南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

憲法改正問題(価値観の研究=その26)

 わが国にとっていま最も重要で難しい問題のひとつが憲法改正問題であることは異論がないだろう。

 賛否両論がある。無関心なひともいるかもしれない。

 賛成派の論拠は、「敗戦直後ならともかく、戦後60数年経った今日、独立国として、自国の防衛を自国の軍隊が責任をもって担うのは当然だということだろう。北朝鮮の脅威に見られるように、国家間の関係は予測できない不確実さがある。こちらが攻撃しなくても相手が攻撃してくる可能性もある。安心して暮らすためには、しっかりした国防力が必要だ。日本の防衛は、アメリカまかせではなく、まず日本の軍隊が中心の役割をにない、そのうえで、補完的に同盟関係を築くべきだ。そのためには、憲法9条を改正する必要がある。」

 反対論の根拠は、いくつかの意見にわかれるかもしれないが、「今の憲法を改正すれば、平和国家が維持しにくくなる。戦争を放棄するからこそ、日本は国際社会から信頼をえることができた。太平洋戦争の経験に照らせば、日本人は、軍事力を持てばなにをしでかすかわからない。まだまだ、成熟した国家国民ではないのだ。だから、今は現行憲法を維持して、平和国家として内外に平和を訴えていくべきだ。」
反対派の中でも、たぶん、日米安保条約については意見がわかれるだろう。「日本の安全を守るためには、日本が自衛隊以上の武力をもたない以上、アメリカの軍事力によってカバーされる必要がある。」とか、「日米安保条約があるからかえって日本は攻撃されるおそれがある。条約を破棄して、非武装中立路線で言ったほうが、むしろ安全度はますはずだ。」とか意見はわかれそうだ。

 そのほか、すこしづつ意見の細部にはバリエーションがありうるだろう。

 自分が賛成だろうと反対だろうと、影響力はほとんどないからといって、真剣に考えない人もいるだろう。

 そもそも、政治問題に関心のないひともいるかもしれない。

 いろいろな意見をもったひとが日本人のなかにもいるだろう。

 自分がどういう意見をもつかは、慎重に考えなければならない。

 こういう問題はえてして、感情的になったり、対立的になったり、誹謗中傷しあったりしやすい。

自分の家族や地域の戦争とのかかわり具合によっても、見方や立場が異なるだろう。

 みな複雑な過去をひきずり、複雑な利害関係の中で生きている。

 それだけに、この問題については、簡単な結論はでないと思われるが、政治家だけにまかせることなく、国民ひとりひとりが自分の意見をきちんともつことが大切だと思う。