南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

「価値観の研究」第一部

価値観の共存共栄に向けて(価値観の研究=その50)

価値観についていろいろ思いつくことを述べてきたら、もう50回めの記事ということになった。 これまでは、かなり基本的なことを、抽象的に、体系的に述べてきたつもりである。 ところどころに具体例を挿入したが、どちらかというと論理の展開に重点を置い…

無意識(価値観の研究=その49)

価値観を考察するとき、忘れがちなのは、意識と無意識の関係である。 なにごとも覚めた眼で観察し、判断していると思いたいが、現実はそうはいかない。 幼児時代の環境によって、味覚や生活様式や価値判断など、かなりの範囲にわたって、個人の価値観は影響…

正義(価値観の研究=その48)

価値観の体系および要素についてはすでに述べた。 ただ、個人の価値観と社会の価値観にはちがいがある。 社会道徳などは個人の道徳観を拘束する。 正義もまた個人の正義感と社会的正義は異なりうる。 正義は、絶対的なものではない。 社会科学が価値観の科学…

善意と悪意(価値観の研究=その47)

価値観の競合はいたるところに見られる。 価値観が生き物だというとらえ方についてはすでに述べた。 では、価値観はどのように優劣が決まるのか?あるいは強弱が? 正当性とか論理性とか宣伝能力とか? 価値観の競争ということを分析するとき、ひとつ注意す…

科学と価値観(価値観の研究=その46)

これまで、科学と科学以外のことがきちんと区別できることを前提に話をしてきた。 しかし、ほんとうに科学と非科学を峻別することは可能なのだろうか? 科学的とか客観的とかいうと、きわめて論理的・実証的で疑問の余地がないようにも思える。 実際にそうだ…

誤解(価値観の研究=その45)

価値観を持った同士が接するとき、おたがいの言葉や行動をどう理解し受け止めるか?は重要だ。 真剣に伝えようとする場合でも、100%真意が伝わることはありえない。 よく伝達ゲームというのがあるが、ひとりのメンバーが一枚の紙に書いてある内容を暗記…

失言(価値観の研究=その44)

価値観をめぐっては複雑な要素がからまりあい、また変化していくものであることを述べてきた。ここで、ちょっと横道にはいって、意思疎通の精度について触れておきたい。 ひとがある価値観に基づいて発言し行動するときに、すべてを自覚し、正確にコントロー…

歴史(価値観の研究=その43)

価値観には、個人レベルの価値観、グループや地域社会や会社の価値観、国家の価値観など、階層があることは前に述べた。 では、時間的な経過によって価値観はどのように変化してゆくだろう? 価値観は人間と同様に生まれ、育ち、死ぬ。「価値観の一生」とで…

国家(その2)(価値観の研究=その42)

国家と国家の関係は団体間の関係であり、主権と主権の関係なので、とてもむずかしい。 まず考えなくてはいけないのは、既述のとおり、利害が基本だということだ。 国益が根底にあって、美辞麗句もあり、飴とむちもある。平和や平等や共存共栄の目標もある。…

国家(価値観の研究=その41)

とりあえず、団体までの価値観のありようについて考えてきたので、次に、価値観の典型的な表れとして、「国家」というものを考えてみたい。 「国家とはなにか」ということについては、それに関する専門の教科書を参照していただきたい。 ここでは、そういう…

人間関係=その13(グループ)(価値観の研究=その40)

前回は、二人の人間関係と三人の人間関係の違いについて述べた。それでは、4人、5人、6人・・・と人数がふえていくと人間関係はどのように変化するのだろうか? 友人だけの場合、職場での場合、地域の場合、他人が混じる場合、パーティーの場合、ボランテ…

人間関係=その12(三角関係)(価値観の研究=その39)

人間関係も1対1の関係ならわかりやすい。 だが、現実は多くの人間が存在して、複雑な力学が作用する。 そこで、とりあえず。三角関係をとりあげてみよう! ぼくの友人にAとBとがいるとする。 AとBがけんかをして、絶交し、当面仲直りの見通しが立たない…

人間関係=その11(人格形成)(価値観の研究=その38)

一人の人間が、ある価値観をもとに発言し行動する。 すると、他人からの反応なり見方がありうるはずである。 ある集団のなかでのある人物の評価というものがある。 その「人物評価」はどのようになされるのだろう? ある程度の時間の経過とそのあいだになさ…

人間関係=その10(全体と部分)(価値観の研究=その37)

人間関係には距離感がたいせつだと述べた。 では、人間同士は、どのようにかかわりあうのだろうか? わかりやすい例を引こう。 夫婦の場合だ。しかも、相思相愛の夫婦の場合だ。 精神的にも肉体的にも完全に一体化していると感じあう。 こころもからだも素直…

人間関係=その9(嘘も方便)(価値観の研究=その36)

前回、人間関係におけるコミュニケーションの重要性について話したが、コミュニケーションは常に真実が語られるとは限らない、「作戦上、嘘をつく」とか、「都合の悪いことは言わない」とか、「おたがいの平和のためにあえてうそをつく」とか、「うそによっ…

人間関係=その8(コミュニケーション)(価値観の研究=その35)

前回、相性が悪いと思った相手からは、可能な限り距離をとるべきことを述べたが、しかし、人間の相互理解は相性のわるい相手であっても、断念すべきではない。白黒のレッテルをはりすぎるのは、(価値観の異なる人間の共存というのが最優先の目的なので、)…

人間関係=その7(相性)(価値観の研究=その34)

人間関係共通に、「相性」というものがある。 はたして、科学的に解明しきれているかどうかはわからないが、「相性」を軽視すると痛い目に会う。 だれにもそういう苦い経験があると思う。 英語では、ケミストリー=化学という言葉によって、人間関係の相性の…

人間関係=その6(地域社会)(価値観の研究=その33)

人間関係のひとつの重要な要素が、地域における人間関係だ。 向こう三軒両隣とか、隣はなにをするひとぞとか、相隣関係とか、遠い親戚より近くの他人とか、隣の芝生とか、隣組とか、村八分とか、町内会とか、近所づきあいとかにまつわる言葉が多いのを見ても…

人間関係=その5(劇団の場合)(価値観の研究=その32)

ちょっとケーススタディをひとつ。 昨日、ある著名な劇団のプロデューサーと話す機会があった。 まだ、30代の若くてかっこいい青年だった。 ぼくは、「どのような俳優が有望なのですか?」と聞くと、 彼は、「演技力があるというのは当然必要な条件ですが…

人間関係=その4(学校)(価値観の研究=その31)

今回は、人間関係のうち、学校での人間関係をとりあげたい。 いじめや非行化や校内暴力が問題にされる学校。 まず、保育園。仕事をもつ両親にとってはたいせつ。安心して預けられる施設が望まれる。保母さんの資質も重要。幼児はそこでしつけられる。 無認可…

人間関係=その3(家庭)(価値観の研究=その30)

人間関係の基本は、親子であり、家庭だろう。 だれも、「生まれる」のであって、選択権はない。芥川の「河童」 とはちがうのである。 気がつけば「この世にいた」のだ。 幼児体験はどう見ても人格形成に大きな影響を与える。 きちんとした親がいてきちんとし…

人間関係=その2(職場)(価値観の研究=その29)

人間関係にはいろいろある。前回は{恋愛関係」をとりあげた。 今回は、職場での人間関係をとりあげたい。 国や地方公共団体と公益法人と営利企業では人間関係がかなり異なる。 公益を目的にする組織では、人事評価は、売り上げや利益への貢献度というような…

人間関係=その1(恋愛関係)(価値観の研究=その28)

人間の数だけ「価値観」があるわけだから、現実には、価値観は人間関係の中に現れてくる。 したがって、次のステップは人間関係、さらには社会関係、職場関係、国際関係などさまざまな関係をどうとらえたらいいかということが重要なテーマになる。 まず人間…

憲法改正問題(続)(価値観の研究=その27)

きょうの朝日新聞の朝刊に心理学者岸田秀氏が、安倍内閣の憲法改正について、論評している記事がある。 その論旨は、次のとおり。 「日本の歴史を、{外的自己}と{内的自己}との葛藤、交代、妥協などの歴史ととらえる。 外的自己は、外国を崇拝する自己。 内…

憲法改正問題(価値観の研究=その26)

わが国にとっていま最も重要で難しい問題のひとつが憲法改正問題であることは異論がないだろう。 賛否両論がある。無関心なひともいるかもしれない。 賛成派の論拠は、「敗戦直後ならともかく、戦後60数年経った今日、独立国として、自国の防衛を自国の軍隊…

言葉と行動(価値観の研究=その25)

昨日のイベントでの谷川俊太郎の発言に、「言葉は現実のほんの一部しか表現できない。言葉は不完全なものだ。現実は複雑で矛盾に満ちたものだ。言葉より行動を重視すべきだ。」という趣旨のことがあった。 昔から「不言実行」とか「有言実行」とか「言行不一…

同性愛者の問題(価値観の研究=その24)

アメリカの軍隊の話し。 アメリカにはけっこう同性愛者が多いらしい。 米軍では、The "don't ask、don't tell" policy(「聞かない、話さない」政策)というのがあって、 うやむやにするこどによって、同性愛者でも軍人として勤務できるようにしている。 と…

利害関係(価値観の研究=その23)

人間が「言うこと」と「行うこと」の間に食い違いが生じる一番大きな理由は、利害関係だろう。 いま、ドイツのハイリゲンダムでサミットが開催されているが、「各国首脳の発言をどう受け止めたらいいか?」を考えるときには、国益が基本にあると思ってよい。…

科学的な解釈は可能か?(価値観の研究ーその22)

これまで、「価値観」についていろいろ述べてきたが、なぜそんなことをくどくど書いているかというと、「自分」をできるだけ正確に知りたいからだ。 だれしも、自分の与えられた環境に、意識するしないにかかわらず、制約をうけている。 なぜ、自分はこのよ…

野党の役割(価値観の研究=その21)

年金法案が衆議院の本会議で強行採決されたニュースがテレビや新聞のトップニュースとなっている。 与野党の対立。議場でもみあう与野党の議員たち。怒号がとびかう。 これを見ると、なんだか与野党は戦争をしているように見えるかもしれない。 しかし、今の…