南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

香水

 先日、あるハーブ園に行った。バラやラベンダーやセージやペパーミントやスペアミントなどいろいろな花やハーブが植えてあり、陳列されてあって、見ごたえ十分だった。

 その一角に、香水の歴史を解説したコーナーがあった。香水の材料や製法、香水ビンの移り変わり、クレオパトラ、マリーアントワネットなどの美女と香水とのかかわりなど、なかなか興味をそそるものだった。

 なかでも、いくつかの代表的な香りについて、ビンがおいてあって、実際にかぐことができたのは貴重な経験だった。麝香、没薬、肉桂など古来芳香の代表選手だったと思うが、特に、麝香は甘い香りが誘惑的で、気に入った。動物の生殖器に近いところからとれるらしい。フェロモンといったところかな?

 香水の材料は、動物だけでなく、花や果皮や根や樹皮や葉や実などいろいろな植物も材料になるそうだ。濃厚でセクシーだったり、柑橘系でさわやかだったり、ミント系で清楚だったり、多様な香りがあるらしい。

 もともとは、風呂にもはいらない習慣だった時代に、におい消し、くさい匂いをごまかすためにつけたらしい。やがて、風呂に入るようになると、香りも弱いもので十分になり、ニーズの変化に対応して、香水も変化してきたらしい。

 最近では、日本人もかなり香りに敏感になってきていると思うが、こと香水となると、ヨーロッパの伝統には及ばないような気がする。

 日本でも、香を焚くとかいう伝統はあったが、いまのような香水=パヒュームというような存在はあまりなかったのではないだろうか?

 香りは五感のなかでも実態がとらえにくいと思う。それだけに、不確かなわけだが、それゆえにかえって、こだわりだすと深くかかわりたくなるのかもしれない。いいにおいとわるいにおいの差だって微妙だし。

 色恋沙汰にも香りは密接な関係がありそうだが、それについてはここでは触れない。

 ただ、詩を書く人間には嗅覚もたいせつな感覚だとはいえるだろう。

 パヒュームとはもともと、煙を通じて香りを作り出すという意味だったようだ。
 ラテン語で、fumumは「煙」、perは「通じて」という意味だったようだ。per-fumum.

 フランス語でparfum.そういえばタバコをくゆらすのは、fumerだったかな?

 語源をたどるのも面白い。

 ちなみに、加齢臭とか指摘される年齢になったので、オーデコロンぐらいはつけるようにしているが、
はたして成果があがっているかはなはだ心もとない。

 どうせなら、ワインのアロマやブーケに酔いしれて、些細なことなど気にしないでいたいものだ。