南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

人間関係=その8(コミュニケーション)(価値観の研究=その35)

 前回、相性が悪いと思った相手からは、可能な限り距離をとるべきことを述べたが、しかし、人間の相互理解は相性のわるい相手であっても、断念すべきではない。白黒のレッテルをはりすぎるのは、(価値観の異なる人間の共存というのが最優先の目的なので、)適当ではないと思う。

 自分の経験からして、人間は言葉をかわすことによってかなりの親近感をかちえるものである。
 いやなやつだという思いをもっていた相手でも、ちょっとした会話をきっかけに見方がかわることはよくある。

 メールや手紙という方法もある。

 いずれにしても、距離をはかりながらも、できるだけニュートラルな気持ちを維持し、機会があれば、接近するチャンスをうかがうぐらいの積極性が必要だと思う。

 あいさつもそうだが、ひとがひとに不信感をもたないようにする第一歩といえるだろう。

 これは、組織間でも、国家間でもいえると思う。

 外交政策は複雑だが、首脳同士が会談をすることは重要だ。会談を拒否することも外交政策の一環だろうから、一概には言えないが、基本的には、さまざまなレベルやチャンネルで交流を図ることが平和の第一歩であると思う。


 だから、政治家や企業の交流だけでなく、市民レベルの交流、観光、スポーツ、学会、留学、研修などさまざまな交流の機会がもたれることがのぞましい。

 まず接する。
 うまく接する。

 距離感をまちがわない。

 相手のプライドを傷つけないように配慮して、最低限、疑心暗鬼、不信感、敵対心をもたないように最大限の努力を傾ける必要がある。

 もちろん、相手が攻撃してきたり、誹謗中傷してきた場合には、それに対して、バランスのとれた反撃や防御策を講ずべきは言うまでもない。

 個人的な関係においても、相手が明らかに攻撃をしかけてきたときは、自己防衛のための手段をとらざるをえないのと同様に。

 要は、人間関係は、可能な限り、コミュニケーションを密にとることによって円滑化を図ることを基本としつつ、衝突の場合にそなえて、心の準備や対策を用意しておく必要があるということである。