南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

野党の役割(価値観の研究=その21)

 年金法案が衆議院の本会議で強行採決されたニュースがテレビや新聞のトップニュースとなっている。

 与野党の対立。議場でもみあう与野党の議員たち。怒号がとびかう。

 これを見ると、なんだか与野党は戦争をしているように見えるかもしれない。

 しかし、今の政治の仕組みでは、すべては基本的には、役割を演じているといってよいだろう。

 仲良しの与野党などというのは本来形容矛盾である。

 対立してこそ与野党だ。激しく議論し、ときには暴力沙汰寸前にまで至る、真剣な論争・闘争が

 野党の存在理由である。

 おそらく、年金法案は内容的には、大きな対立はないように見える。だが、野党が、強い反対を示せなければ、衰退して、与党に吸収されるだろう。

 国民が、注視すべきは、与野党の対立という表面的な現象ではなく、議論の中身だ。それは、与野党を超えて検討されるべき内容だ。

 議論により、問題点が明確化され、解決の方策が見出されるというプロセスが望ましい。

 与党と野党の政策すなわち「価値観の体系」は衝突する。摩擦を起こす。

 与党の原案が野党とのぶつかりあいによってどれだけ、改善されるかに注目すべきなのだが、マスコミはそういうとらえ方はしない。

 マスコミには、事件事故や対立、紛争を優先とするという宿命があるからだ。マスコミの価値観の体系はそういう束縛のもとにあることを見抜いた上で新聞やテレビの報道をとらえる必要が国民にはあると思う。