南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

もぐらたたき(価Ⅱ=29)

  北海道洞爺湖サミットが終わった。その成果については、さまざまな評価がありうるが、私見では、なかなかのできだったと思う。

 しかし、現実は、予想以上にドラステイックに変化する。

 サミットの大きな枠組みとは別に、マーケットはグローバルにまたローカルに刻々と移り行き、息を継ぐ暇もない。

 最近、日本の国民にも物価の上昇は身にしみて感じられるようになってきた。これはあきらかに「深刻な事態」である。
 政治は、こういう事態に的確に対処することが求められるが、実際問題として、どうしたらいいかなかなか有効な対策は見出せないかもしれない。

 地球環境問題という最大のテーマがある。
 しかし、目の前に、物価高が迫り、消費生活や医療や教育など、重圧が加われば、かっこいいことは言っていられなくなるおそれがある。なりふりかまわずということである。もちろん、そういう事態は避けたいのは当然だが。

 およそ、政策には体系がある。優先順位があり、予算がある。計画がある。そういう、ステップを着実に踏むことで政策は着実に実行されるはずである。

 しかし、現実には、災害が発生し、事故がおき、国際的な摩擦や衝突がおき、病気がはやり、テロがおき、陰惨な犯罪がおき、自殺者が相次ぎ、異常気象で作物が不作になる。

 経済はシュリンクし、生活はどんぞこに転落する。ひとびとは夢を失い、すさんだ表情の大衆が呆然とたたずみ、時には暴徒化する。これは最悪のシナリオだが。

 さて、ひとつの道は、とりあえず、決まった計画を地道に実行することだ。現象面だけ見て、パニックに陥れば、人心は混乱し、確実な経済活動が危うくない、国民生活も不安定になる。

 もうひとつは、目の前にふりかかる火の粉をすばやく的確にはらうことである。

 そうすることで、大きな火事になることを防ぐことができる。むずかしくても、最善を尽くすことがたいせつだ。

 原油高が大きな問題だとしたら、それへの緊急対策を政府は打ち出すべきだ。完全ではなくても、そういう姿勢が国民に安心感を与えるから。もぐらたたきみたいなことでも、たたかないよりはいいのである。

 すみやかな、対策の樹立と実施が待たれる。