南原充士『続・越落の園』

文学のデパート

小句集「秋思」

   小句集 『秋 思』  

    
     (学園の秋)

太鼓打つ 紅葉学園 応援団
秋晴れに ソプラノもあり 野球場
木隠れの 小鳥チチュチチャ 秋はずれ
コスモスの 耳を聾して 車行く
つかの間の 静けさありて 思う秋

     (言海

小春日に しおり挟みし 大言海
秋ひとつ 思いはふたつ 数え歌
たわむれに ボジョレーヌーヴォー 文字に書く
心憂し 秋書き損じ 習字帳
人恋し 秋風に寄す 隠れ里

    (親愛)

小さな芽 潜めて揺らぐ 秋の庭
秋晴れて 嫌いたくない 顔ひとつ
とりどりの 秋のスケッチ 奏でる手

    (月影)

ぶちまけて 砂漠の月も 地に落ちて
秋雨に 濡れる月形 浮かぶ川
盃の こぼして甘い 月の蟻

    (空耳)

からころん 内耳の奥へ 虫潜む

     *