいのが、人の常。

 できるだけ科学的に、人間を人類を観察して、歴史を分析する視点が不可欠だ。

 歴史認識が単純に共有できるとは思えないが、統一しようとする努力は大切だと思う。

 結論とともに、プロセスも重要だ。

 姿勢や運動、行動がともなってはじめて、価値観が実証的になり、説得力をもつのだと思う。