南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

「意思決定のプロセス」(価Ⅲ=10)

  

     「意思決定のプロセス」(価Ⅲ=10)   

                                 価値観の研究第三部 その10

1.国内外の情勢が複雑化しさまざまな利害や考え方が対立を強めている状況の中では、なかなか物事が決まりにくい。国政においてその典型的な事例がみられる。
 そのようなときにただ頭を抱えているだけではなく、もう一度意思決定のプロセスというものを整理しておくことは意味のないことではないだろう。

2.国政における意思決定は、憲法を含む法令が第一の根拠であるので、その定めるところにより決定を図るのがはじめに取るべきステップである。決められない政治と言われているが、とりあえずは、行政のトップである内閣が企画立案し方針を決定するしかない。予算や法律は国会における承認手続きが必要である。
 では、成立した予算や法令などに反対したい場合はどうしたらいいのか?
 ひとつは、さまざまなツールを通じての反対意見表明である。インターネットや投書や集会・デモなど。
 次は、選挙において、自分の意見を代弁してくれる候補者に投票することである。総選挙や参議院議員、知事、市町村長、県議会議員、市町村議会議員などの選挙の機会を活用することである。
 新たな与党が登場し、新たな内閣が成立しても、手続きは大きくは変わらない。新たな政策を実行したければ、新たな予算を編成し、新たな法令を策定するか既存の法令を改正する必要がある。そのためには、多数決というのが絶対の要件になっている。
 与党と野党の意見調整というのは、まさに多数派工作として表れる。

3.意思決定のシステムが法令で決まっている法治国家においては、どんなに反対意見を持っていてもそう簡単にはそれが実現しない。言論による戦いに勝ち、多数決を取り付けなければならない。
 危惧すべきは、言論闘争に絶望するあまり、暴力に訴えることである。歴史的には、法令による解決が未成熟であった時代においては、暴力による解決はふつうであった。しかし、現代においては、暴力による解決を認めるという選択はいかがなものであろうか?
 時には手間暇がかかりすぎて辛抱しきれなくなるような場合もあるかもしれないが、法治国家であることの意義はまさに適正な手続きによってしか政策が決定できないというところにある。望むらくは、今後においても、さまざまな膠着状況を打開するために暴力に訴えることなく言論によって対応するというコンセンサスが国民の間に再認識されることを!